ゴッド・ヘイツ・アス・オール

スレイヤー『ゴッド・ヘイツ・アス・オール』

『ゴッド・ヘイツ・アス・オール』は、アメリカのスラッシュメタルバンド、スレイヤーが2001年に発表した8枚目のスタジオアルバムです。アメリカン・レコーディングスからリリースされました。

制作背景

1999年頃から新作アルバムの制作に取り掛かりましたが、オズフェストへの参加やスリップノットとのワールドツアーなど、多忙なスケジュールの中で行われました。長年スレイヤーのアルバムをプロデュースしてきたリック・ルービンは、今回はエグゼクティブ・プロデューサーとして参加し、実際のプロデュースはマット・ハイドが担当しました。この変更は、ルービンの多忙とメンバーのマンネリ打破が目的でした。ケリー・キングは、「ヘヴィメタルシーンを理解し、熱意と技術を持つプロデューサーが必要だった」と語っています。ルービンから紹介された2人のプロデューサーの中から、マット・ハイドと「Bloodline」を制作し、その出来に満足したことが起用の決め手となりました。

レコーディングは当初ハリウッドのスタジオで行う予定でしたが、コスト面とハイドの過去の使用経験から、カナダ・バンクーバーの「The Warehouse Studio」に変更されました。ハイドは当時主流になりつつあったPro Toolsなどのデジタルシステムの使用を提案しましたが、メンバーはデジタル処理を最小限に抑えることを希望し、ディレイやギターの歪みの修正などに限定されました。また、スレイヤーとして初めて7弦[[ギター]]を使用した楽曲（「Warzone」と「Here Comes the Pain」）が収録されたのも本作の特徴です。

テーマ

アルバムのテーマは、従来の「悪魔主義」や「地獄」といったものから、宗教、殺人、復讐、セルフ・コントロールなど、より現実社会に即したものへとシフトしました。キングは、「ヘヴィメタルの歌詞にありがちな悪魔や迷宮、ドラゴンといったファンタジーではなく、より現実的な事を深く追求したかった」と語っています。彼は、本作が単純な反キリスト教ではなく、例えば交通事故や愛犬の死といった日常的な出来事を通して人が感じる「神は俺を嫌っている」という感情を表現したかったと述べています。

収録曲の内容は以下の通りです。

Threshold - 限界に達した人物
Cast Down - ドラッグ中毒になった天使
God Send Death - 過去に殺人を犯した生物
Deviance - 殺人に快楽を感じる人々

タイトルと評価

当初のアルバムタイトルは「Soundtrack to the Apocalypse」になる予定でしたが、トム・アラヤが後に発売されるボックスセットに使うことを提案し、最終的に収録曲「Disciple」の一節から「God Hates Us All」が採用されました。

アルバムは発売初週に約51,000枚を売り上げ、Billboard 200で最高28位、カナダのチャートで9位を記録しました。2006年8月16日時点で、累計304,000枚を販売しています。収録曲「Disciple」は、スレイヤーとして初めてグラミー賞（ベストメタルパフォーマンス）にノミネートされました。

参加メンバー

トム・アラヤ (ボーカル、ベース)
ジェフ・ハンネマン (ギター)
ケリー・キング (ギター)
ポール・ボスタフ (ドラム)

プロダクション

リック・ルービン (エグゼクティブ・プロデューサー)
マット・ハイド (プロデューサー)

収録曲

1. Darkness of Christ
2. Disciple
3. God Send Death
4. New Faith
5. Cast Down
6. Threshold
7. Exile
8. Seven Faces
9. Bloodline
10. Deviance
11. War Zone
12. Here Comes the Pain
13. Payback

その他

「Bloodline」は映画『ドラキュリア』および『完全なる報復』に使用され、「Here Comes the Pain」はアルバム発売の2年前に単体曲としてレコーディングされ、アメリカのプロレス団体WCWのコンピレーションアルバムに収録されました。また、WCWサンダーのオープニングテーマにも使用されました。

レコーディングが行われた「The Warehouse Studio」は、ブライアン・アダムスが所有するスタジオでした。メンバーはスタジオを「とてもアットホーム」だと感じましたが、キングは「いかにもカナダのポップロックシンガーのスタジオ」だと評しました。そのため、壁に中指を立てたポスターやポルノ画像を貼り、スピーカーの上に悪魔の頭を飾るなど、普段のスレイヤーのスタジオの雰囲気を再現しました。

7弦[[ギター]]を使用した楽曲制作にあたり、キングはエンドース契約を結んでいるB.C.リッチからギターを借りました。1曲作った後、7弦[[ギター]]を気に入ったキングはB.C.リッチにギターをオーダーしました。「せっかくオーダーしたのに1曲だけではもったいない」と考え、急遽もう1曲7弦[[ギター]]を使用した楽曲を制作し、最終的に2曲が収録されました。

当時、ハンネマンはシリアルキラーに関する本を読んでおり、その精神状態に興味を持っていました。その内容が楽曲に反映されています。アラヤもレコーディング中に同様の本を読んでおり、「God Send Death」と「Deviance」の歌詞はハンネマンとアラヤの共作となっています。

アルバムタイトルが決定する前に、パンテラのメンバーがレコーディングスタジオを訪れ、当時出来上がっていた「Disciple」を彼らに披露しました。聴き終えたパンテラのメンバーが「歌詞にある"God Hates Us All"と書いたTシャツを作ったら良いじゃないか？」と提案した際、キングが「それをアルバムタイトルにすればいいじゃないか」と思いついたそうです。

本作を最後に、ドラムのポール・ボスタフが肘の故障により脱退しました。その後発売されたDVD『War at the Warfield』が最後の仕事となりました。ボスタフは当時このDVDを見ていなかったそうです。「脱退はガールフレンドと別れるかのような感傷的な気分で、次のステップに行くためにスレイヤーと距離を置きたかった」と理由を語っています。しかし、2013年にボスタフは復帰しました。

2001年のクリスマス前にボスタフが脱退したため、ツアーを急遽デイヴ・ロンバードがサポートドラマーとして参加し継続しました。ツアー終了後、新しいドラマーを探すために数百のデモテープやデモCDを検討しました。メンバー曰く「悪いドラマーのデモの塊が大きく積み上げられた」そうです。オーディションは難航しましたが、最終的にロンバードが復帰することになりました。

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