アルメニア使徒教会

アルメニア使徒教会の概要

アルメニア使徒教会（Hay Aṙak'elakan Yekeghetsi）は、キリスト教の一派であり、主にアルメニア及びアルメニア人コミュニティの中で奉じられています。この教会は、非カルケドン派の正教会に分類され、信者数は約500万人にのぼります。教会名の「使徒教会」は、伝承によると十二使徒がアルメニアにキリスト教を広めたことに由来しています。一般に「アルメニア正教会」とも呼ばれるこの教会は、アルメニア典礼カトリック教会とは異なる組織です。

教会の長は「カトリコス」と呼ばれ、この地位は他の教会の総主教にあたります。現在のカトリコスはガレギン2世であり、首都エレバンの西郊に位置するエチミアジンにカトリコス座およびエチミアジン大聖堂があります。さらに、キリキアのカトリコス・アラム1世が副カトリコスを務めており、地域ごとの教会の指導体制が築かれています。中東を管轄するアルメニア・エルサレム総主教庁や、トルコのアルメニア・コンスタンティノープル総主教庁も存在しています。

歴史的背景

アルメニアにおけるキリスト教の歴史は非常に古く、301年には世界初のキリスト教国となったアルメニア王国がキリスト教を国教として認めました。この出来事は、313年のミラノ勅令よりもさらに早かったのです。伝説では、イエス・キリストの使徒タダイとバルトロマイがアルメニアに初めて教えを伝えたとされていますが、史実としての最古の記録は2世紀以降に見られます。

3世紀半ば、啓蒙者グレゴリオスがアルメニア王ティリダテス3世に洗礼を施し、ヴァガルシャパトに教会を設立しました。現在のカトリコス座となったこの教会は、アルメニア使徒教会の重要な拠点とされます。

5世紀にはアルメニア語のアルファベットが作られ、聖書や教義の翻訳が進みます。しかし、地政学的に東ローマ帝国とサーサーン朝ペルシアの接点に位置していたため、アルメニアは2度にわたる分割を経験し、428年には王制が消滅しました。それでも、キリスト教信仰を守り続けたアルメニア人は、過酷な弾圧にも抗しました。カルケドン公会議においては信条を採択せず、独自の教派としての道を歩むことが決まりました。

その後、イスラム帝国の台頭によりアルメニアは支配下に置かれましたが、9世紀末には再度独立を果たし、教会は独自の宗教的道を維持しました。11世紀にはセルジューク朝の支配を受け、アルメニア人の多くが小アジアに移住しましたが、同時に使徒教会もその影響力を広げることとなりました。

近代のアルメニア使用徒教会

16世紀以降、アルメニアはサファヴィー朝とオスマン帝国に分割され、各地のアルメニア使徒教会は地域の指導者の下で運営されることになります。アルメニア人は厳しい差別に直面しながらも、イスラム教徒との間に平和な共存を確立していました。しかし、18世紀からの欧米列強の進出と共に、キリスト教徒に対する敵意が高まり、特に1915年から1917年にかけて発生したアルメニア人虐殺は、数十万から数百万の犠牲者を出す惨事となりました。

現在の信者

現在、アルメニア使徒教会の信者は主にアルメニア共和国、トルコ、イラン、アゼルバイジャン、イラク、シリア、レバノン、パレスチナなどに分布しており、また移民コミュニティが形成されている国々でも活発に信仰が続けられています。特にエルサレムやイスファハーンにはアルメニア人地区が存在し、古くからの伝統が守られています。教会は信者にとって精神的な拠り所となっており、地域社会の結束を強めています。

教義と典礼

この教会はニカイア・コンスタンティノポリス信条を告白しますが、カルケドン信条は認めていません。アルメニア使徒教会の教義は他の非カルケドン派教会とのコミュニオンを有しています。典礼はシリア正教会やコプト[[正教会]]と似ており、古典アルメニア語が使われています。特に1月6日の神現祭には、イエスの降誕を同時に祝う独特な伝統があります。このように、アルメニア使徒教会は独自の信仰と文化を大切にし、長い歴史の中で培われた教えを今に伝えています。

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