ゴジュウカラ

ゴジュウカラ

ゴジュウカラ（五十雀、学名：Sitta europaea）は、鳥類分類においてスズメ目に含まれるゴジュウカラ科の仲間です。ゴジュウカラ属の代表的な種として知られています。

生息環境と分布

この鳥は、ユーラシア大陸の広範囲、特に寒帯地域や高山帯を除く地域に広く分布しています。その生息範囲は非常に広く、アゼルバイジャン、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ロシア、中国、韓国、そして日本など、多くの国で見ることができます。基本的には決まった地域で一年中過ごす留鳥であり、季節的な大移動（渡り）はほとんど行いません。

日本列島にも生息しており、確認されているだけで3つの亜種が周年生息しています。主な分布域は九州から北海道にかけてですが、高地で繁殖を終えた個体は、冬になると比較的標高の低い場所へ移動することがあります。

からだの特徴

ゴジュウカラは全長およそ13.5cmほどの、比較的コンパクトな鳥です。オスとメスで見た目の大きな違いはほとんどなく、よく似た羽色をしています。尾羽は短めなのが特徴です。外見的な目印として分かりやすいのは、嘴の根元から目の上を通り、側頭部へと続く黒い線状の模様（過眼線）です。嘴は黒色をしており、足はやや赤みがかった肉褐色をしています。

日本に生息する亜種によって、体色にわずかな違いが見られます。

日本の主な亜種

• - *ゴジュウカラ（Sitta europaea hondoensis）：本州から北九州にかけて見られます。背面は青みがかった灰色で、腹面は白色です。体側面や腹部、尾羽の付け根の下側（下尾筒）には、赤みがかった色が現れます。
• - エゾゴジュウカラ（シロハラゴジュウカラ、Sitta europaea clara）：南千島列島や北海道に分布します。背面は青みがかった淡い灰色で、腹面は白色です。下尾筒には赤みが現れますが、その範囲はゴジュウカラよりも狭く小さい傾向があります。
• - キュウシュウゴジュウカラ（Sitta europaea roseilia）：九州南部に生息しています。

くらしと生態

ゴジュウカラは、平地から山地にかけて広がる落葉広葉樹林を主な生息地としています。彼らの最も有名な生態の一つは、木の幹をよじ登るだけでなく、他の多くの木に止まる鳥（キツツキやキバシリなど）とは異なり、頭を下にしたまま幹をくるくると回りながら器用に降りてくることができる点です。

食性は雑食で、主に昆虫類やクモなどの節足動物を食べますが、季節によっては果実や植物の種子なども利用します。特に夏季には昆虫を多く食べ、冬季には木の種子などを主に採食します。樹皮の隙間などに隠れている昆虫を探し出すのが得意で、また、見つけた食物を樹皮の隙間などに隠して貯蔵する習性も持っています。

繁殖期には卵を産んで仲間を増やします。自然にできた樹洞や、以前にキツツキが使っていた古巣などを利用して巣を作ります。巣の内部には樹皮などを敷き詰めます。さらに興味深いことに、巣穴の入り口や内側の壁、隙間などに泥を塗って補強したり、巣穴の大きさを調整したりする習性があります。日本では一般的に3月から6月にかけて繁殖を行い、1回に5個から7個ほどの卵を産みます。抱卵はメスのみが行い、およそ18日から20日間で雛が孵化します。雛は孵化後、約20日から25日程度で巣立っていきます。

繁殖期には、つがいごとに一定の縄張りを持って生活します。しかし、繁殖期以外の時期には、シジュウカラやヤマガラといった他のカラ類の仲間や、コゲラなどと一緒に混群を形成して行動することがあります。

人間とのかかわり

ゴジュウカラの生息地では、森林伐採などの開発によって生息環境が失われたり、餌となる昆虫などが減少したりすることで、生息数が減少している地域も存在します。一方で、樹洞に巣を作る彼らは、人工的に設置された巣箱を利用することもあり、人間との関わりの中で新たな営巣場所を見つけることもあります。

これらの情報から、ゴジュウカラはユニークな行動と、豊かな森林生態系における重要な役割を持つ鳥であることがわかります。

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参考文献
『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科9 鳥III』、平凡社、1986年
『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年
安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年
『山渓カラー名鑑　日本の野鳥』、山と溪谷社
* 真木広造他　『日本の野鳥590』　平凡社

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