サミュエル・デュポン

サミュエル・フランシス・デュポン：アメリカ海軍の近代化に貢献した軍人

サミュエル・フランシス・デュポン（Samuel Francis Du Pont, 1803年9月27日 - 1865年6月23日）は、アメリカ合衆国の海軍軍人であり、最終階級は海軍少将でした。名門デュポン家の一員であり、同世代で唯一、姓の「D」を大文字で表記しました。米墨戦争と南北戦争で傑出した働きをし、海軍兵学校校長も務めるなど、アメリカ海軍の近代化に重要な貢献を果たしました。

生い立ちと海軍入隊

デュポンは、ニュージャージー州バーゲンポイント（現在のベイヨン）で、ビクター・マリー・デュポンとガブリエル・ジョセフィーヌ・ド・ラ・フィット・ド・ペルポート夫妻の次男として生まれました。叔父には、化学会社デュポンの創業者であるエルテール・イレネー・デュポンがいました。幼少期は、デラウェア州ウィルミントン近郊の父の家で過ごしました。9歳でフィラデルフィアのマウントエアリー・アカデミーに入学しますが、父の事業失敗により学費が払えなくなり、海軍入隊を勧められました。デュポン家はトーマス・ジェファーソン大統領と親交があり、ジェームズ・マディソン大統領から12歳で海軍士官候補生に任命され、1815年12月に海軍に入隊しました。

当時、海軍兵学校は存在しなかったため、デュポンは海上で数学と航海術を学びました。1821年にはUSSコンスティチューションに配属され、その後、西インド諸島やブラジル沖での任務を経験しました。1825年にはUSSノースカロライナで「航海士」に昇格し、地中海での任務を遂行しました。1826年に海軍大尉に昇進し、USSポーポイズ乗艦を命じられましたが、1827年に父が亡くなったため一時帰郷、1829年にはUSSオンタリオに配属されました。初期の士官時代には、能力不足と政治的影響力だけで地位を得ている上官たちを公然と批判しました。

結婚と軍歴の発展

1833年、デュポンは従姉妹であるソフィー・マドレーヌ・デュポンと結婚しました。デュポンは士官日誌をつけなかったため、ソフィーとの文通が、その後の軍歴における彼の行動や観察を記録した主要な資料となりました。1835年から1838年までUSSコンステレーションとUSSウォーレンの副艦長を務め、その後メキシコ湾でUSSウォーレンとUSSグランパスを指揮しました。1838年にはUSSオハイオに乗艦し、地中海での任務を1841年まで続けました。1842年に海軍中佐に昇進し、中国へ向かう途中で重病を患い、指揮官を辞退しました。1845年、ロバート・ストックトン海軍准将の旗艦USSコングレスの艦長として現役に復帰し、米墨戦争勃発までにハワイ諸島を経由してカリフォルニアに到着しました。

米墨戦争での活躍

1846年、デュポンはUSSカイアン艦長となり、カリフォルニア湾を掃討し、敵船30隻を捕獲または破壊しました。これにより、海軍戦闘指揮官としての能力を示しました。サンディエゴ占領やバハ海岸での作戦、ラパス占領、グアイマス港での砲撃戦など、数々の戦いで勝利を収めました。1847年にはマサトラン市を占領し、1848年にはサンホセ・デル・カボを強襲し、包囲されていた戦隊を救出しました。戦争終盤には、カリフォルニア海上封鎖の指揮を執り、その後、陸上作戦にも参加しました。

戦間期：海軍の近代化への貢献

デュポンは、戦間期の10年間、陸上勤務となりました。この時期に、アメリカ海軍の近代化に大きく貢献しました。蒸気機関の可能性を研究し、海軍兵学校では工学や数学を重視した教育を提唱しました。海軍兵学校校長に指名されましたが、定年が近い人物に適したポストと考え、4ヶ月で辞任しました。海軍の改革を強く主張し、規則や規定の改正に尽力しました。また、アメリカ合衆国灯台局理事として、旧式なシステムの改善を提案し、その提案は灯台法として議会で採用されました。

