コンコルディア神殿

コンコルディア神殿は、ローマ神話における和合の女神コンコルディアを祀る神殿で、古代ローマの中心であるフォルム・ロマヌムの西端に位置していました。この神殿は、ローマ市民間の長きにわたる争いの後、紀元前4世紀に平和への願いを込めて最初に建設されました。

歴史

文献によると、紀元前367年にマルクス・フリウス・カミルスが、パトリキ（貴族）とプレブス（平民）の和解を記念してこの神殿を建立したとされています。これは、リキニウス・セクスティウス法の制定と関連付けられますが、最初の建設時期については議論が残っています。

紀元前304年には、アッピウス・クラウディウス・カエクスの書記で解放奴隷であったグナエウス・フラウィウスによって、コンコルディア神殿が奉献された記録があります。その後、ティベリウス・グラックスの暗殺事件後の紀元前121年には、コンスル（執政官）のルキウス・オピミウスによって再建されました。この神殿は、キケロが4回目のカティリナ弾劾演説を行った場所としても知られ、ファウストゥス・コルネリウス・スッラが再建した元老院議事堂が破壊された紀元前44年以降は、一時的に元老院の定例会議にも使用されました。

紀元10年、ティベリウスによって同じ場所に神殿が再奉献されました。この再建では、以前の神殿よりも幅が広げられていますが、考古学的調査の結果から、オピミウス時代の神殿の再建である可能性が高いとされています。さらに、ティベリウスは紀元12年にも再奉献を行ったと見られています。この再建では大理石がふんだんに用いられ、豪華な装飾が施されました。ティベリウス自身が所有していたギリシアの絵画や彫刻などの美術品が展示され、まるで美術館のような趣だったと伝えられています。これらの美術品については、大プリニウスが『博物誌』に詳しく記録しています。

建築

神殿は、カンピドリオの丘の麓、タブラリウムに隣接する場所に建てられていたため、敷地が限られていました。この制約が建築に影響を与え、通常、奥行きが幅よりも大きい方形の古代ローマ神殿とは異なり、コンコルディア神殿は幅が45メートル、奥行きが24メートルと、横幅が広く奥行きが狭い特徴的な構造をしています。ポルチコ（柱廊）も同様に横幅が広く奥行きが狭く設計されていました。

内陣の壁には、連続した台座からコリント式の円柱が並んで突き出ており、柱と柱の間には壁龕（へきがん）が設けられていました。柱頭には、渦巻き模様の代わりに、飛び跳ねる雄羊の彫刻が施されていました。現在では、基礎部分しか残っておらず、一部はカンピドリオに登る道路で覆われています。

コンコルディアの主神殿として、この神殿を模したコンコルディア神殿がローマ帝国各地に建設されたと考えられています。その証拠として、2002年にスペインのメリダで、この神殿を模したと思われる遺跡が発掘されています。

出典

参考文献

T. R. S. Broughton (1951). The Magistrates of the Roman Republic Vol.1. American Philological Association
Lily Ross Taylor; Russell T. Scott (1969). “Seating Space in the Roman Senate and the Senatores Pedarii”. Transactions and Proceedings of the American Philological Association (The Johns Hopkins University Press) 100: 529-582. JSTOR 2935928.

外部リンク

Encyclopaedia Romana
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