コロンビア内戦

コロンビア内戦：終わりの見えない泥沼

コロンビア内戦は、50年以上も続く長期的な内戦であり、コロンビア社会に深い傷跡を残しています。政府軍、左翼ゲリラ、そして極右民兵という三つの勢力が複雑に絡み合い、そこに麻薬問題が加わることで、事態はさらに混迷を深めています。これまでに約45万人が死亡、約8万人が行方不明となり、約740万人が難民となるなど、その人的被害は甚大です。

内戦の背景：根深い政治的・社会的不満

コロンビアは、1819年にスペインから独立して以来、自由党と保守党による二大政党制の議会政治が続いてきました。ラテンアメリカ諸国では珍しく、軍事クーデターや独裁政権をほとんど経験しなかったことから、「西半球で最も古い民主主義国家」と評されることもあります。しかし、その一方で、植民地時代から続く貧富の格差は大きく、二大政党以外の政治勢力の政治参加が阻害されてきた結果、政治的・社会的な不満が鬱積し、暴力的な対立の土壌が育まれてきました。

19世紀から二大政党の対立を背景に内戦が繰り返され、1899年にはコーヒー豆の価格暴落をきっかけに、自由党系農民による反乱から「千日戦争」と呼ばれる内戦が勃発しました。この内戦では、全土で7万5千人から15万人が死亡したとされています。自由党は新興財閥や都市労働者を支持基盤とし、保守党は大地主やカトリック教会など支配層を支持基盤としていましたが、両党ともに寡頭制の維持という点では利害が一致していました。

1948年には、自由党の大統領候補だったホルヘ・エリエセル・ガイタンが首都ボゴタで暗殺されると、これをきっかけに大規模な暴動が発生しました。保守党政権は自由党支持者を徹底的に弾圧し、以後の10年間は「ラ・ビオレンシア（暴力の時代）」と呼ばれる内戦に突入、死者は10万人から20万人にも及んだとされています。この内戦は、自由党と保守党が政権を折半し、4年ごとに大統領を両党から選出するという政治的合意によって終息しましたが、寡頭体制から排除された農民や貧困層の不満は根強く残りました。

左翼ゲリラの台頭と麻薬問題の深刻化

1959年のキューバ革命に影響される形で、自由党系農民を中心にコロンビア革命軍（FARC）をはじめとする複数の左翼ゲリラ組織が誕生しました。これらの組織は、大地主や資本家による抑圧的な政治を打倒しようと武装闘争を開始し、資金源として富裕層や企業幹部、民間人、外国人を標的とした誘拐を繰り返すようになりました。また、政府機関や治安要員、石油パイプラインなどを狙った爆破テロも頻発し、一般市民にも多くの犠牲者が出ました。一方、左翼ゲリラに対抗して結成された極右の民兵組織であるコロンビア自衛軍連合（AUC）は、政府軍と共同で左翼ゲリラ勢力と交戦するだけでなく、ゲリラと関係があるとみなした農民や市民をも標的にテロ活動を行いました。

1970年代以降、コロンビアでは麻薬カルテルが台頭し、コカインの密輸と製造を組織的に行うようになりました。1980年代に入ると、麻薬関連の収益は急増し、麻薬組織はコロンビア社会に大きな影響力を持つようになりました。麻薬カルテルは、左翼ゲリラ組織と同盟関係を結び、資金と武器を提供することで、政府への対抗勢力を強化しました。一方、左翼ゲリラも麻薬カルテルから資金援助を受けることで、勢力を拡大し、政府軍との戦闘を激化させました。このように、コロンビア内戦は、麻薬問題と深く結びつき、ますます泥沼化していきました。

和平への模索と終わりの見えない紛争

コロンビア政府は、1999年からFARCとの和平交渉を開始しましたが、交渉は難航し、2002年には決裂しました。その後、2012年から和平交渉が再開され、2016年には和平合意が成立しましたが、国民投票で否決されました。政府とFARCは和平の内容を一部修正し、議会での採決を経て和平協定が承認されました。2017年には、FARCの武装解除が完了し、合法政党として再出発しましたが、和平に反対する勢力や他の左翼ゲリラ組織は活動を継続しており、依然として紛争の火種はくすぶっています。

コロンビア内戦は、50年以上も続く長期的な紛争であり、その解決は容易ではありません。しかし、和平への努力を続けることで、いつの日か真の平和が訪れることを願うばかりです。

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