コカ

コカノキ（Erythroxylum coca）

コカノキは、コカノキ科の常緑低木で、主に南アメリカを原産地としていますが、メキシコやインドネシア、西インド諸島にも分布しています。高さはおおよそ2〜3メートルに成長し、楕円形の葉を有し、両端が尖っています。葉の裏側には特徴的な縦の条紋があり、また淡い黄白色の5弁花をつけ、果実は成熟すると赤く色づきます。

語源

「コカ」という名称は、南米の先住民アイマラ族の言語に由来し、アイマラ語で「木」を意味する"Khoka"が起源とされています。コカの葉は、古くから南米の文明において宗教的儀式や嗜好品として広く使用されてきました。

嗜好品としての利用

コカの葉は、成分としてコカインを含むため、局所麻酔薬や興奮剤としての効果があります。一部の南米国では、コカの葉を高山病の対策やその他の薬用として茶として飲む習慣が続いています。コカの葉にはコカイン濃度が低いため、依存性や精神的作用は抽出したコカインに比べて弱いとされています。

コカの葉は、古代文明でも使用されており、ペルーのミイラにも葉が残されています。スペインによる南米征服時には、コカの葉の使用が禁止されることもありましたが、原住民たちがその効果を強く訴えたため、合法として税金が課され販売されるようになりました。これにより、鉱山労働者たちは疲労感を軽減し、食欲も抑えるためにコカの葉をよく噛む習慣が定着しました。

コカ茶

南米の一部地域では、コカの葉を利用したコカ茶が日常的に飲まれています。ボリビアでは特に、「マテ・デ・コカ」と呼ばれ、日常的な飲み物として愛されています。コカの葉を湯に浸して飲むこの茶は、一般的に甘みを加えられて提供されることが多いです。なお、コカ茶は「空腹を忘れさせる」効果もあるため、食事の前後に飲まれることがあります。

特に標高の高い地域、例えばボリビアのラパスなどでは、高山病の予防や緩和のためにコカの葉を噛むことが一般的です。コカの成分により、高山病の症状を軽減することが期待されています。

コカインの発見と歴史

19世紀に至り、コカの葉からアルカロイドのコカインがドイツで抽出され、医療に利用されるようになりました。さらに、1863年には化学者アンジェロ・マリアーニがコカを用いたワイン「ビン・マリアーニ」を開発し、多くの著名人から支持を受けました。このワインはコカインを含む特異な飲品として注目されました。

その後、コカ・コーラの初期製品にもコカインが含まれていましたが、1903年には製品から除去されることになりました。

法規制

コカの葉はコカインの原料とされ、多くの国で麻薬取扱として厳しい規制の対象となっています。特に日本を含む先進国では、その危険性から栽培、所持、流通が厳しく制限されています。

医療利用

原住民社会においては、コカの葉は胃腸の不調や口内炎の治療に用いられており、治療効果が期待されています。これによりコカノキは単なる嗜好品にとどまらず、地域に根付いた医療資源としての側面も持っています。

コカノキは、ただの植物以上に、歴史的・文化的な側面も持ち合わせた重要な存在です。

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