堀田満

堀田満（ほった みつる）

日本の植物学者である堀田満は、1935年7月23日に大阪府高槻市で生まれ、2015年7月8日に亡くなりました。植物分類学の分野で顕著な業績を残し、理学博士、鹿児島大学名誉教授、鹿児島県立短期大学名誉教授の称号を持ちます。京都大学教養部助教授、鹿児島大学理学部教授、鹿児島県立短期大学学長を歴任しました。

生い立ちと研究への道

大阪府高槻市で小作農家の家に生まれた堀田は、農地改革によって土地を得て、その売却益を元に大学進学を果たしました。中学生の頃から高槻の山を歩き回り、高校時代には前川文夫の植物地理学の本に触発され、植物学への興味を深めました。この出会いが、後の著書『植物の分布と分化』の出版へと繋がります。

植物分類学への貢献

堀田は、サトイモ科、バショウ科、ラン科、ユリ科、セリ科、イワタバコ科など、多岐にわたる植物群の分類学的研究を行いました。特に、スマトラ自然研究プロジェクトを組織し、東南アジアの熱帯雨林での植物採集調査に力を注ぎ、サトイモ科のペディケラルム属（Pedicellarum）や、ウツボカズラ科のNepenthes adnataなどの新種記載も行いました。

学術資料とデータ収集

野外調査の際に撮影された16mm映画フィルム群は、貴重な学術映像資料として京都大学総合博物館に寄贈されています。また、堀田が約半世紀をかけて収集・整理した、世界中の有用植物に関する文献、写真、スケッチなどのデータ群は、A4用紙30万枚にも及び、インドネシアのボゴール植物園に匹敵するほどの規模を誇ります。このデータ群は総合地球環境学研究所に寄贈され、植物分類学、薬学、育種学、農学といった自然科学分野だけでなく、文化人類学、言語学などの人文社会科学の発展にも貢献することが期待されています。現在も、これらのデータのデジタルアーカイブ化が進められています。

晩年と追贈

2015年、堀田は骨髄異形成症候群のため、鹿児島市内の住宅型老人ホームで生涯を閉じました。享年81歳でした。その功績を讃え、正四位と瑞宝中綬章が追贈されました。

略歴

1935年：大阪府高槻市に生まれる。
1960年：大阪府立大学農学部卒業、京都大学大学院理学研究科に進学。
1960年：京都大学探検部海外学術調査でトンガ王国調査隊に参加。
1966年：京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。
1966年：神戸女子大学家政学部講師（常勤）に就任。
1970年：理学博士（京都大学）の学位を取得。
1972年：京都大学教養部助教授に就任。
1988年：鹿児島大学理学部教授に就任（1996年～2000年まで理学部長を務める）。
1993年：松下幸之助花の万博記念奨励賞を受賞。
2001年：鹿児島大学を定年退官、環境大臣表彰（自然保護に関する学術貢献）を受賞、鹿児島大学名誉教授、西南日本植物情報研究所所長に就任。
2002年：鹿児島県立短期大学学長に就任。
2003年：日本植物分類学会賞を受賞。
2006年：鹿児島県立短期大学を退職、鹿児島県立短期大学名誉教授に就任。
2009年：第19回南方熊楠賞を受賞。
2012年：松下幸之助花の万博記念賞20周年特別賞を受賞。
2015年：逝去。

主な著作

『日本列島の植物』（1973年）
『京都植物たちの物語』（1987年）
『世界有用植物事典』（1989年）
『赤道直下、森と火山の島・スマトラの自然と人々』（1992年）
* 『植物の生活誌』（1999年）

堀田満は、植物分類学の発展に大きく貢献しただけでなく、その情熱的な研究姿勢と膨大なデータ収集への貢献は、後世の研究者たちに大きな影響を与えています。

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