ゴリツィア県

ゴリツィア県：歴史と文化が交差する地

ゴリツィア県（Provincia di Gorizia）は、イタリア共和国のフリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州に属していた県です。県都はゴリツィアで、この地域は第一次世界大戦の激戦地として知られています。2017年に行政制度の再編により県としての機能は廃止されましたが、その歴史的な名称と地理的区分は今も残っています。

歴史的背景

この地域は、第一次世界大戦以前はオーストリア＝ハンガリー帝国領であり、イタリア側からは「ヴェネツィア・ジュリア」と呼ばれていました。イゾンツォ川下流域に位置し、第一次世界大戦中のイゾンツォの戦いでは激戦地となりました。戦後、イタリア王国に編入されましたが、スロベニア系住民も多く、第二次世界大戦後にはユーゴスラビアとの間で領有権問題が発生しました。現在の国境線は1947年に定められたものです。

名称と表記

ゴリツィア県は、標準イタリア語の他に、フリウリ語で「Provincie di Gurize」、スロベニア語で「Goriška pokrajina」または「Pokrajina Goriška」と表記されます。県の公式サイトでは、これらの言語が併記されています。また、2007年までスロベニア側にも同名の行政区画「ゴリシュカ県」が存在していました。

地理

ゴリツィア県は、フリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア州の南東部に位置し、南はアドリア海に面し、北と東はスロベニアと接しています。県都ゴリツィアは、ウーディネ、トリエステ、リュブリャナ、ヴェネツィア、ローマといった主要都市からの距離は以下の通りです。

ウーディネの南東33km
トリエステの北北西34km
リュブリャナの西南西70km
ヴェネツィアの東北東115km
ローマの北北東460km

県内を流れるイゾンツォ川とカルソ台地が、この地域の地形を特徴づけています。イゾンツォ川はヴァッレ・デル・ヴィパッツォと呼ばれる盆地を形成し、アドリア海との間にはカルソ台地が広がっています。北部にはコッリオと呼ばれる丘陵地帯があり、南西部にはグラード潟が広がっています。

隣接する地域

ゴリツィア県は、以下のような地域と隣接しています。

北: ブルダ (スロベニア)
北東: ノヴァ・ゴリツァ (スロベニア)
東: シェンペテル＝ヴロトイバ (スロベニア), ミレン＝コスタニェヴィツァ (スロベニア)
南東: トリエステ県
西: ウーディネ県

県内の地域と主要都市

2001年の国勢調査によると、人口5000人以上の主要な都市・集落は以下の通りです。

ゴリツィア (35,105人)
モンファルコーネ (25,877人)
ロンキ・デイ・レジョナーリ (11,075人)
グラード (7,014人)
グラディスカ・ディゾンツォ (6,391人)
スタランツァーノ (6,299人)
* コルモンス (5,715人)

県都ゴリツィアはスロベニア国境に位置し、県内で最大の人口を持つ都市です。中南部にはビシアカリアと呼ばれる平野部があり、工業・港湾都市モンファルコーネがその中心です。モンファルコーネ都市圏はゴリツィアを上回る人口を擁し、ロンキ・デイ・レジョナーリにはフリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア空港があります。アドリア海沿岸にはグラードがあり、海水浴リゾート地として知られています。北部の丘陵地帯はコッリオ、東部の台地はカルソ地方と呼ばれます。

歴史

ローマ時代には、この地域にアクイレイアが築かれ、その後、東ゴート王国、ランゴバルド王国、フランク王国などによって統治されました。中世には、アクイレイアの総大司教領やゴリツィア伯国の領域となりました。1500年以降は、ハプスブルク家の支配下に置かれ、オーストリアによる統治を受けました。ナポレオン戦争中にはフランスの支配下に入りましたが、ナポレオン没落後、ハプスブルク君主国の統治下に復帰しました。

第一次世界大戦では、イゾンツォの戦いの舞台となり、戦後イタリアに編入されました。しかし、第二次世界大戦後にはユーゴスラビアとの国境問題が発生しました。

イタリア王国の統治

1918年、イタリア王国によってヴェネツィア・ジュリアに組み込まれました。その後、1920年に正式にイタリア王国に編入されました。地方分権型であったオーストリア＝ハンガリー帝国に対し、イタリアは中央集権的な地方制度を導入し、旧ゲルツ伯領を管轄する地方行政機関としてゴリツィア県が置かれました。

ファシスト政権下では、強制的なイタリア化政策が行われ、スロベニア語の使用が禁止されるなど、厳しい弾圧が行われました。第二次世界大戦中はドイツ軍の占領下に置かれましたが、パルチザンによる抵抗運動も展開されました。

戦後、ゴリツィア県は「モーガン線」によって分割され、一部はユーゴスラビアに割譲されました。現在の国境線は1947年に定められ、旧ゴリツィア県の一部はゴリシュカ地方としてスロベニアに帰属しました。

文化

ゴリツィア県には、スロベニア人、フリウリ人、ヴェネト人など、多様な民族が居住しています。スロベニア語、フリウリ語、ヴェネト語など複数の言語が使用されています。特にスロベニア語は、一部のコムーネで公用語として認められています。食文化は、ゴリツィア料理やフリウリ料理として知られ、コッリョ・ゴリツィアーノやフリウリ・イゾンツォなど、多くのワインが生産されています。

行政区画

ゴリツィア県には、25のコムーネが属しています。主要なコムーネ（人口5000人以上）は以下の通りです。

交通

県内には、主要な道路や鉄道が通っています。高速道路A4号線が県内を通過し、RA17号線がゴリツィアとスロベニアを結んでいます。また、ウーディネ＝トリエステ線やヴェネツィア＝トリエステ線などの鉄道路線が利用できます。フリウリ＝ヴェネツィア・ジュリア空港も県内にあり、モンファルコーネ港は重要な港湾施設です。

出身者

著名な出身者として、ノーベル物理学賞を受賞したカルロ・ルビア、サッカー選手のディノ・ゾフとファビオ・カペッロなどがいます。


ゴリツィア県は、歴史と文化が深く交錯する場所であり、その多様な側面は、今もこの地域を訪れる人々を魅了し続けています。

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