コックニー

コックニーとは



コックニー(Cockney)は、ロンドン労働者階級の人々が話す英語の一種です。その起源は14世紀に遡り、当時は「雄鶏が生んだような形の悪い卵」を意味していました。16世紀初頭には、都会育ちで世間知らずな者を指す言葉となり、17世紀には、シティにあるSt.Mary-le-Bow教会の鐘の音が聞こえる範囲内で生まれた、外部に関心のない人々を指すようになりました。

コックニーの特徴



コックニーは、標準的な英語である容認発音(RP)とは異なる、独自の発音や語彙を持っています。以下にその主な特徴を挙げます。

発音


二重母音・長母音の変化: 例えば、[eɪ]が[aɪ]に(dayが[daɪ])、[iː]が[əi]に(keepが[kəip])、[aɪ]が[ɒɪ]に(likeが[lɒɪk])、[ɔɪ]が[oɪ]に(oilが[oɪl])、[aʊ]が[æː]に(townが[tæːn])変化します。
[h]の発音: 単語の先頭にある[h]を発音しない(halfが[a:f])傾向があります。また、逆に[h]を不要な箇所に付けてしまうこともあります(hardly everが[hɑːdli hevə])。
摩擦音の変化: 無声歯摩擦音[θ]が[f]に(thinkが[fɪŋk])、有声歯摩擦音[ð]が[v]に(fatherが[fɑːvə])変化します。
[t]の変化: 母音に挟まれたり、[l]が続く弱い[t]が、声門破裂音[ʔ]に変化することがあります(get offが[geʔɒːf])。
[r]の変化: [ɹ]の代わりに[ʋ]が使われることがあります(rightが[ʋɒɪt])。
[r]の挿入: 母音母音の間に[r]が挿入されることがあります(America isがAmerica-ris)。
[l]の変化: 弱い[l]が、円唇後舌母音・半母音化します(littleが[lɪʔʊ]、ableが[aɪbɪ])。

言い回し、語彙


短縮形の使用: am not, are not, is not, have not, has not の短縮形として ain't を使います。
meの使用: my の代わりに me を使うことがあります。
innitの使用: "Isn't it?" の短縮形として innit を頻繁に使います(Good day today innit?)。
kosherの使用: 「正当、本物」という意味で、イディッシュ語のカーシェールから借用したkosherを使います。
押韻スラング: コックニーには、伝統的な押韻スラング(Cockney Rhyming Slang)と呼ばれる隠語があります。これは例えば、"Bacon and Eggs" が "Legs" を意味するように、2つの単語を並べて、2つ目の単語と韻を踏む語を表します。時には、"China plate" が "Mate" を意味するように、韻を踏んでいない単語だけが使われることもあります。近年でも新しい押韻スラングが生まれており、例として、トニー・ブレアの名前が "Tony Blair → Hair" になっています。

押韻スラングの例


以下に押韻スラングの実例をいくつか挙げます。

apples and pears = stairs (階段)
bees and honey = money(お金)
dog and bone = phone(電話)
loaf of bread = head (頭)
trouble and strife = wife(妻)

コックニーの社会的地位



イギリスでは多様な英語が話されていますが、コックニーは伝統的に「汚い」英語だと上流階級から非難されることが多く、蔑視の対象となることもありました。ジョージ・バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』や、それを原作としたミュージカル『マイ・フェア・レディ』では、コックニーを話す主人公が、容認発音を話すように矯正される過程が描かれています。

コックニーが登場する創作物



コックニーは、多くの映画やドラマ、ゲームなどの創作物に登場しています。以下はその一部です。

映画及びミュージカル『マイ・フェア・レディ
映画『オリバー!』
特撮テレビ番組(人形劇)『サンダーバード』のパーカー
人形劇テレビ番組 『がんばれタッグス』のテンセンツ
映画『さらば青春の光』
映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
映画『ロンドンゾンビ紀行』
舞台『ベッジ・パードン』
ゲーム『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君英語

コックニーを話す人物



セックス・ピストルズのジョニー・ロットン、シド・ヴィシャス
* デヴィッド・ベッカム

コックニーは、イギリス英語の中でも特に個性的な方言として、現在でも多くの人々に認識されています。

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。