コムエアー

コムエアー：かつての地域航空の雄

コムエアーは、かつてデルタ航空の完全子会社として、小型機による地域航空輸送を担っていた航空会社です。本社はアメリカ合衆国ケンタッキー州のシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港に置かれていました。最盛期には年間10億ドルを超える収入を誇り、世界最大級の地域航空会社として名を馳せました。

一時は、搭乗者数が100名に満たない小型機のみを運航していた点を除けば、その規模は大手航空会社に匹敵するほどでした。デルタ・コネクションのブランド名で、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、バハマといった地域を結ぶ広範な路線網を展開していました。

歴史

1977年3月、コムエアーはシンシナティで、Patrick J. Sowers、Robert T. Tranter、David Muellerとその父Raymondによって設立されました。翌4月には、パイパー社製のPA-31ナバホ3機で定期運航を開始しました。1981年7月には、航空機増備のための資本を調達するため株式を公開しました。

1984年にはデルタ・コネクションに加盟し、デルタ航空との提携を深めました。1986年7月にはデルタ航空が株式の20%を取得、1999年10月22日には約23億ドルを投じて完全子会社化しました。

2001年3月26日には、コムエアーのパイロットたちがストライキに突入。このストライキにより、コムエアーのフライトは全面的に欠航となり、89日後に新たな契約が締結されるまで運航は停止しました。

2004年のクリスマス週末（25・26日）には、1160便全てが欠航するという大規模な運航停止が発生し、3万人が足止めされる事態となり、アメリカ全土で大きな注目を集めました。これは記録的な降雪と、乗員を管理するソフトウェアの不具合が複合的に重なって発生したものでした。12月23・24日、シンシナティ周辺は記録的な降雪に見舞われ、航空機用凍結防止液の供給が途絶えてしまいました。吹雪で高速道路が閉鎖され配送もできない状況で、コムエアーは24日の始発便から全便を欠航せざるを得ませんでした。夜通しで供給を再開した後、運航を再開しようとしましたが、乗員を割り当てるコンピュータシステムが停止してしまったのです。このシステムは、毎月交代するように設計されていたのですが、悪天候の影響で期限が過ぎてしまっていました。皮肉にも、このソフトウェアは、より高性能なシステムへの交換が予定されていたものの、2008年5月時点ではまだ交換されていませんでした。

2005年9月14日には、親会社であるデルタ航空が連邦破産法第11章の適用を申請し、コムエアーも共に破産に追い込まれました。コムエアーは、航空機と便数、従業員の削減によって年間7000万ドルのコスト削減を発表しました。2007年以降、運航規模は段階的に縮小され、2009年にはデルタ航空系列の地上部門統合が行われ、規模を縮小していきました。そして2012年9月29日、コムエアーは運航を終了しました。

就航都市

コムエアーは、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、バハマの多くの都市に就航していました。その路線網は、地域航空会社としては非常に広範囲に及んでいました。

保有機材

コムエアーは、主に小型のリージョナルジェット機やターボプロップ機を保有していました。具体的な機種は以下の通りです。

パイパー PA-31 ナバホ
エンブラエル EMB 120
ボンバルディア CRJ-100ER

事件・事故

コムエアーは、その歴史の中でいくつかの重大な航空事故を経験しています。

1979年10月8日：コムエアー444便（パイパー PA-31）が、シンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港からの離陸直後に墜落。乗客7名、乗員1名全員が死亡しました。
1997年1月9日：コムエアー3272便（エンブラエル EMB 120）が、デトロイト・メトロポリタン・ウェイン・カウンティ空港への着陸中に墜落。乗客26名、乗員3名全員が死亡しました。
2001年3月19日：コムエアー5054便（エンブラエル EMB 120）が、ナッソー国際空港からオーランド国際空港へ巡航中に氷結の影響で急降下。ウェストパームビーチ空港に緊急着陸しましたが、乗客25名、乗員2名全員が無事でした。
2006年8月27日：コムエアー5191便（ボンバルディア CRJ-100ER）が、ブルーグラス空港から離陸中に墜落。日本人2名を含む乗客47名全員と乗員2名が死亡しました。

外部リンク

コムエアー（英語）
デルタ航空（英語）

参考文献

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