サカツラガン

サカツラガン

サカツラガン（Anser cygnoid）は、カモ目カモ科マガン属に位置する鳥類で、主に東アジアに分布しています。この種の特性や生態について詳しく見ていきましょう。

分布

サカツラガンはカザフスタンやモンゴル、ロシア南東部、中国、北朝鮮、韓国、日本に生息しています。繁殖期は夏季に入ると、カザフスタン、中国北東部、モンゴル南部、ロシア南東部で繁殖活動を行い、冬季には中国南部や朝鮮半島に移動し、越冬します。特に中国の鄱陽湖や韓国の漢江が主要な越冬地とされており、日本には冬季に時折飛来することもありますが、その数は非常に限られており、まれな冬鳥として知られています。

形態

この鳥は全長が81から94センチメートルほどで、オスの翼長は45から60センチメートル、メスは37.5から44センチメートルです。翼を広げると153から185センチメートルに達します。体重は約3.2キログラムほどで、頸部が細長く、その形状が特徴的です。羽の色は上面が赤褐色であり、頬や喉にかけては淡褐色、胸部から腹部にかけては褐色を呈します。特に頬の羽毛には、飲酒によって赤くなったように見える橙色が帯びる個体も見られ、その外見から和名の“酒面雁”という名称が由来しています。嘴は大型で黒色をしており、後肢は橙色です。幼鳥は成鳥に比べ、額の白色部分が少ないのが特徴です。

生態

サカツラガンは河川や湖沼、湿原などの水辺に生息し、主に植物を食べる草食性です。繁殖地では植物の茎や葉を、越冬地では水生植物の根や種子を主に食べる傾向があります。繁殖期には水辺の地表に草を積み上げた巣を作り、通常4から6個の卵を産卵します。抱卵はメスが担当し、その期間は28から30日続きます。抱卵中、オスは巣周辺をしっかりと守ります。また、雛は孵化後75から90日で飛翔できるようになります。

人間との関係

中国ではサカツラガンが家禽化され、特に嘴が橙色でコブのあるシロガチョウが有名です。このことから、サカツラガンは人間との関わりを持ちつつ生息しています。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）によって、サカツラガンは「危急種（VU）」に指定されています。個体数は減少傾向があり、主に開発による生息地の破壊や狩猟が要因とされています。日本でも、過去には定期的に越冬する群れが確認されていましたが、現在ではその数は激減しており、環境省によって情報不足の状態にあるとされています。特に、三峡ダムの建設が越冬地となる鄱陽湖の環境に影響を及ぼすことが懸念されています。

サカツラガンはその美しい姿と生態的特徴によって注目される一方で、環境変化に敏感な生物でもあります。今後の保全活動が求められている種の一つです。

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