コンドッティエーレ

コンドッティエーレ：中世イタリアの傭兵隊長たち

コンドッティエーレ（condottiere）とは、中世末期から近世にかけてイタリアで活躍した傭兵、または傭兵隊長を指す言葉です。複数形ではコンドッティエーリ（condottieri）とも呼ばれます。この言葉は古イタリア語に由来し、現代イタリア語では「契約する者」を意味するcondottieroがより一般的です。彼らはイタリア国内だけでなく、国外でも高名な傭兵を指す言葉としても用いられるようになりました。

イタリアにおける傭兵需要の背景

中世から近世のイタリアは、東方貿易によってヨーロッパの文化と経済の中心地として繁栄していました。特に、ヴェネツィア、フィレンツェ、ジェノヴァなどの都市国家は莫大な富を築いていました。しかし、これらの都市国家は、ミラノ公国やナポリ王国のように既存の権力機構に組み込まれておらず、常に周辺国からの侵略の脅威にさらされていました。そのため、彼らは市民軍に加えて、多くの傭兵部隊を雇用する必要がありました。

初期の傭兵部隊は、神聖ローマ皇帝やアンジュー家、アラゴン家などの外国人君主に率いられてイタリアにやってきた外国兵や、貧しい地方の流民たちで構成されていました。この需要から、「冒険団」（Compagnie di Ventura）と呼ばれる傭兵集団が誕生しました。次第にイタリア人自身が傭兵団を組織するようになり、地方の小領主も自国の兵士を「傭兵」として売り込むようになりました。彼らと雇い主の間で交わされる契約（コンドッタ）から、「コンドッティエーレ」という言葉が生まれたのです。

コンドッティエーレの台頭と特徴

イタリア独自の傭兵制度の中で、コンドッティエーレたちは栄達の機会を掴むことが少なくありませんでした。フランチェスコ・スフォルツァやフランチェスコ・ブッソーネ・ダ・カルマニョーラのように、大きな成功を収めた人物もいます。多くのコンドッティエーレは、諸国や地方領主から重要な地位を任され、軍事だけでなく政治の世界でも活躍しました。また、ルネサンスの影響を受け、コンドッティエーレたちは粗野な蛮勇よりも、洗練された教養を重んじるようになりました。

彼らの戦術もまた、騎士道的な蛮勇ではなく、古代ローマの戦術を模倣し、勝てる状況を作り出して戦うことを重視しました。負け戦は避け、勝利の見込みがある時のみ戦うという戦略が基本でした。この戦い方は、同時代のマキャヴェッリによって批判されましたが、彼自身が市民軍の組織に失敗したことへの私怨も含まれていると考えられています。

海のコンドッティエーレ

陸上での活躍が目立つコンドッティエーレですが、アンドレア・ドーリアのように「海のコンドッティエーレ」も存在しました。彼らは主にジェノヴァ共和国や教会軍に雇われましたが、ヴェネツィア共和国は海の傭兵を雇うことはありませんでした。

有名なコンドッティエーレたち

アルベリコ・ダ・バルビアーノ（Alberico da Barbiano）: ロマーニャ地方出身の傭兵隊長で、サン・ジョルジョ傭兵隊を組織しました。
フランチェスコ・スフォルツァ（Francesco Sforza）: 後にミラノ公となった人物。
フランチェスコ・ブッソーネ・ダ・カルマニョーラ（Carmagnola）: 農民出身でありながら、ミラノ公国に仕えて武功を挙げ、公女と結婚。その後、ヴェネツィア共和国に雇われ、ミラノ軍を破る。しかし、その功績から野心を疑われ、処刑されました。
カストルッチョ・カストラカーニ（Castruccio Castracani）: ルッカの領主となりました。
フェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ（Federico da Montefeltro）: ウルビーノ公爵。
ガッタメラータ（Gattamelata）: パン屋の息子からヴェネツィア陸軍総司令官にまで上り詰めました。
バルトロメーオ・コッレオーニ（Bartolomeo Colleoni）: ヴェネツィアに仕えた傭兵隊長。
アンドレア・ドーリア（Andrea Doria）: ジェノヴァ共和国出身の海の傭兵隊長で、フランスやスペインにも雇われました。
ジョン・ホークウッド（John Hawkwood）: イングランド出身の傭兵隊長で、皮なめし職人の息子からローマ教皇に仕えるフィレンツェ総司令官となりました。

関連項目

フリーカンパニー
* 浪人

コンドッティエーレは、中世イタリアの複雑な政治情勢の中で生まれた特異な存在であり、彼らの活躍は当時の社会や軍事、文化に大きな影響を与えました。

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