ゴドウィン (ウェセックス伯)

ウェセックス伯ゴドウィンの生涯

ウェセックス伯ゴドウィン（生年不詳 - 1053年4月15日）は、11世紀のイングランド王国において、クヌート1世の時代からその後の王たちの時代にかけて、最も大きな影響力を持った伯爵の一人です。彼はイングランド王ハロルド2世とエドワード懺悔王の妃エディスの父であり、その一族はイングランドの歴史において重要な役割を果たしました。

生い立ちと権力掌握

ゴドウィンの父は、サセックス王国の家臣ウルフノス・キルドであったとされています。ウルフノスの出自は不明ですが、「Cild」という言葉は「ジュニア」を意味すると考えられています。1009年、ウルフノスは罪を犯し、艦隊と共に逃亡。ゴドウィンはエゼルレッド2世の長男エゼルスタン・アシリングの支持者であり、エゼルスタンの死後、その所領を相続しました。ゴドウィンはサセックスで育ち、その地で勢力を拡大したと考えられています。

1016年にクヌート1世がイングランド王に即位すると、ゴドウィンの出世は目覚ましくなります。1020年頃にはウェセックス全域の伯に任じられ、1019年から1023年の間にはクヌート1世のデンマーク遠征に従軍。その後、デーン人の有力者ウルフの姉妹ギータと結婚し、クヌート王家との結びつきを強めました。

クヌートの息子たちの時代

1035年にクヌート1世が亡くなると、イングランド王位はハロルド1世とハーディカヌートの間で争われました。ゴドウィンはハーディカヌートを支持しましたが、ハロルドが摂政となりました。1036年、エマ・オブ・ノーマンディーとエゼルレッド2世の息子アルフレッド・アシリングがイングランドに侵攻しようとしますが、ゴドウィンに捕らえられ、ハロルド1世に引き渡され、その後盲目にされ亡くなりました。この事件はゴドウィンの評判を大きく傷つけました。1037年、ハーディカヌートがデンマークにいたため、ゴドウィンはハロルド1世を王として支持しました。

1040年にハロルド1世が亡くなると、ゴドウィンはハーディカヌートをイングランド王として迎えました。さらに1042年にハーディカヌートが亡くなると、ゴドウィンはエゼルレッド2世の息子エドワードを王位に就けることを支持しました。エドワードはそれまでノルマンディーで暮らしており、彼の即位はウェセックス王家が王位を取り戻すことを意味しました。

対立、凋落、そして死

1045年、ゴドウィンは娘エディスをエドワード王と結婚させました。しかし、エドワード王がノルマンディーから貴族や聖職者を呼び寄せたことで、ゴドウィンはノルマン人の台頭に反発し、王との間に溝が生まれます。ドーバーでの騒乱をきっかけに、ゴドウィンはエドワード王に反旗を翻しますが、ノーサンブリア伯シューアドとマーシア伯レオフリックの支援を受けた王軍によって、1051年にイングランドから追放されました。

ゴドウィンとその家族はフランドルやアイルランドに逃れましたが、翌年には軍を率いてイングランドに帰還しました。この帰還は、後のゴドウィンの息子トスティによる侵攻の先例となりました。

1053年4月15日、ゴドウィンはウィンチェスターでの宮廷晩餐会で倒れ、数日後に亡くなりました。12世紀の記録では、ゴドウィンがアルフレッド・アシリングの死に対する潔白を主張しようとした際に、パンの皮を喉に詰まらせて死んだとされています。しかし、同時代の記録では、ゴドウィンは病に倒れたとされ、心臓発作が原因だった可能性が高いと考えられています。

ゴドウィンの死後、息子のハロルドがウェセックス伯の地位を継承し、イングランドの南側3分の1を支配しました。ノーサンブリア伯シューアドとマーシア伯エルフガーの死後、ゴドウィンの息子たちはほぼ全イングランドを掌握しました。ハロルドは1066年にエドワード王の後を継いでイングランド王となりました。しかし、ノルマン・コンクエストによってハロルドは廃位され、戦死し、ゴドウィン家の王朝は短命に終わりました。

グッドウィン・サンズ

ケント州の沖合にあるグッドウィン・サンズは、ゴドウィン伯にちなんで名付けられたという説があります。かつてこの地にはゴドウィンの所有する島があったとされていますが、現在ではその痕跡は確認されていません。この浅瀬の名前は、危険な場所を皮肉って「良き友」を意味する古英語から来ているという説もあります。

子女

ゴドウィンには以下のような多くの子女がいました。

スウェイン（1020年頃 - 1052年） - ヘレフォードシャー伯
ハロルド2世（1022年頃 - 1066年） - イングランド王
エディス（1025年頃 - 1075年） - エドワード懺悔王の妃
トスティ（1026年頃 - 1066年） - ノーサンブリア伯
ギルス（1032年頃 - 1066年） - イースト・アングリア伯
レオフウィン（1035年頃 - 1066年） - ケント伯
ウルフノス（1040年頃 - 1094年）
アルフガー - ランスの修道士
エドギヴァ
エルギヴァ（1066年頃没）
* グンヒルダ（1087年没） - 修道女

ゴドウィンの生涯は、11世紀イングランドの複雑な政治情勢を反映しており、彼の興隆と没落は、後のノルマン・コンクエストへと繋がる重要な出来事でした。

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