ゴッタルド峠

ゴッタルド峠：歴史と伝説が息づく交通の要衝

ゴッタルド峠は、スイスのティチーノ州アイロロとウーリ州ゲシェネンを結ぶ標高2108mの峠です。ドイツ語圏とイタリア語圏を結び、ミラノへと続く重要な交通路として、古くから人々に利用されてきました。サンゴタール峠とも呼ばれています。

険しい道のり：初期の交通

古代からその存在は知られていましたが、13世紀前半までは交通路として一般的ではありませんでした。シェレネン渓谷の急流や、狭く急峻な峠道は多くの遭難者を生み、通行は困難を極めました。1236年頃には、バイエルン公国の聖人ヒルデスハイムのゴッタルドにちなんで名付けられたとされています。

悪魔の橋：伝説と架橋技術

ゴッタルド峠には、「悪魔の橋」と呼ばれる橋にまつわる伝説が残っています。峠を越えようとして命を落とす人々が後を絶たない過酷な環境での架橋は、悪魔の仕業と考えられたのでしょう。同様の伝説は、他の地域にも存在します。

伝説によれば、ロイス川を渡る困難に困った牧夫が悪魔に橋を架けるよう願ったところ、悪魔は最初に橋を渡るものを生け贄にするという条件を出しました。牧夫はヤギを代わりに渡らせ、悪魔を欺きました。怒った悪魔は岩を橋に投げつけようとしましたが、老婆が岩に十字架を描いたため、岩を持ち上げることができませんでした。

この伝説の岩は現在も残っており、1977年にはゴッタルド道路トンネル建設のために、220トンの岩が30万スイスフランをかけて127メートル移動されました。

この架橋によって、北海に注ぐライン川と、地中海に注ぐポー川の分水嶺を越えることが可能になりました。しかし、1775年に馬車が通行できる道路が建設されるまでは、徒歩や駄獣のみが通行できる道でした。

トンネル建設：交通革命

1888年には、177人の犠牲者を出した全長15kmのゴッタルド鉄道トンネルが開通し、峠道に代わる交通手段となりました。1980年には、全長17kmのゴッタルド道路トンネルが開通しましたが、53人の犠牲者が出ています。

さらに、2016年6月1日には、ゴッタルドベーストンネルが開通しました。建設中の死者を10人以下に抑えるという目標が立てられ建設されました。全長57km、総延長155kmの世界最長鉄道トンネルは、アルプトランジット計画の一環として建設されました。チューリッヒやルガーノに近いツィンメルベルクベーストンネル、チェネリベーストンネルと合わせることで、ボトルネック区間が解消され、チューリッヒからミラノまでの所要時間が大幅に短縮されました。

ゴッタルド峠は、その歴史の中で、人々の知恵と技術、そして伝説が織りなす、スイスの交通史における重要な地点です。

ギャラリー

[ゴッタルド峠の風景画像]

関連項目

ゴッタルド鉄道トンネル
ゴッタルド道路トンネル
ゴッタルドベーストンネル
アルプトランジット計画

外部リンク

climbbybike.comのプロフィール
聖ゴッタルドに関する簡単なメモ
ゴッタルド、スイス
Sankt Gotthard Pass（ドイツ語）

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