コンパス座

コンパス座について

コンパス座（Circinus）は、現代の88星座の1つであり、18世紀中頃に考案された比較的新しい星座です。そのモチーフは、製図用具のコンパスであり、方位磁針とは異なるものです。日本からは残念ながら、その全域を観察することはできません。コンパス座は全天で4番目に小さく、明るい恒星が存在しないため、星座としての存在感はやや薄いものとなっています。

主な天体

恒星

2022年4月時点で、国際天文学連合 (IAU) が認めた固有名を持つ恒星は1つもありません。しかし、コンパス座にはいくつかの恒星があります。

• - α星: 見かけの明るさが3.19等の3等星で、コンパス座で最も明るい恒星です。
• - β星: 4等星で、見かけの明るさは4.057等です。2015年には、質量が0.56倍の褐色矮星の伴星が発見されたとの研究結果が報告されました。
• - γ星: 5.59等のF型主系列星のB星と連星を成しているB型主系列星のA星があります。

星団・星雲・銀河

コンパス座には、コンパス座銀河と呼ばれるセイファート銀河が存在し、地球から約1400万光年の距離にあります。この銀河は、活動的な銀河核の1つとして知られています。

由来と歴史

コンパス座は、フランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって18世紀の中頃に考案されました。彼は1756年に刊行した著書『Histoire de l'Académie royale des sciences』で、星図にフランス語の「le Compas」を初めて記載しました。その後、1763年に出版された『Coelum australe stelliferum』では、「Circinus」とラテン語化された名称に変更されました。

ラカーユは、みなみのさんかく座を測量機器として捉え、じょうぎ座と共に製図用具を並べて星図を描いたとされています。1922年のIAU設立総会では、現在の88星座が定められ、そのひとつにコンパス座が選ばれ、正式に「Circinus」と命名されました。この星座には特に神話や伝説は存在していません。

呼称と方言

日本においては、コンパス座はもともと「両脚規」という名前が与えられていました。この訳は、1910年に発行された『天文月報』で初めて確認されています。その後、1925年の『理科年表』にも引き継がれました。しかし、天文同好会の活動により、1928年には「コンパス」という訳が定着しました。

1944年には天文学用語が見直されたものの、引き続き「両脚規」が用いられましたが、1952年には日本天文学会によって現在の「コンパス」という名称に変更されました。これ以降、「コンパス」という学名は広く使用され続けています。

終わりに

コンパス座はその小ささと明るさの欠如から、多くの天文愛好家にはあまり馴染みのない星座かもしれませんが、星座の歴史やその背景を知ることで、私たちの宇宙に対する理解が深まることでしょう。

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