サイコソルジャー

サイコソルジャー

1987年3月にSNKからアーケード向けにリリースされた強制横スクロール形式のアクションシューティングゲーム。本作は同社のゲーム『アテナ』の正式な続編として位置づけられています。

概要

ゲームの舞台は荒廃した近未来。異形の存在『屍愚魔』によって世界が闇に覆われる中、太古の予言に謳われた「二人の光の戦士」として選ばれた麻宮アテナと椎拳崇が立ち向かいます。彼らはその身に宿る超能力『サイコパワー』を武器に、世界の平和を取り戻すための果てしない戦いに旅立ちます。

本作の大きな特徴として、退廃的な世界観を表現するステージ背景やBGMが挙げられます。ステージの進行に合わせてこれらが多彩に変化し、プレイヤーをゲームの世界観に深く引き込みます。特に革新的なのは、メインBGMに肉声によるボーカル音声が使用されたこと。「歌うゲーム」として知られ、特定のステージではBGMのループ冒頭部分に歌が流れます。使用された音源チップはFM音源用のYM3526とADPCM音源用のY8950。ボーカルパートはADPCM音源で再生されました。日本語版と海外版で歌唱言語が異なり、当時アイドルだった清水香織が両バージョンの歌唱を担当しています。

ゲームシステム

プレイヤーは8方向レバーとAボタン（サイコ・ビーム）、Bボタン（サイコ・ボール）を使ってキャラクターを操作します。ステージの最後には強力なボスが待ち構えており、ボス地点に到達するとスクロールが停止し、ボス戦に突入します。ボスを撃破すると再びスクロールが始まり、パワーアップアイテムを獲得できる中間地点を経て次のエリアへと進みます。

ゲームは全6ステージ構成で、残機制を採用しています。即死性のダメージ判定が存在し、敵や敵弾、障害物への接触、画面左端の壁に挟まれる、最下段の穴への落下などでミスとなります。全ての残機を失うとゲームオーバーです。ミスした際は短時間の待機状態（UFOに乗った状態）となり、この間は無敵で地形を無視して移動でき、攻撃も可能です。任意のタイミングか一定時間経過でその場に復帰してゲームが続行されます。

コンティニューはゲームオーバー画面でのクレジット投入で行えますが、プレイ中にクレジットを追加することで、あらかじめ残機を最大30まで補充しておくことが可能です。1P・2P双方のスタートボタンを押すことで、それぞれのプレイヤーに残機を追加できます。

攻撃とアイテム

プレイヤーの基本攻撃はAボタンで発射するサイコ・ビームです。これは3段階まで強化可能ですが、破壊可能な壁は強化段階に関わらず3回ヒットさせなければ破壊できません。移動しながらの射撃はできません。

ステージ中に出現するパワールーム（いわゆるアイテムボックス）を通過することで、様々な効果を得られます。破壊可能な壁に隠されている場合や、特定の場所で自動的に出現するものがあります。

エレクトロ・ルーム: サイコ・ビームの威力を強化します。緑 → 青 → 赤 の順に強くなり、赤になるとそれ以上は利用できません。
エナジー・ルーム: サイコエネルギーを4ゲージ追加します。サイコエネルギーは必殺技の発動に必要なゲージで、その量によって必殺技の種類が変化します。エネルギーが最大の場合は利用できません。
サイコ・ルーム: サイコ・ボールを1個または4個補充します。所持数最大時や変身中、特定の必殺技発動中は利用できません。
マイナス・ルーム: 通過する度にサイコエネルギーが8ポイント減少します。他のルームと異なり、通過しても消滅せず、繰り返し利用（？）できてしまいます。

その他のアイテムとして、Bボタンで発射する必殺技の源となるサイコ・ボールがあります。サイコエネルギーの状態に応じて技が変化し、必殺技1発ごとに1つ消費します。必殺技の発動中は短時間無敵です。また、サイコ・ボールは常に4個1セットでキャラクターの周囲を回転しており、敵弾を防ぐ効果があります。敵弾を防ぐとエネルギーが減り、エネルギーがない場合はボール自体が減ります。エネルギーが多いほど高速回転になり、敵弾を防ぐ隙が少なくなります。エネルギー最大時は高速回転で敵弾を完全に防ぐことができます。最大18個まで所持可能ですが、画面に表示されるのは防御中の4個とステータス欄の8個の計12個までです。初期状態では4つ所持しています。