1853年には、ニューヨークで開催された世界産業博覧会の総監督を務めましたが、入場者数の低迷により負債を抱え辞任しました。海軍改革への熱意は強く、1855年の議会法を支持する中で『海軍の効率推進』を執筆しました。海軍効率理事会に任命され、201名の海軍士官の解任を監督しましたが、解任された士官たちが議会の友人を利用して復職を求め、大きな批判を浴びました。1855年に海軍大佐に昇進し、1857年にはUSSミネソタ艦長として、駐中国アメリカ公使の北京への派遣を支援しました。その後、日本、インド、アラビアを回航し、1859年にボストンに帰還しました。1860年には、日本の遣米使節団を迎え、ワシントンD.C.、ボルティモア、フィラデルフィアを共に回り、日米間の貿易と投資の道を拓きました。1860年にはフィラデルフィア海軍造船所の指揮官に就任しましたが、南北戦争勃発により実戦任務に復帰することになりました。

南北戦争での活躍と失意

南北戦争開戦時、デュポンは独自の判断でチェサピーク湾に艦隊を派遣し、メリーランド州アナポリスへの陸軍の上陸を支援しました。1861年6月には、南軍に対する海軍作戦を立案するワシントンの理事会議長に就任しました。海軍少将に任命され、南大西洋封鎖戦隊の指揮官としてUSSウォバシュに乗り、当時アメリカ海軍の士官が率いた最大の艦隊を率いました。1861年11月7日には、サウスカロライナ州ポートロイヤル港の2つの砦を占領し、北軍海軍はジョージア州南部からフロリダ州東海岸までを支配下に置きました。この戦術的成功により、デュポンはアメリカ合衆国議会から称賛を受けました。

1862年末には、アメリカ海軍初の鉄装甲艦隊の指揮を任されました。しかし、大砲の数や発射間隔の問題から、マカリスター砦への攻撃は失敗に終わりました。その後、海軍省からサウスカロライナ州チャールストンへの攻撃命令を受け、1863年4月7日に装甲艦9隻で攻撃を試みましたが、港への水路の障害や敵の激しい砲火により撤退を余儀なくされました。この失敗により、9隻の装甲艦のうち5隻が航行不能となり、1隻は後に沈没しました。チャールストンでの失敗について、海軍長官ギデオン・ウェルズはデュポンを非難し、デュポンは苦悩しました。その後、自ら解任を求め、7月5日に解任されました。

デュポンはチャールストン攻撃に関する公式記録を入手し、自身の行動の正当性を主張しましたが、議会の調査ではどちらともつかない結論となりました。デュポンはエイブラハム・リンカーン大統領の支持を得ようとしましたが、無視され、デラウェア州の自宅に戻りました。その後、短期間、海軍の昇進を審査する理事会に務めました。

しかし、その後の出来事はデュポンの判断と能力が正しかったことを証明しました。その後、アメリカ海軍がチャールストンを攻撃しても失敗に終わり、チャールストンは1865年になってようやく、ウィリアム・シャーマンの陸軍による侵攻で陥落しました。

死と遺産

デュポンは1865年6月23日にフィラデルフィアで亡くなり、デュポン家の墓地に埋葬されました。1882年、アメリカ合衆国議会はデュポンの功績を認め、ワシントンのパシフィック広場にデュポンの彫像を設置することを決定しました。1884年12月20日に除幕式が行われ、この交差点はデュポン交差点と名付けられました。その後、彫像はデュポン家によってデラウェア州ウィルミントンに移され、跡地にはデュポンを記念する噴水が設置されました。

デラウェアシティ近くのデュポン砦や、アメリカ海軍の駆逐艦USSデュポン（DD-152およびDD-941）は、すべてデュポンの栄誉を称えて名付けられました。

脚注

[参考文献]

Background notes for the papers of Samuel Francis du Pont 1806-1865, Hagley Museum and Library, Wilmington, Delaware.
The American Civil War, Ronald W. McGranahan, 2004-05.
The Columbia Encyclopedia, Sixth Edition, 2001-05.
Dictionary of American Fighting Ships, Department of the Navy, Navy Historical Center. Includes histories of the first and second - ウェイバックマシン（2004年3月2日アーカイブ分） Du Pont destroyers.
Lincoln's Tragic Admiral: The Life of Samuel Francis Du Pont, Kevin J. Weddle. University Press of Virginia, 2005.
Du Pont, the Making of an Admiral: A Biography of Samuel Francis Du Pont, James M. Merrill. Dodd, Mead, 1986.

[外部リンク]

ウィキメディア・コモンズには、サミュエル・デュポンに関するカテゴリがあります。
DUPONT, Samuel Francis: Memorial Fountain in Dupont Circle in Washington, D.C.

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