コールダー競馬場

コールダー競馬場：フロリダの競馬史に名を刻んだ、栄光と衰退の物語

フロリダ州マイアミガーデンズに位置するコールダー競馬場は、かつてはフロリダ州を代表する競馬場のひとつとして知られていました。サラブレッドによる平地競走が開催され、G1競走であるプリンセスルーニーハンデキャップも開催されるなど、華やかな時代もありましたが、時代の流れとともに経営難に陥り、カジノ併設、競馬部門の縮小、そして最終的には閉鎖という道をたどることとなります。この文章では、コールダー競馬場の歴史、コースの特徴、そしてカジノ事業について詳しく解説します。

誕生から繁栄期へ：夏競馬への挑戦

1960年代のフロリダには、ガルフストリームパーク、ハイアリアパーク競馬場、トロピカルパーク競馬場の「ビッグスリー」と呼ばれる3つの競馬場が存在していました。フロリダの暑さから夏競馬は不可能だと考えられており、「ビッグスリー」は夏競馬の開催には消極的でした。しかし、不動産開発で成功したスティーブン・A・コールダーは、長年夏競馬の開催を夢見ていました。

多くの困難を乗り越え、コールダーは1969年に夏競馬開催の許可を取得。1970年はトロピカルパークを借りて開催した後、1971年5月6日、念願のコールダー競馬場がオープンしました。1万3500人を収容できる冷房完備のスタンド、1200頭の馬を収容できる厩舎、そしてアメリカ初の女性騎手用宿舎を備えた、当時としては最先端の施設でした。

当初は人工芝のコースでしたが、関係者からの要望を受け、ダートコースに変更。1972年には、協力者であるウィリアム・L・マクナイトがトロピカルパークを買収し、レースをコールダー競馬場に移すことで、コールダー競馬場はさらに発展を遂げます。

コールダーの死後も、競馬場は発展を続けました。1992年には「Festival of the Sun」という夏の祭典が開始され、1997年にはサイマルキャスト放送が開始。これにより、フロリダ州外からの賭けも可能となり、大幅な増益と賞金増加につながりました。「Calder's Summit of Speed」や「Florida Million」といった新たなレースも開催され、コールダー競馬場の知名度は向上し、プリンセスルーニーハンデキャップは2006年にG1に格付けされました。

時代の波と閉鎖：カジノ併設と競馬部門の縮小

しかし、時代の変化はコールダー競馬場にも大きな影響を与えました。経営難を脱するため、2010年にカジノが併設され、「コールダー・カジノ&レースコース」となりました。カジノ部門は成功をおさめましたが、同時に競馬部門の存在意義は薄れ始めます。

2014年には競馬部門がストロナックグループにリースされ、「ガルフストリームパークウエスト競馬場」として運営されることとなりました。開催日数は年間40日に削減され、グレード競走の多くはガルフストリームパークに移転。さらに、老朽化したグランドスタンドの解体後、代替施設が建設されなかったため、観客は臨時のテントでの観戦を余儀なくされるなど、競馬場の規模は縮小の一途を辿りました。

2019年にはハイアライのライセンスでスロットマシンを運営できるという州裁判所の判決が出たことで、チャーチルダウンズ社は競馬場運営の必要性を失いました。2020年末にリース契約が切れ、2020年の秋、コールダー競馬場はついに閉鎖。跡地は不動産会社に売却されました。

コースの特徴

コールダー競馬場のコースはすべて左回りの楕円形でした。外側にダートコース、内側に芝コースが配置され、ダートコースは1マイル（約1609メートル）、芝コースは7ハロン（約1408メートル）でした。それぞれのコースには、様々な距離のレースに対応するためのポケットや襷コースが設けられていました。

コールダー・カジノ

2010年にオープンしたコールダー・カジノは、約1100台のスロットマシン、ビデオポーカーなどを備えていました。ハイアライも実施され、屋内は禁煙でしたが、喫煙可能な屋外カジノも設置されていました。

結び

コールダー競馬場は、フロリダ州の競馬史において重要な役割を果たした競馬場でした。しかし、経営環境の変化や時代の流れの中で、栄光の時代から衰退へと向かい、最終的には閉鎖という道を辿ることとなりました。その歴史は、競馬場の運営や経営における様々な課題を示唆するものであり、現代の競馬業界を考える上で貴重な教訓となるでしょう。

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