サムジャウタ急行

サムジャウタ急行

概要

サムジャウタ急行は、南アジアに位置する二つの隣国、インドとパキスタンを結ぶ国際旅客鉄道です。ヒンディー語、パンジャーブ語、ウルドゥー語でそれぞれ表記されるこの列車名は、ヒンディー語やウルドゥー語で「協定」や「調和」を意味する言葉に由来しています。この名称は、まさにこの列車の運行が、常にインドとパキスタンの両国関係と深く結びついており、その友好と緊張の度合いを示すバロメーターとしての側面を持つことを示唆しています。別名「友好列車」とも称されるこの路線は、インドの首都デリーとパキスタンの主要都市ラホールを結び、陸路で国境を越える人々のための主要な交通手段の一つとして機能しています。

歴史

サムジャウタ急行の運行開始は、1971年の第三次印パ戦争終結後、両国が関係正常化と緊張緩和を目指して締結したシムラー合意（シムラ協定）を受けたものでした。この歴史的な合意に続き、1972年7月22日に列車の運行が始まりました。運行開始当初、サムジャウタ急行はパキスタン側のラホールとインドのアムリトサル間、約52キロメートルを結んでいました。

長らく、このサムジャウタ急行はインドとパキスタンを鉄道で結ぶほぼ唯一の路線でした。その後、タール・エクスプレスが再開されるまで、国境を越える鉄道による移動手段として重要な役割を担いました。

1980年代に入ると、インドのパンジャーブ州における治安上の懸念が高まりました。これを受けて、インド鉄道は通関手続きと入国審査を集約・実施するため、インド側の終着駅をアムリトサルから国境近くのアッタリ駅へと変更しました。これにより、乗客はアッタリ駅で手続きを済ませてから国境を越えることになりました。2000年4月14日には、インド鉄道とパキスタン鉄道間で運行に関する協定が改定され、国境を跨ぐ約3キロメートルの区間の取り扱いが明確化されました。

サムジャウタ急行の運行は、印パ間の政治的な緊張や出来事によって度々中断されてきました。特に顕著な例としては、2001年12月13日に発生したインド議会襲撃事件後の対応が挙げられます。この事件を受け、列車は2002年1月1日から運行を停止しましたが、その後両国関係の改善に伴い、2004年1月15日に運行が再開されました。

また、2007年12月27日のパキスタンにおけるベナジル・ブット元首相暗殺事件の際も、治安上の理由から一時的に運行が見合わせられました。さらに近年では、2019年2月に発生した両国間の軍事的対立を受けて、同年2月28日に再び運行が停止されましたが、緊張緩和を受けて同年3月には比較的早期に再開されています。このように、サムジャウタ急行の運行状況は、常に両国の政治的な関係性を映し出す鏡となっています。

サムジャウタ急行爆破テロ事件

サムジャウタ急行は、悲劇的な事件の舞台ともなりました。2007年2月19日、インド国内のデリーからアッタリに向かう列車内で爆破テロ事件が発生しました。この無差別攻撃により、乗客70名が犠牲となり、多数の負傷者が出るという痛ましい結果となりました。この事件は、友好列車という名称とは裏腹に、両国間に根差す深刻な対立とテロリズムの脅威を浮き彫りにする出来事となりました。

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