ゴラジュデ

ゴラジュデ：ボスニア・ヘルツェゴビナの歴史を刻む都市

ゴラジュデは、ボスニア・ヘルツェゴビナ南東部に位置する都市であり、ボスニア・ポドリニェ県の主都です。ドリナ川の畔に広がるこの都市は、美しい自然に囲まれながらも、紛争の歴史を乗り越えてきた人々の生活が息づいています。

地勢と自然

ゴラジュデは、フォチャ、ソコラツ、ヴィシェグラードといった都市の間に位置し、ヤホリナ山の東斜面に広がっています。標高345mの地点に位置し、ドリナ川の浸食によって形成された沖積段丘が特徴的な地形を作り出しています。周囲は丘陵地が広がり、自然豊かな景観が楽しめます。

人口構成の変遷

ゴラジュデの人口構成は、歴史的な背景によって大きく変化してきました。1991年の国勢調査では、ゴラジュデ基礎自治体全体の人口は約37,573人でした。その内訳は、ボシュニャク人が約70%、セルビア人が約26%を占めていました。しかし、ボスニア紛争を経て、人口構成は大きく変化しました。紛争以前の自治体の領域の大部分は、デイトン合意によってボスニア・ヘルツェゴビナ連邦に属することになりました。

歴史

ゴラジュデの歴史は古く、中世に遡ります。

中世

1376年までセルビア王国の一部であったゴラジュデは、後にボスニア王国の支配下に入ります。その後、フム公の支配を経て、1379年には交易地として記録されるようになりました。1444年には要塞が築かれ、ドゥブロヴニクとの商業的な繋がりを深め、市場として発展しました。1446年には、ゴラジュデ近郊に正教の教会が建てられています。

オスマン帝国支配

1465年、ゴラジュデはオスマン帝国の支配下に入り、オリエント的な特徴を持つようになりました。16世紀には、ムスタファ・ソコロヴッチによってドリナ川を渡る石橋が建設され、交易の中心地として栄えました。しかし、18世紀から19世紀前半にかけては、疫病の影響で衰退しました。その後、オーストリア＝ハンガリー帝国の支配下に入り、第一次世界大戦時にはセルビアやモンテネグロへの反撃拠点となりました。

ユーゴスラビア時代

第二次世界大戦中、ゴラジュデはドイツ軍の侵攻や空襲を受け、イタリア軍も駐留しました。パルチザンが一時的に解放しましたが、最終的に解放されたのは1945年でした。戦後、ゴラジュデの産業は復興し、特に窒素工場が重要な役割を果たしました。

ユーゴスラビア崩壊後

1992年から1995年のボスニア紛争時、ゴラジュデはボシュニャク人領土の飛び地の一つとして、スルプスカ共和国軍に包囲されました。国連の安全地帯に指定されましたが、1994年には大規模な攻撃を受け、多くの犠牲者が出ました。しかし、ゴラジュデはセルビア人による民族浄化が行われなかった数少ない町の一つです。デイトン合意によって、ゴラジュデとボスニア・ヘルツェゴビナ連邦の間には陸回廊が設定されました。

ゴラジュデは、その豊かな自然と歴史的な背景を持つ魅力的な都市です。紛争の傷跡は残っていますが、復興に向けて着実に歩んでいます。ボスニア・ヘルツェゴビナを訪れる際には、ぜひゴラジュデにも足を運んでみてください。

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