サイコ・ソード: 壁に隠された剣。取得するとサイコ・ビームと同時に剣を振り下ろす攻撃も行われます。約64回使用すると消滅します。剣の振りは壁や敵弾を破壊する効果があり、上段にも攻撃判定が発生します。サイコ・ビームの壁破壊能力は失われますが、ビームは障害物や壁を貫通するようになります。
クリア・ポイント: 画面上の敵をパワーアップアイテムに変えて一掃します。小型飛行敵や敵弾は風船に、その他の敵はサイコ・ボールになります。後半ステージでは効かない敵も存在します。
フル・ポイント: サイコエネルギーが最大値になります。
タケノコ: 特定の場所に出現し、破壊すると風船、UFO、トランプのいずれかが出現します。破壊せずに通過しようとするとキャラクターが一時的に操作不能になります。
UFO、風船: 得点アイテム。出現後の高さやタイミングで獲得点数が変化します。UFOを多く取るとタマゴからスペシャルアイテムが出やすくなります。風船を高得点で取り続けるとトランプが出やすくなります。
トランプ: 1UPアイテム。残機が1機増えます。
タマゴ: 破壊するとスペシャルアイテムかザコ敵のモームが出現します。
チェンジ・アイテム: 2人プレイ専用。1Pと2Pの装備を入れ替えます。
ターゲットポイント: 2人プレイ専用。取得したキャラクターに敵の攻撃が集中するようになります。
敵の進化・退化: 矢印形のアイテム。取得すると画面内の敵が1ランク進化または退化します。
ガイコツ: 取得すると全ての装備とサイコエネルギーを失います。
スペシャル・アイテム: タマゴから稀に出現し、取得したキャラクターを一定時間変身（ミューテーション）させます。変身中は攻撃が前方への火炎攻撃のみとなり、キャラクターの向きも進行方向に固定されます。ザコ敵や壁を一撃で破壊でき、敵からの攻撃に対して無敵になりますが、敵や敵弾との接触でサイコエネルギーが減少し、エネルギーが0になるかボス撃破で変身が解除され、全てのサイコボールを失います。変身中は敵の攻撃が激化し、特定の敵（ダフ君）が強化される場合があります。2人プレイでは、変身していないプレイヤーは変身したプレイヤーの背中に乗ることができますが、乗った側はダメージを受けるとミスとなります。

必殺技

サイコ・ボールを1つ消費して発動する必殺技は、サイコエネルギーの量に応じて以下の種類に変化します。サイコエネルギーがMAXかつサイコ・ボールを12個以上所持している状態では、サイコ・ボールが高速回転し、究極奥義弾が発動可能な状態になります。

天地炸裂弾 (サイコ・エネルギー 0〜4): 着弾点でサイコ・ボールが上下に分裂します。
反復爆裂弾 (サイコ・エネルギー 5〜8): 着弾点で前後に跳ね返り、画面外に出るまで有効です。
縦横無尽玉 (サイコ・エネルギー 9〜12): 着弾点で45度の角度で跳ね返り、画面外に出るまで有効です。
爆進直列弾 (サイコ・エネルギー 13〜16): サイコ・ボールが一直線に敵や障害物を貫通して飛びます。
飛翔撃滅弾 (サイコ・エネルギー 17〜20[MAX]): サイコ・ボールが2つに分裂し、上下に蛇行しながら一直線に貫通して飛びます。
究極奥義弾 (サイコ・エネルギー MAX ＋ サイコ・ボール12個以上所持): サイコ・ボールがゆっくり回転しながら渦状に広がり、画面全体を掃討します。画面中央で発動すると最も効果的です。この技のみエネルギー消費制で、1発につきエネルギーを4メモリ消費します。発動中はサイコ・ルームが利用できず、エネルギーが尽きると全てのサイコ・ボールを失います。この技の発動中、サイコ・ボールの高速回転により敵弾を完全に防ぎますが、その際も通常通りエネルギーを消費します。

登場キャラクター

プレイヤーキャラクター

スペシャルアイテムによる変身時の姿が異なる以外に、アテナと拳崇の性能差はありません。

麻宮アテナ: 1P側のキャラクター。16歳の普通の女子高生ですが、生まれつき超能力を持っています。その力は歌を歌うことでより高まります。同社のアクションゲーム『アテナ』の主人公アテナ姫の子孫であり、超能力はその血筋から先天的に受け継いだものです。スペシャルアイテム取得時は火の鳥に変身します。
椎拳崇: 2P側のキャラクター。アテナのパートナーを務める中国人。アテナからは「とっても頼れる助っ人」と呼ばれています。中国拳法の達人であり、彼の超能力は厳しい修行によって後天的に身につけたものです。アテナを「アテナはん」と独特の呼び方をします。スペシャルアイテム取得時は龍に変身します。

