サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ

『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』

ジョン・レノンとオノ・ヨーコが共作したアルバム『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』は、1972年にリリースされた2枚組の作品です。このアルバムは、スタジオ録音の『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』と、ライブ音源を収録した『ライブ・ジャム』の2つのセクションで構成されており、非常に多彩な内容を持っています。

アルバムの構成

最初のディスク、A面とB面には、10曲のスタジオ録音が収められています。これらの楽曲は、ニューヨークのレコード・プラント・スタジオで1971年12月から1972年3月の間に制作されました。ジョン・レノンが2曲、オノ・ヨーコが3曲、共作が5曲という内訳で、名プロデューサーのフィル・スペクターが関わっています。さらに、ドラムスにはジム・ケルトナーが参加し、エレファンツ・メモリーのメンバーも演奏に携わっています。

政治的メッセージ

このアルバムは、レノンの作品の中でも特に政治的なテーマが強調されているものです。1971年9月にニューヨークに移住したレノンとヨーコは、平和や社会問題に焦点を当てた活動を行っており、このアルバムではシングルとして先行発売された「女は世界の奴隷か!」を筆頭に、直接的なメッセージを持つ楽曲が多数収録されています。既存の作品と比べても、そのアプローチはよりストレートで過激な表現が用いられています。

ライブ・ジャム

C面では、1969年のUNICEF主催チャリティー・コンサートでのライブ音源が収められており、レノンはここでプラスティック・オノ・バンドを率いて、コールド・ターキーやドント・ウォリー・キョーコの演奏を披露しました。このライブは、レノンが生涯最後にイギリスで行ったもののひとつであり、エリック・クラプトンやジョージ・ハリスンといった豪華なミュージシャンたちも参加しています。

D面には、1971年にニューヨークのフィルモア・イーストで行われたフランク・ザッパのコンサートへのゲスト出演時の音源が収録されています。この録音では、レノンがザッパの楽曲をアレンジし、独自の表現を加えたものが楽しめます。特に注目すべきは、ザッパ自身の楽曲である「キング・コング」をレノンが独特の視点から演奏している点です。

アルバムのアートワーク

アルバムのジャケットデザインは、新聞の形状を模しており、その記事内容は歌詞に変換されています。特に、アメリカのリチャード・ニクソン大統領と中国の毛沢東が裸で踊るという合成写真が話題を呼び、販売時には特定の店舗で女性のヌード・イラストがコピーで隠されるなど、さまざまな反響を呼びました。また、アメリカ盤には、レノンとヨーコのリリースを支援するための郵便物が同封されるなど、アートワークにも政治的メッセージが込められています。

リイシュー

このアルバムは、リリース以来何度もリマスタリングやリミックスが行われています。2005年にはボーナストラックとして「ハッピー・クリスマス（戦争は終った）」やヨーコの「リッスン・ザ・スノウ・イズ・フォーリング」が追加された再発版が登場しました。さらに、2022年には50周年を記念して、未公開音源やデモ音源を収録した特別版が予定されています。

収録曲

このアルバムの収録曲は、スタジオ録音が多様なテーマを展開しており、アーティストとしてのレノンとオノの創造性を余すところなく表現しています。ライブ音源も、彼らのパフォーマンスの一環として、当時の文化的背景を反映した重要な資料として位置づけられています。アルバムは、音楽的・政治的両面から、ジョン・レノンのメッセージを理解するための重要な作品となっています。

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