コバノミツバツツジ

コバノミツバツツジ（小葉の三葉躑躅）

コバノミツバツツジ（学名: Rhododendron reticulatum）は、ツツジ科ツツジ属に分類される落葉性の低木です。ミツバツツジの一種で、その名の通り、葉が3枚ずつ展開するのが特徴です。関東地方南部から中部地方南部にかけて分布するミツバツツジと比較して、葉がやや小さいため、「コバノ」という名が付けられました。

特徴

樹高は3メートル程度まで成長します。春の訪れを告げるように、3月から4月頃にかけて、紅紫色から淡紫色の可憐な花を多数咲かせ、里山の風景を美しく彩ります。花の直径は約3～4センチメートルで、花粉は細い糸状の構造で繋がっており、昆虫の体に付着しやすくなっています。これにより、効率的な受粉が行われます。また、1つの雌しべの周りには10本の雄しべが取り囲むように配置されています。

一つの花芽からは基本的に一つの花が咲きます。コバノミツバツツジは、刈り込みに対する萌芽力が強く、日当たりの良い場所では特に花付きが良くなります。学名にある「reticulatum」は網目を意味し、葉の裏の網目状の模様が特徴的です。果実は、縦に割れる蒴果で、大きさは約1センチメートル。中には、約1ミリメートル程度の小さな種子が200個ほど入っています。日本のミツバツツジ類の中では、最初に学名が付けられた種としても知られています。

分布と生育地

コバノミツバツツジは、神奈川県西部から岐阜県の飛騨地方、福井県を経て、鹿児島県にまで至る広い範囲に分布しています。日本のミツバツツジ類の中では、最も広い分布域を持つとされています。特に、愛知県以西の乾燥したアカマツやコナラの林などでよく見られます。

名所

コバノミツバツツジの群生地として有名な場所は以下の通りです。

善住禅寺（愛知県豊川市）: 約3万本ものコバノミツバツツジが群生しており、豊川市の天然記念物にも指定されています。
冨士神社（愛知県豊川市）: こちらも善住禅寺と同様に、コバノミツバツツジの群生地として知られています。
伊奈冨神社（三重県鈴鹿市）: 三重県指定の名勝となっており、美しい景観を楽しむことができます。
滋賀県希望が丘文化公園: 滋賀県内の複数の市町村にまたがる広大な公園で、コバノミツバツツジが自生しています。
広田神社（兵庫県西宮市）: 天然記念物に指定されており、約2万平方メートルの広さに十数個の群落が見られます。
兵庫県丹波篠山市盃ヶ岳一帯: 早朝には雲海を背景にした美しいコバノミツバツツジの群落を見ることができます。

保全活動

各地でコバノミツバツツジの保護活動が行われています。

滋賀県湖南市: 「コバノミツバツツジの郷づくり」と題し、地域住民や小学校が協力して保全活動に取り組んでいます。
岡山県倉敷市: 「ツツジ山再生プロジェクト」では、種から育てた苗を植栽し、毎年「ツツジ写真コンテスト」を開催して、保全意識の向上を図っています。

参考文献

渡辺洋一、高橋修『ツツジ・シャクナゲ ハンドブック』文一総合出版、2018年、52頁。ISBN 978-4-8299-8138-2。
南谷忠志、門田裕一、米倉浩司「日本産ミツバツツジ類（ツツジ科）の分類（1）」『植物研究雑誌』第93巻第2号、株式会社ツムラ、2018年4月、75-103頁、doi:10.51033/jjapbot.93_2_10849、ISSN 0022-2062。
南谷忠志、門田裕一、米倉浩司「日本産ミツバツツジ類ツツジ科）の分類（2）」『植物研究雑誌』第94巻第4号、株式会社ツムラ、2019年8月、195-241頁、ISSN 0022-2062。
茂木透写真『樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2001年、70-71頁。ISBN 4-635-07005-0。
大橋広好、門田裕一、木原浩、邑田仁、米倉浩司『改訂新版 日本の野生植物』平凡社〈4〉、2017年、232-250頁。ISBN 978-4582535341。

関連項目

木の一覧
ツツジ
ミツバツツジ

外部リンク

Rhododendron reticulatum - NCBI
Rhododendron reticulatum - Encyclopedia of Life
コバノミツバツツジ - 植物雑学事典
コバノミツバツツジ - コトバンク

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