コルガン・エア3407便墜落事故

コルガン・エア3407便墜落事故

2009年2月12日、アメリカ合衆国で発生したコルガン・エア3407便の墜落事故は、航空業界に大きな衝撃を与えました。この事故は、コンチネンタル航空とのコードシェア便であるコンチネンタル・コネクション3407便としても知られています。

事故の概要

事故当日、3407便はニューアーク国際空港（ニュージャージー州）からバッファロー・ナイアガラ国際空港（ニューヨーク州）へ向かう短距離国内線でした。乗員4名（機長、副操縦士、客室乗務員2名）、乗客45名の計49名が搭乗していました。

22時10分（アメリカ東部標準時）、3407便はバッファロー・ナイアガラ国際空港の滑走路23へのILS進入中に突然失速し、空港手前約10キロメートルの住宅地に墜落しました。この事故で、搭乗していた乗員乗客全員が死亡しただけでなく、墜落現場となった民家の住民1名も犠牲となり、2名が負傷しました。さらに、救助活動に当たった消防隊員2名も負傷しました。

事故原因の調査

国家運輸安全委員会（NTSB）による詳細な調査の結果、事故の直接的な原因は、失速時のパイロットの操作ミスであることが判明しました。当初、機体の着氷が疑われましたが、事故機には防氷装置が正常に作動しており、パイロットも着氷に気づいて失速警報をオンにしていたため、着氷は直接的な原因ではないとされました。

しかし、調査が進むにつれて、別の重要な要因が明らかになりました。事故機には、着氷時に失速警報が作動する速度を引き上げるスイッチが搭載されていました。墜落後の調査で、パイロットは着氷解消後に防氷装置をオフにしたものの、このスイッチを氷結時の設定のまま戻し忘れていたことが判明しました。このため、通常よりも低い速度で失速警報が作動してしまい、パイロットが混乱する要因となりました。

また、フライトデータレコーダー（FDR）の記録から、副操縦士がフラップとランディングギアを展開する際に、対気速度が失速速度に近い145ノット（約269km/h）まで減速していたことが分かりました。この状況で、失速警報が作動したため、機長は失速を回避するために通常とは逆の、機首を上げるという操作をしてしまい、結果として失速を深刻化させてしまいました。さらに、失速時に副操縦士が加速を試みてフラップを収納したことで、機体の揚力がさらに失われ、失速を食い止めることができませんでした。

パイロットの疲労と待遇問題

事故調査では、パイロットの疲労も重大な要因として指摘されました。コックピットボイスレコーダー（CVR）には、機長が何度もあくびをする様子が記録されており、パイロットの過労状態が明らかになりました。機長と副操縦士は、所属していたコルガン・エアの低賃金のために、ホテルに宿泊することができず、空港内の操縦士用待合室で仮眠を取っていました。機長はタンパから、副操縦士はシアトルから飛行機で通勤しており、十分な睡眠時間を確保できない状況でした。

この事故を契機に、パイロットの待遇改善を義務付ける法律が制定されました。低賃金や過酷な労働環境が、安全運航に大きな影響を与えることが改めて認識されました。

追悼

2019年2月11日には、フォレストローンの墓地で追悼式典が執り行われ、犠牲者を悼みました。

映像化

この事故は、ドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」の第8シーズン第4話「DEAD TIRED」で取り上げられました。

関連項目

航空事故
ボンバルディア機の航空事故とインシデント
アメリカン・インターナショナル航空808便墜落事故

外部リンク

日本乗員組合連絡会議・ALPA Japan事務局 (2010年2月23日). “バッファローでの Bombardier Q400 事故報告（その１）” (PDF)
日本乗員組合連絡会議・ALPA Japan事務局 (2010年2月23日). “バッファローでの Bombardier Q400 事故報告（その２）” (PDF)
Information Regarding Flight 3407 - Continental Airlines (英語)
* Colgan Air

この事故は、航空安全における多くの教訓を私たちに示しました。パイロットの疲労管理、適切な訓練、そして技術的な側面の両方が、航空機の安全運航に不可欠であることを改めて認識する必要があります。

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