敵キャラクター

異形の存在である屍愚魔族が主な敵となります。一部の敵は時間経過やアイテムによって進化または退化します。

ゼール系: 昆虫のような姿の屍愚魔。メゾ・ゼール（幼生体）→ メギド・ゼール（進化体）→ ルメギド・ゼール（最終形態、飛行可能）と進化します。
ゴルゴ系: モグラ型や猿型、サイ型などの屍愚魔。モグ・ゴルゴ（地中潜行）→ ガル・ゴルゴ（岩猿、頭部を投げつける）と進化します。バルガ・ゴルゴ（サイ型）は独立して出現します。
ラゴス系: 地底湖に潜む魚型や半漁人の屍愚魔。ギド・ラゴス（魚型）→ ミド・ラゴス（半漁人）と進化します。
ドラゴ系: トカゲ型や龍型の屍愚魔。アル・ドラゴ（トカゲ型）→ ダフ・ドラゴ（大型トカゲ型）→ ゲルド・ドラゴ（飛行可能）と進化します。
シグマ系: 細胞やクラゲのような外観の屍愚魔。ゼブ・シグマ（破壊時に破片飛散）、グラ・シグマ（漂う）、ビビ・シグマ（張り付き、体を伸ばす）などが存在します。
その他、編隊で飛来するウゾウ・ムゾウ（小型飛行敵）、第1・2面に集団で出現するゾンビのダフ君、タマゴから孵化する毛虫のモームなどがいます。モームは放置するとメゾ・ゼールに進化します。

ステージボス

各ステージの最後に待ち受ける強力な屍愚魔です。第3ステージまでは、ボス本体を倒すか、ボスが潜む背景の壁を破壊することでクリアが可能です。

ゼール・ゼブブ: 第1ステージボス。ビルに巣食うゼール系の親玉。突進攻撃を行います。
ドラ・ゴーン: 第2ステージボス。ビルに潜む龍型の屍愚魔。長い首を使った攻撃を仕掛けます。
ゴルゴ・メカベ: 第3ステージボス。岩壁に潜むゴルゴ系の親玉。巨大な目玉を投げつけて攻撃します。
ラゴス・アゴン: 第4ステージボス。巨大な魚型のラゴス系親玉。水面からの体当たりや拡散弾で攻撃します。
マ・グローン: 第5ステージボス。岩でできた巨大な屍愚魔。壁に張り付き、顔を守りながら首を伸ばして攻撃します。
シグ・ド・ダビデ: 最終ボス。全ての屍愚魔族の創造主。桁違いの体力と、攻撃が届きにくい弱点を持つ強敵です。

サウンドトラック

ゲームのボーカルBGMなどを収録したサウンドトラックが、清水香織のシングルとしてCDおよびカセットテープで一般販売されました。作詞・作曲はSNK会長の川崎英吉名義となっていますが、実際の作曲はSNK初期の作品を手掛けた西田和弘（KENNY）によるものです。A面にはゲームと同名の主題歌「サイコソルジャー」、B面にはエンディングテーマ「傷だらけのブルームーン」が収録されています。

移植と関連作品

本作は発売後、様々なプラットフォームに移植されています。

SNKアーケードクラシックスゼロ: PlayStation Portable向けに2011年に発売されたコレクションソフトに収録。国内初の家庭用完全移植とされ、清水香織による歌声も再現されていますが、アドホック通信に非対応のため2人同時プレイはできません。
SNK 40th ANNIVERSARY COLLECTION: Nintendo Switch、PlayStation 4|PlayStation_4、XBOX One、Steam向けにリリースされたSNKの記念コレクション。Steam版以外は国内未発売ですが、日本語に完全対応しています。多数のSNKタイトルが収録されており、機種によって一部収録タイトルが異なります。
アーケードアーカイブス: PlayStation 4|PlayStation_4およびNintendo Switch向けに2019年に配信。アーケード版を再現した移植です。
海外のホビーパソコン向けにも、アムストラッドCPC、コモドール64、ZXスペクトラム版が存在しますが、これらは日本国内では発売されませんでした。

また、ファミリーコンピュータ版『アテナ』には、サイコソルジャーの歌などを収録したカセットテープが同梱されていました。かつてファミリーコンピュータへの移植も計画され、雑誌などで告知されていましたが、最終的には中止となっています。

麻宮アテナと椎拳崇は、本作のキャラクター設定をベースに、SNKの様々な関連作品にも登場しています。

アクションRPG『ゴッド・スレイヤー はるか天空のソナタ』（1990年）には椎拳崇がゲスト出演しています。
PlayStation向けアドベンチャーゲーム『ATHENA -Awakening From the Ordinary Life-』（1999年）では、本作の設定を下敷きにした全く異なるオリジナルストーリーが展開し、アテナと拳崇が主要人物として登場します。ゲームアーカイブスでも配信されています。
* SNKの携帯電話アプリシリーズ『Days of Memories』の一作、『Days of Memories 〜世界で一番熱い冬〜』（2009年）では麻宮アテナがメインヒロインの一人として登場しました。

さらに、1998年にはテレビ東京系列でテレビドラマ『ATHENA -アテナ-』が放送され、石橋けいが麻宮アテナ役を演じています。

もう一度検索