コロネーション (1946年生の競走馬)

コロネーション(Coronation V)：気性の繊細さと凱旋門賞での輝き

コロネーション(Coronation V)は、フランスで活躍した競走馬です。その名は英語で戴冠式を意味し、フランス語風に発音すると「コロナティオン」となります。1946年、フランスの競走馬生産者にして実業家であったマルセル・ブサックによって生産されました。父は1942年の凱旋門賞優勝馬ジェベル、母はフランスの1000ギニーに相当するプール・デッセ・デ・プーリッシュの勝ち馬エスメラルダという、サラブレッド界においては錚々たる血統を受け継いでいます。両馬の父は共にトウルビヨンであり、この配合は近親交配の極致と評され、その成功とリスクの両面から、サラブレッド生産における極端な配合例としてしばしば研究対象となります。第二次世界大戦下の困難な状況下で、ブサックは自家保有の種牡馬を使用せざるを得なかったという事情も背景にあります。

コロネーションは、非常に神経質な気質の持ち主として知られていました。ブサックは、その才能を最大限に引き出すため、調教師シャルル・サンブラに預けました。2歳時のデビュー戦はシャンティイのシャトー賞。落ち着きのないレース運びながらも、1馬身差で勝利を収めます。この才能に確信を持ったブサックは、コロネーションをイギリスのロイヤルアスコット開催のクイーンメアリーステークスへ遠征させます。ここではヴァルキリーを頭差で退け、勝利を掴み取りました。続くロベールパパン賞では、ブラントームのレコードタイムを2秒4も縮める驚異的なレースレコードを樹立するなど、その潜在能力の高さを示しました。しかし、その後に出走したモルニ賞やチェヴァリーパークステークスでは、集中力の欠如から敗戦を喫することになります。

3歳になると、ブサックはコロネーションを大レースへと導こうとします。まずはプール・デッセ・デ・プーリッシュに出走。ここでも集中力に欠ける走りではありましたが、1着同着という結果を残します。続くオークスステークスではスタート直後から暴走し、2着に終わりました。アイリッシュオークスでも2着に敗れ、勝利とは遠ざかりました。

一方、ブサックは凱旋門賞を世界最大のレースにしようと、賞金の大幅増額に尽力していました。その努力が実り、凱旋門賞の賞金は2500万フランにまで達し、世界最高額の賞金レースとなりました。そして迎えた凱旋門賞。コロネーションは、これまでのレースとは異なり、驚くほど落ち着いていました。直線で突き抜けるように走り、4馬身差という圧勝劇でブサックの計画は大成功をおさめます。この凱旋門賞での勝利は、コロネーションの競走生活における最大のハイライトとなりました。その後も競走生活は続けましたが、まともに走ったのは凱旋門賞がほとんどで、ヴェルムー賞での勝利やエドヴィル賞、クイーンエリザベスステークスでの2着入賞程度に終わっています。

競走生活引退後は、ブサックのもとで繁殖牝馬となりました。しかし、繁殖牝馬としての道程は決して平坦ではありませんでした。初年度の交配では不受胎に終わり、その後も仔出しに恵まれず、様々な種牡馬との交配を試みましたが、1964年に18歳で死亡するまで、一頭の仔馬も残すことができなかったのです。コロネーションの生涯は、その類まれな才能と、気性の繊細さ、そして繁殖牝馬としての苦悩が複雑に絡み合ったドラマチックなものでした。凱旋門賞での輝かしい勝利は、その生涯を象徴する、永遠に語り継がれる偉業として、競馬史に刻まれています。

競走成績 (グループ制導入前)

詳細な競走成績については、netkeibaやJBISサーチなどの競馬情報サイトをご参照ください。

血統表

（血統表は、資料の都合上、ここでは省略させていただきます。）

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