サウスダコタ級戦艦 (1920)

サウスダコタ級戦艦：幻の超弩級戦艦

サウスダコタ級戦艦は、アメリカ海軍が第一次世界大戦中に計画した超弩級戦艦です。1916年のダニエルズ・プランに基づき、コロラド級戦艦の後継として6隻の建造が予定されていました。本級は、16インチ砲12門を搭載し、当時の世界最強の戦艦を目指したものの、ワシントン軍縮条約により全てが建造中止となる、悲劇的な運命を辿りました。

計画の背景

1910年代のアメリカ海軍は、世界最強の海軍を築くべく、大規模な海軍増強計画であるダニエルズ・プランを策定しました。この計画の中心には、戦艦10隻と巡洋戦艦6隻の建造があり、サウスダコタ級はその中核を担う存在でした。

先行するコロラド級戦艦は、45口径16インチ砲を連装砲塔に8門搭載していましたが、サウスダコタ級では、新たに開発された50口径16インチ砲を三連装砲塔に収め、合計12門を搭載する計画でした。この砲力増強に加え、機関出力もコロラド級の約2倍に強化され、最高速力は23ノットに引き上げられる予定でした。

設計の特徴

サウスダコタ級は、パナマ運河を通過できる範囲内で、可能な限り兵装と機関を強化する方針で設計されました。船体規模は拡大され、主砲の強化に加え、防御力もコロラド級を上回るものが目指されました。しかし、舷側装甲は16インチ砲に対する防御力を維持しつつ、若干削減されることになりました。

本級は、大火力・重装甲の戦艦と、軽装甲・高速のレキシントン級巡洋戦艦を組み合わせて運用する構想で、アメリカ海軍の戦力の中核となるはずでした。

計画の中止と影響

サウスダコタ級の建造は1917年に認可され、1920年以降に6隻が起工されました。しかし、建造途中の1921年、ワシントン軍縮会議が開かれ、1922年2月にワシントン海軍軍縮条約が締結されました。この条約により、主力艦の保有が制限されたため、サウスダコタ級の建造は同年2月8日に中止され、未完成の船体は1923年に売却されました。

サウスダコタ級の建造中止は、アメリカ海軍の戦艦開発に大きな影響を与えました。本級で得られた技術や設計思想は、その後のノースカロライナ級、サウスダコタ級（2代目）、アイオワ級、モンタナ級といった新世代戦艦へと引き継がれていきます。特に、強力な16インチ砲の搭載や、高速力を追求した設計思想は、後のアメリカ戦艦の基本的な特徴となりました。

また、日本海軍もサウスダコタ級の情報を収集しており、その強力な砲力と防御力に警戒感を抱いていました。このことは、後の紀伊型戦艦の計画にも影響を与えたとされています。

同型艦

サウスダコタ級として計画された艦は以下の6隻です。

サウスダコタ (USS South Dakota, BB-49)
インディアナ (USS Indiana, BB-50)
モンタナ (USS Montana, BB-51)
ノースカロライナ (USS North Carolina, BB-52)
アイオワ (USS Iowa, BB-53)
マサチューセッツ (USS Massachusetts, BB-54)

これらの艦名は、後に建造された新世代戦艦に引き継がれました。

まとめ

サウスダコタ級戦艦は、アメリカ海軍が当時の技術力を結集して計画した超弩級戦艦でした。しかし、ワシントン軍縮条約という国際的な政治情勢の変化により、その夢は実現しませんでした。もし完成していれば、アメリカ海軍史上最大最強の戦艦となっていたことは間違いありません。本級の設計思想と技術は、その後のアメリカ戦艦に大きな影響を与え、現代の軍艦技術にも繋がっています。

参考資料

「世界の艦船」海人社
篠原幸好 / 今井邦孝：文『未完成艦名鑑 1906～45』光栄
太平洋戦史シリーズ 58『アメリカの戦艦』学研プラス
国立国会図書館デジタルコレクション
福永恭助『挑むアメリカ』日本評論社
海軍少佐福永恭助『増補　軍艦物語』一元社
ヘクトル・バイウォーター 著『太平洋海權論』海軍軍令部 訳、水交社
藤田定市 編『海事参考年鑑　大正十年版』有終會

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