コマンドウ (装甲車)

コマンドウ装甲車：多用途水陸両用装甲車の詳細

コマンドウ（Commando）は、アメリカ合衆国のキャデラック・ゲージ社が設計した四輪式の水陸両用軽装甲車です。様々な派生型が存在し、装甲兵員輸送車、戦場救急車、対戦車車両、自走迫撃砲など、多岐にわたる用途に使用されました。

開発と概要

初期型であるV-100装甲車は、1960年代初頭にキャデラック・ゲージ社のTerra-Space部門で設計が始まりました。1963年に試作車が完成し、翌1964年にはM706として制式採用され、量産が開始されました。

V-100は四輪式で、M34トラックと同じ車軸を使用しています。水上航行能力を持ちますが、スクリューやウォータージェットは装備されておらず、車輪の回転によって推進力を得ています。

エンジンは、M113装甲兵員輸送車の初期型にも搭載されたクライスラー社製のV8ガソリンエンジンで、5速手動変速機を通して車輪に動力を伝えます。この組み合わせにより、V-100は整地された路面で時速100km、水上で時速4.8kmを出すことができました。変速機は、比較的早期に自動変速機に切り替えられました。

車体前部には操縦席と助手席があり、小さな防弾ガラス越しに前方視界を確保します。上部ハッチを開けてそこから頭を出すことも可能です。車体中央部には兵員区画があり、兵員や各種兵装を搭載します。左右にはドアが設けられ、上半分を後方に、下半分を下方に開いてステップとして使用します。

車体後部の左側にはエンジンと変速機が収められ、後方に突出して上部に向いた排気管があります。後部右側にも兵員乗降用のドアがあります。

装甲板はCadaloyと呼ばれる積層構造で、軽量化を重視して設計されているため、厚みはそれほどありません。しかし、砲弾の破片や7.62mm弾までの小火器の銃撃には耐えることができます。

兵装

コマンドウ装甲車は、多様な兵装を搭載できます。以下はその例です。

一人乗り砲塔（連装）：
7.62mm機関銃（M37、M60など）×2丁
12.7mm重機関銃（M2など）×2丁
12.7mm重機関銃×1丁、40mmグレネードマシンガン（XM174、Mk.19など）×1丁
二人乗り砲塔：
エリコンKA 20mm機関砲×1門
M242 ブッシュマスター 25mmチェーンガン×1門
M61 バルカン 20mm機関砲×1門
76mm砲×1門
コッカリル 90mm低圧砲×1門
車体直接搭載：
81mm迫撃砲×1門
BGM-71 TOW対戦車ミサイル発射器×1

装甲兵員輸送車として使用する場合は、車体上のピントルマウントに7.62mm機関銃、12.7mm重機関銃、または40mmグレネードマシンガンを搭載します。車体の左右には銃眼が設けられています。国内治安任務向けには、放水銃や催涙ガス弾発射用グレネードランチャーを装備した砲塔も存在します。

派生型

V-200： V-100を大型化したモデル。アメリカ陸軍の5tトラックから多くの部品を流用しています。シンガポール軍のみが採用しました。
V-150： V-200の後に開発されたモデル。V-200をベースにしていますが、V-100の面影も残っています。サウジアラビア国家警備隊が主なユーザーです。V-150Sと呼ばれる派生型や、ポルトガルで生産されたChaimiteも存在します。
LAV-300： V-150を基に開発された六輪式装甲車。エンジン配置が変更されるなどの改良が施されています。アメリカ海兵隊のLAV計画でピラーニャ装甲車に敗れましたが、その後、各国の警察機関や軍隊で採用されました。
LAV-600： LAV-300の改良型で、105mm砲を搭載可能です。
M1117装甲警備車： V-150を基に、装甲強化や前面窓の大型化などの改良を施した警備用車両です。

実戦運用

アメリカ軍のV-100/V-150装甲車は、ベトナム戦争では主に空軍警備隊や陸軍憲兵などの後方部隊で使用され、後に装甲ハンヴィーに更新されました。しかし、21世紀に入ってからの対テロ戦争において、装甲ハンヴィーの防御力が不十分であったため、V-150をベースに装甲強化などの再設計を行ったM1117 ASVが新たに開発され、パトロールや輸送車列の護衛に投入されました。

V-100/V-150は、南ベトナム軍を始めとして西側諸国に多数が売却・供与され、現在でも中南米、アジア、中東など多くの国で使用されています。フィリピンなどではゲリラ掃討作戦に従事しています。大型八輪式装甲車の普及により、一部の国では第一線部隊から後方部隊に格下げされることもあります。

採用国

ボリビア、ボツワナ、カメルーン、ドミニカ共和国、ガボン、グアテマラ、ハイチ、インドネシア、ジャマイカ、レバノン、マレーシア（退役済）、メキシコ、オマーン、パナマ、フィリピン、ポルトガル、カタール、サウジアラビア、シンガポール、ソマリア、スーダン、中華民国（台湾）、タイ、トルコ、アメリカ合衆国、ベネズエラ、ベトナムなど、多くの国で採用されました。

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