コラ半島超深度掘削坑

コラ半島超深度掘削坑：地球深部への挑戦

コラ半島超深度掘削坑は、旧ソビエト連邦がコラ半島で実施した、地球の地殻深部を探るための科学プロジェクトです。1970年5月24日に掘削が開始され、最終的には深さ12,262mに達しました。この深さは現在でも、地表から最も深い人工の穴として記録されています。

掘削の歴史

当初、このプロジェクトの目標深度は15,000mでした。1979年には、当時の掘削記録を塗り替え、1983年には12,000mを突破しました。この時点で掘削は約1年間中断されましたが、この中断が後に発生した掘削機の故障に影響した可能性も指摘されています。その後、掘削は7,000m地点から再開されました。

1988年には12,262mに到達しましたが、当初の計画では1990年末までに13,500m、1993年には15,000mに到達する予定でした。しかし、地中の温度が予想をはるかに超え、180℃に達したことで、掘削は1992年に中止されました。当初、100℃程度と予測されていた地温は、深部になるにつれてさらに上昇し、15,000mでは300℃に達すると予測されました。このような高温下では、掘削に使用するドリルビットが機能しなくなるため、これ以上の掘削は不可能と判断されたのです。

研究と発見

コラ半島超深度掘削坑は、当初の目標深度には到達しなかったものの、地球物理学において非常に重要な成果をもたらしました。このプロジェクトを通じて、バルトシールドの深部構造、地殻の不連続性、熱構造、地殻の物理化学組成、リソスフェア研究など、多くの分野の研究が進展しました。

特に注目された発見の一つは、地震波速度が不連続となる深さ約7km地点において、花崗岩から玄武岩への明確な移行が見られなかったことです。代わりに、花崗岩の変成作用による変化が確認され、さらに深い場所では岩石が完全に破砕され、水で飽和していることが判明しました。この水は、地表から浸透したものではなく、地殻深部の鉱物から由来していると考えられています。また、大量の水素ガスも発見され、坑道から流れ出す泥が水素で「沸騰」していると評されたほどでした。

プロジェクトの終焉とその後

ソビエト連邦の解体に伴い、1992年に掘削プロジェクトは中止され、1995年に正式に終了しました。現在、プロジェクトで使用された施設は放棄されており、環境上の危険にさらされています。

他の掘削プロジェクト

コラ半島超深度掘削坑のような、深部探査を目指した他のプロジェクトとしては、以下のようなものがあります。

モホール計画（アメリカ）： 1957年にメキシコ沖で開始された掘削計画ですが、資金不足のため1966年に中止されました。
ドイツ大陸深部掘削計画（KTB計画）： 1987年から1995年にかけてドイツで行われた掘削プロジェクトで、深さ9101mまで掘削されました。

世界記録

コラ半島超深度掘削坑は、1988年から約20年間、世界最長かつ最深のボーリング坑でした。しかし、2008年にカタールの油田で掘削された坑道がこの記録を更新し、2011年にはロシアのサハリン沖でさらに長い坑道が掘削されました。しかし、地表からの深さにおいては、コラ半島超深度掘削坑が依然として世界一であり、地球上で最も深い人工の穴としての地位を保っています。

まとめ

コラ半島超深度掘削坑は、地球内部の謎を解き明かすための壮大な挑戦でした。プロジェクトは目標深度には到達しなかったものの、地球科学の分野に多大な貢献をしました。このプロジェクトから得られた知見は、今後の地球探査や資源開発に役立てられることでしょう。

このプロジェクトは、地底深くの探求に終わりがないことを示唆するとともに、地球科学における挑戦の重要性を物語る象徴的な存在です。

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