サイレン (ロキシー・ミュージックのアルバム)

サイレン (Siren)

1975年、イギリスのロックバンド、ロキシー・ミュージックが通算5枚目となるスタジオアルバム『サイレン』を世に送り出しました。この作品は、彼らのキャリアにおいて重要な節目となる一枚であり、後に活動を一時停止する（実質的な解散）前の最後のスタジオアルバムとなりました。

制作背景とメンバー

本作の制作では、バンドの中心人物であるブライアン・フェリーが多くの楽曲を手がけました。共作者としては、長年の盟友であるアンディ・マッケイ（オーボエ、サクソフォーン）やフィル・マンザネラ（ギター）に加え、新たにエディ・ジョブソン（ヴァイオリン、シンセサイザー、キーボード）が名を連ねています。これは、前作までのメンバー構成からの変化を示すものでした。ベースパートについては、前々作、前作に引き続き、ジョン・ガスタフソンがサポートミュージシャンとして参加し、アルバムのボトムを支えました。バンドの正規メンバーは、ボーカルとキーボード、ハーモニカを担当するブライアン・フェリー、オーボエとサクソフォーンのアンディ・マッケイ、ギターのフィル・マンザネラ、ドラムスのポール・トンプソン、そしてヴァイオリンやシンセサイザー、キーボードを操るエディ・ジョブソンという布陣でした。

このアルバムは、1975年にロンドンのAIRスタジオにて録音されました。レコーディング・エンジニアはスティーヴ・ナイが担当し、ロス・カラム、マイケル・セラーズがアシスタントを務めました。1999年のリマスタリングはボブ・ラドウィックが行っています。

収録曲と商業的成功

『サイレン』からは、「恋はドラッグ」（Love is the Drug）と「ボス・エンズ・バーニング」（Both Ends Burning）の2曲がシングルとしてリリースされました。特に「恋はドラッグ」は、本国イギリスでチャート2位、アメリカでも最高30位を記録する大ヒットとなり、アルバムの知名度向上に大きく貢献しました。この楽曲は、そのキャッチーなメロディと洗練されたサウンドで、今日でもロキシー・ミュージックの代表曲の一つとして広く知られています。

印象的なジャケットアート

アルバムのカバーアートもまた、『サイレン』を特徴づける要素の一つです。神秘的な雰囲気を持つ女性が描かれたジャケットのモデルは、当時テキサス州出身であったジェリー・ホールです。彼女は後に、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー夫人として知られることになります。このジャケットは、ロキシー・ミュージックのアートワークへのこだわりを示すものであり、アルバムのコンセプトを視覚的に表現しています。

キャリアにおける位置づけと評価

『サイレン』発表後、ロキシー・ミュージックはイギリス、ヨーロッパ、そしてアメリカを巡るツアーを実施しました。このツアーが終了した1976年6月末、バンドは一時的に活動を終えることを発表しました。そのため、『サイレン』は、彼らの第1期の活動における終着点とも見なせる作品です。

音楽評論の分野では、本作は高く評価されています。例えば、『ローリング・ストーン』誌が選定した「オールタイム・ベストアルバム500」では、本作が374位にランクインしており、その音楽的な価値が広く認められていることを示しています。

収録曲リスト

特記がない限り、ブライアン・フェリーによって作曲されました。

恋はドラッグ (Love is the Drug) (フェリー、アンディ・マッケイ)
エンド・オブ・ザ・ライン (End of the Line)
センティメンタル・フール (Sentimental Fool) (フェリー、マッケイ)
ワールウィンド (Whirlwind) (フェリー、フィル・マンザネラ)
シー・セルズ (She Sells) (フェリー、エディ・ジョブソン)
クッド・イット・ハップン・トゥ・ミー? (Could it Happen to Me?)
ボス・エンズ・バーニング (Both Ends Burning)
ナイチンゲール (Nightingale) (フェリー、マンザネラ)
ジャスト・アナザー・ハイ (Just Another High)

参加ミュージシャン

ブライアン・フェリー – ボーカル、キーボード、ハーモニカ
アンディ・マッケイ – オーボエ、サクソフォーン
フィル・マンザネラ – ギター
ポール・トンプソン – ドラム
エディ・ジョブソン - ヴァイオリン、シンセサイザー、キーボード
* ジョン・ガスタフソン - ベース (サポートミュージシャン)

『サイレン』は、ロキシー・ミュージックの多様な音楽性を凝縮し、商業的な成功と批評的な評価の両方を手にした、彼らのキャリアを語る上で欠かせない名盤です。

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