コロッサス級航空母艦

コロッサス級航空母艦：戦時急造空母の波瀾万丈な生涯

第二次世界大戦下のイギリス海軍は、ドイツ海軍Uボートによる船舶損害の増加に対抗するため、空母戦力の増強を急務としていました。既存の艦隊空母の損失と、護衛空母の能力不足を補うため、新たな空母の建造が計画されました。その結果生まれたのが、本記事で解説するコロッサス級軽空母です。

建造の経緯：戦況の切迫と技術革新

開戦当初、イギリス海軍はCAMシップやMACシップといった応急的な対策を講じ、アメリカ合衆国からのレンドリースを通して護衛空母を調達していました。しかし、護衛空母の数は不足しており、艦隊行動に随伴できる、より高速で攻撃的な空母の必要性が認識されました。既存の艦隊空母であるイラストリアス級も大戦初期に多くの損失を出していました。こうした状況を背景に、コストを抑えつつ艦隊行動可能な性能を兼ね備えた軽空母として、コロッサス級の開発が始まりました。

設計：迅速建造とコスト削減

コロッサス級は、イラストリアス級をベースに設計されましたが、建造期間の短縮とコスト削減を重視。排水量を大幅に削減し、商船建造技術を応用することで、建造期間を21ヶ月から27ヶ月に短縮しました。飛行甲板長はイラストリアス級にわずかに劣るものの、搭載機数は初期のイラストリアス級を上回りました。しかしながら、防御力は削減され、装甲は飛行甲板には施されず、軍艦としての耐用年数は3年と短くなっています。

船体と兵装：防御力と搭載機のバランス

限られた排水量の中で飛行甲板長を確保するため、船体は細長い形状となりました。飛行甲板の高さが高い一方で、防御力は最小限に抑えられ、機関部と弾薬庫にのみ10mmの隔壁が設けられるのみでした。搭載兵器は、近接防空火器が中心で、2ポンド4連装機銃や40mm単装機銃が装備されました。航空機修理艦として改造された「パーシュース」と「パイオニア」は、兵装が削減されています。

機関：安定性と航続距離

推進機関は、フィジー級軽巡洋艦の主機を一部流用し、4万馬力の蒸気タービン2軸を採用。生残性向上のため、機関室配置は前後機械室の中間に補機・ガソリン庫等を設けたシフト配置としました。航続距離は燃料搭載量によって異なり、1万2,000浬から6,200浬の範囲でした。

航空艤装：カタパルトと着艦装置

格納庫は広大な空間を確保し、艦首にはBS3油圧カタパルトを装備。初期は搭載機重量に制限がありましたが、改装によって2万ポンドまで対応できるようになりました。「パーシュース」は蒸気カタパルトの試験艦としても運用され、技術発展に貢献しました。また、「トライアンフ」では斜め飛行甲板のテストが行われています。航空機修理艦となった「パーシュース」と「パイオニア」では、カタパルトと着艦装置が撤去され、そのスペースが格納庫の拡大に充てられました。

運用とその後：世界各国海軍での活躍

当初16隻の建造が予定されていましたが、実際には10隻がコロッサス級として、6隻が設計変更されたマジェスティック級として建造されました。完成した15隻はイギリス海軍のみならず、複数の国へ売却・貸与され、世界各国で運用されました。各国での改装や運用状況は様々でしたが、一部の艦は1960年代後半まで現役を務めました。最後の現役艦であったブラジル海軍の「ミナス・ジェライス」（元「ヴェンジャンス」）は2001年に退役し、その長い生涯に幕を閉じました。コロッサス級は、戦時急造空母として誕生しながらも、世界各国の海軍で長きに渡り活躍した、歴史的な艦艇と言えるでしょう。

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