モホール計画

モホール計画とは

モホール計画（Project Mohole）は、地球の地殻を貫通し、マントルとの境界であるモホロビチッチ不連続面（モホ面）までの掘削を目指した、アメリカ合衆国による大規模な科学プロジェクトです。この計画は、当時の宇宙開発競争においてソビエト連邦に遅れをとっていたアメリカが、地球科学の分野で挽回を図るという目的も背景にありました。アメリカ国立科学財団（NSF）が資金を提供し、アメリカ雑学協会（American Miscellaneous Society）が主導しました。

海底掘削の選択

陸地ではなく海底が掘削場所に選ばれたのは、海底下の地殻の方が陸地よりも薄く、掘削深度を浅く抑えられるという利点があったからです。これはアイソスタシーという地殻の均衡状態によるものです。

プロジェクトの実施と成果

モホール計画は1961年に第一段階が実施されました。メキシコのグアダルーペ島沖で5つの穴が掘削され、そのうち最も深いものでは海面下3500メートルの海底からさらに183メートルまで掘り進められました。この成果は、掘削深度だけでなく、固定されていないプラットフォームからの試錐という点でも、当時としては画期的なものでした。また、掘削されたコアサンプルからは、最下部13メートルが玄武岩からなる中新世の堆積物であることが判明し、貴重な科学的データが得られました。

この掘削には、ロサンゼルスのグローバル・マリーン社が所有する石油掘削船カス1号（CUSS I）が使用されました。カス1号は、コンチネンタル（Continental）、ユニオン（Union）、スペリオール（Superior）、およびシェル（Shell）の5つの石油会社が1956年に共同で開発した技術的な試作品であり、各社の頭文字を組み合わせて名付けられました。当時、半径180メートル以内での船位調整技術が確立されたことは、現代の自動船位保持装置の開発につながる重要な一歩となりました。

モホール計画の第一段階は、地球のマントルまでの掘削が科学的にも技術的にも可能であることを実証しました。しかし、第二段階は運営上の問題と予算超過により、1966年に計画は頓挫しました。

その後の影響

モホール計画で培われた技術は、その後の深海掘削計画や国際深海掘削計画に引き継がれ、地球物理学や海洋地質学などの学術分野に大きな進歩をもたらしました。特に、プレートテクトニクス理論の確立に大きく貢献しました。また、これらの計画で得られた海洋底掘削技術は、海底油田の掘削や生産技術にも応用され、産業界にも貢献しました。

現在、日本も「地球発見（Chikyu Hakken）」という、モホール計画と同じく地球深部への掘削を目指す計画を実施しています。これは、地球の構造や歴史を解明する上で、非常に重要な取り組みと言えます。

参考文献

Oral History Interview. Willard Bascom, 1993.
Oral History Interview. Robert Bauer, 1993
Milton Lomask, "A Minor Miracle: An Informal History of the National Science Foundation." NSF
Chandler, G. N. "Experimental Deep Water Drilling- Project Mohole" (Motion Picture, Library of Congress Catalogue Number: fi 68000006, 28 min)

関連項目

Integrated Ocean Drilling Program
コラ半島超深度掘削坑 - ソ連がコラ半島で行なった同様の掘削

外部リンク

NSF Ocean Drilling Program（英語）
Project Mohole photo gallery（英語）
Geology History: Project Mohole（英語）
NAS - Project Mohole（英語）

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