コルキューラ

コルキューラ（ケルキューラ）

ギリシア神話において、コルキューラ（古希: Κόρκυρα）またはケルキューラ（古希: Κέρκυρα）は、神々の系譜に連なる女性です。大河を司る神アーソーポスと、おそらくは泉のニュンペーであるメトーペーとの間に生まれた娘の一人であり、多くの姉妹がいました。彼女の姉妹には、後に地名や都市名の由来となるサラミースやアイギーナ、テーベーなどがいます。

コルキューラの父親である河神アーソーポスが、ボイオーティア地方を流れるアーソーポス河を司る神なのか、それともペロポネーソス半島のプリウスやシキュオーン地方を流れるアーソーポス河の神なのかについては、古代の著述家たちの間でも議論がありました。しかし、ロドスのアポローニオス、シケリアのディオドーロス、パウサニアースといった権威ある歴史家や地理学者は皆、プリウスやシキュオーンの河神であるという見解を示しています。

コルキューラの物語で最もよく知られているのは、海を支配する偉大な神ポセイドーンとの関係です。その美しさに魅せられたポセイドーンは、彼女を遠いイオニア海に浮かぶ孤島へと運び去りました。この島は、元々はホメーロスの叙事詩『オデュッセイアー』に登場するスケリア島であるとパウサニアースは伝えています。ポセイドーンによって島に連れてこられたコルキューラは、やがてポセイドーンとの間に息子パイアークスをもうけました。

この神話的な出来事によって、島はその名をコルキューラにちなんで「コルキューラ島」と呼ばれるようになり、そこに暮らす人々は、コルキューラとポセイドーンの息子であるパイアークスの名に由来して「パイアーケス人」と呼ばれるようになったと伝えられています。パイアーケス人は、穏やかで航海術に優れた民族としてホメーロスの作品で描かれており、その王アルキノオスは、パイアークスの息子であるとする説も存在します。

コルキューラとポセイドーンの結びつきは、古代の詩人たちによっても歌われました。高名な抒情詩人ピンダロスは、自身の作であるテーベー讃歌とゼウス讃歌の中で、ポセイドーンがコルキューラに深い愛情を寄せたエピソードに触れていたと、パウサニアースは記録しています。残念ながら、これらの具体的な詩の内容は現在には伝わっていません。

このように、コルキューラは単なる河神の娘というだけでなく、強力な神ポセイドーンの愛を受けた女性として、そしてイオニア海の重要な島とその住民の名前の起源となった存在として、ギリシア神話において語り継がれています。彼女の物語は、神々と人間（あるいはニュンペー）の関わりが、世界の地理や人々のアイデンティティに深く影響を与えたことを示す一例と言えるでしょう。

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