ゴニスティルス属

ゴニスティルス属 (Gonystylus)

ゴニスティルス属は、ジンチョウゲ科に属する植物のグループです。分類によってはゴニスティルス科として独立させることもあります。東南アジアからオセアニアにかけて、少なくとも32種が確認されており、特にボルネオ島には固有種が多く見られます。

特徴

ジンチョウゲ科の中では、多数の雄しべを持つことが特徴です。

種

Hassler (2019) および The Plant List (2013) で共通して認められているのは以下の32種です。また、Hassler (2019) は Gonystylus pluricornis もこの属に含めています。

Gonystylus affinis
Gonystylus areolatus
Gonystylus augescens
Gonystylus bancanus (ラミン、メラウィス)
Gonystylus borneensis
Gonystylus brunnescens
Gonystylus calophylloides
Gonystylus celebicus
Gonystylus concinnus
Gonystylus confusus
Gonystylus costulatus
Gonystylus decipiens
Gonystylus eximius
Gonystylus forbesii (ラミンバト)
Gonystylus glaucescens
Gonystylus heteranthus
Gonystylus keithii
Gonystylus kinabaluensis
Gonystylus kostermansianus
Gonystylus latifolius
Gonystylus lucidulus
Gonystylus macrophyllus (ガハルイタム)
Gonystylus macranthus
Gonystylus micranthus
Gonystylus nervosus
Gonystylus nobilis
Gonystylus olivaeformis
Gonystylus pentaphyllus
Gonystylus reticulatus
Gonystylus spectabilis
Gonystylus stenosepalus
Gonystylus xylocarpus
Gonystylus pluricornis

利用

木材

ゴニスティルス属の木材は、ラミン (Gonystylus bancanus) を中心に、G. affinis や G. confusus、ガハルイタム (G. macrophyllus) など複数種が利用されています。これらの樹木は中高木で、樹高は24メートル、胸高直径は0.6-1メートル程度です。心材は乳白色から淡黄白色で、木目は通直から浅く交錯するものまであり、肌目は均一で緻密です。辺材は5センチメートルほどで、心材との区別はつきにくいです。特にラミンは材質の個体差が少なく、無臭であることが知られています。

気乾比重は0.64-0.72（平均0.66）で、ラミンは0.52-0.78、G. affinis と G. confusus をまとめたmelawisの気乾比重は0.70前後です。天然乾燥済みの木材は人工乾燥が容易ですが、しみが発生しやすいため、製材後すぐに含浸処理を行う必要があります。緻密な木材であるため曲げ強さや圧縮強さは高い一方、耐衝撃性は低く、剛性は中庸です。蒸し曲げには不向きです。加工は手道具でも機械でも容易ですが、柾目木取りの木材は裂けが生じやすく、加工後の狂いが大きいため、釘打ちには下穴が必要です。接着性は良好で、目止め材を使えば美しい仕上がりが期待できます。ただし、心材は腐りやすく、辺材はヒラタキクイムシの食害を受けやすいという欠点もありますが、透水性が高く、保存薬剤処理は容易です。

用途は広く、家具、額縁、モールディングなど、ブナの代替材として使われています。彫刻やろくろ細工、打撃用ではない道具の柄、ダボ、内装建具、店舗や事務所、木製玩具などにも利用されます。幅木や住宅用フローリングなど、それほど大きな荷重がかからない場所にも適しています。良質なものはロータリーカットして合板や積層材の芯材、スライスカットして化粧単板として使われます。

香木

ガハルイタム (Gonystylus macrophyllus) は、沈香の基源植物の一つとして知られています。ただし、一般的に沈香として知られているものは、同じジンチョウゲ科のジンコウ属 (Aquilaria) のものです。

保全状況

ゴニスティルス属の中でも、ラミン (Gonystylus bancanus) は最も広範囲に伐採されており、商業的に重要な種です。しかし、2018年にIUCNレッドリストで近絶滅種 (Critically Endangered) に指定されるなど、深刻な状況にあります。これは、1980年代から2000年代初頭にかけての過剰な伐採、再生の難しさ、成長速度の遅さ、生育地である泥炭湿地林の環境悪化などが原因です。過去3世代で個体数が80%減少したと推定されています。ラミンは、インドネシアではワシントン条約附属書IIIに掲載されていましたが、2005年に附属書IIに移され、国際取引には輸出入許可が必要となりました。インドネシアでは伐採と商取引がクオータ制となっており、直径40センチメートル以上の木は伐採許可が下りますが、伐採周期は35年と定められています。マレーシアでは、国家林業法に基づき伐採には厳格な許可が必要で、保護区では伐採周期は30年（サラワク州は40年）とされています。伐採後には植林も行われています。

その他、IUCNレッドリストでは、

G. affinis は、伐採と生育地の減少により危急種（Vulnerable）に、
G. forbesii は、木材需要と生育地の断片化により近危急種（Near Threatened）と評価されています。

関連文献

Hassler, M. (2019). World Plants: Synonymic Checklists of the Vascular Plants of the World (version Apr 2018). In: Roskov Y., Ower G., Orrell T., Nicolson D., Bailly N., Kirk P.M., Bourgoin T., DeWalt R.E., Decock W., Nieukerken E. van, Zarucchi J., Penev L., eds. (2019). Species 2000 & ITIS Catalogue of Life, 24th December 2018.
The Plant List (2013). Version 1.1. Published on the Internet.
エイダン・ウォーカー 編 (2006).『世界木材図鑑』乙須敏紀 訳、産調出版。
河村寿昌、西川栄明 共著、小泉章夫 監修『【原色】木材加工面がわかる樹種事典』誠文堂新光社、2014年
ホルガー・ケーニッヒ 著、石川恒夫 訳、高橋元 監修『健康な住まいへの道: バウビオロギーとバウエコロジー』建築資料研究社、2000年。
佐伯浩『この木なんの木』海青社、1993年
熱帯植物研究会 編『熱帯植物要覧』（第4版）養賢堂、1996年。
V.H.ヘイウッド 編、大澤雅彦 監訳『花の大百科事典』朝倉書店、2005年
堀田満「Gonystylus Teijsm. et Binn.」 『世界有用植物事典』平凡社、1989年
村山元春 監修、村山忠親 著『増補改訂 原色 木材大事典185種』誠文堂新光社、2013年
コリン・リズデイル、ジョン・ホワイト、キャロル・アッシャー 著、杉山明子、清水晶子 訳『知の遊びコレクション 樹木』新樹社、2007年。
Komar, T.E., Istomo, Nurjanah, S. (eds.). (2010). Silviculture, study plots, seed production and propagation of Ramin: An Executive Summary. ITTO-CITES, Bogor.
UNEP-WCMC. (2016). Review of species selected on the basis of the Analysis of 2016 CITES export quotas. In: UNEP-WCMC (ed.). Cambridge.

関連項目

ジンコウ - 同じジンチョウゲ科の植物で沈香の基源植物。
ラワン - ボルネオ島産の木材で、フタバガキ科の複数の樹種から得られる。

外部リンク

* Akta Perhutanan Negara 1984 - マレーシアの国家林業法（マレー語）。

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