コヒレダルマザメ

コヒレダルマザメ (Isistius plutodus) の詳細

概要

コヒレダルマザメはヨロイザメ科に分類される特異なサメで、主に深海に生息しています。この種は稀少であり、太平洋と大西洋の深い水域から数例しか報告されていません。最大で42cmの体長を持ち、下顎の歯が特に大きいのが特徴です。また、その噛み跡は楕円形で、他の種類のサメとは一線を画しています。IUCN（国際自然保護連合）ではこの魚類の保全状況を「軽度懸念」としています。

分類と発見

コヒレダルマザメは1964年にJack GarrickとStewart Springerによって科学誌『Copeia』で正式に記載されました。記載に用いられた標本は、アラバマ州沖合160kmの深海トロール網から得られた42cmの雌でした。種小名の「plutodus」は、ギリシャ語で「富」と「歯」を意味する言葉からきています。このサメには、英語で「bigtooth cookiecutter shark」や「longtooth cookiecutter shark」といった異名もあります。

分布

コヒレダルマザメは非常に珍しいサメで、これまでに報告された標本は世界中の数ヶ所から10個体程度。その分布域には、アラバマ州やブラジルのバイーア州、アゾレス諸島、西サハラ沿岸、オーストラリアのニューサウスウェールズ州、そして日本の沖縄が含まれます。主に深度60-200mの大陸棚や海溝周辺で見られ、浅い水域からの捕獲が多いですが、本種が本来はより深い水域に生息している可能性を示唆しています。

形態

コヒレダルマザメは細長い葉巻型の体をしており、特徴的な鈍い頭部を持っています。その大きな楕円形の目は、両眼視を可能にする位置に配置されていて、後方には広く傾いた噴水孔があります。鼻孔は低く、口は横に走ります。

顎には非常に大きな下顎歯があり、これは他のサメに比べても特に目立つ特徴です。上下の歯の数は上顎29本、下顎19本で、下顎歯は三角形で鋸歯のような形状をしています。背鰭や尾鰭は小さく、体全体は暗褐色で、鰭の縁は半透明です。腹面には微細な発光器が散在しており、2004年にはアゾレス諸島で捕獲された個体には特徴的な首周りの襟が確認されたこともあります。

生態

このサメは、ダルマザメよりも運動能力が劣ると考えられています。その体腔の大半は肝臓に詰まった脂肪で占められており、これによって水中に浮かぶことができると推測されています。コヒレダルマザメは、ダルマザメとは異なり、獲物の位置をより正確に把握できる能力を備えていると考えられています。また、繁殖方法については未解明ですが、ダルマザメと同様に無胎盤性の胎生であると考えられています。

攻撃行動

コヒレダルマザメは大型動物の体表を噛み取る外部寄生的な生活様式を持っています。他のサメと同様に、獲物の体表を攻撃しますが、噛み方に特徴があり、平行な二本の歯を使って楕円形の傷を形成します。主な攻撃対象には硬骨魚や海獣などがあり、バイーア州の研究では、クジラの体に残る傷の80%がこのサメによるものであるという結果が示されています。また、少なくとも3件のイルカが攻撃を受けた後に餌を摂取できず、座礁して死亡した事例も確認されています。

人間との関わり

この種はカジキなどの重要な魚に傷をつけることがある一方で、人間にとって直接的な水産業への影響はほとんどありません。これまで記録された標本は、ほとんどが混獲であり、IUCNはその混獲例の少なさからこの魚の保全状況を「軽度懸念」としています。

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