サムパーティ

サムパーティの伝説

サムパーティ (Sampāti) は、インドの古典文学『ラーマーヤナ』に登場する巨大な鳥の王であり、その壮絶な物語は兄弟愛と運命の予言に満ちています。サムパーティは老齢の禿鷹で、ヴィンディヤ山の高峰に住んでいます。彼はカシュヤパ仙とヴィナターの息子で、兄弟のジャターユとともに、神々との交流を試みました。

兄弟の挑戦と太陽への飛翔

サムパーティとジャターユは、若き日の冒険心に満ちて天に昇り、インドラ神に挑むことを決意しました。彼らは太陽に近づこうとしましたが、その高温に耐えることができず、ジャターユはその熱のせいで動けなくなってしまいます。しかしサムパーティは、弟を守るために自らの翼を広げ、ジャターユをかばいました。残念ながら、その行動の結果、サムパーティの翼は焼き尽くされ、二人は別々の場所に落下することになりました。

このエピソードでは、サムパーティがジャターユを守る愛情深い姿勢が描かれています。また、他の神話『マハーバーラタ』によると、二人はどちらが先に太陽神スーリヤの元に辿り着くかを競い合っており、競争の末にサムパーティだけが翼を失ったことが示されています。彼はヴィンディヤ山に落ち、死を選ぼうとカウントダウンを始めましたが、聖者ニシャーカラからの予言により再び希望を見いだします。聖者は、将来ラーマ王子の使者がこの地に訪れる時、その時に自分の翼が再生されると告げました。

翼の再生と運命の出会い

その後しばらくして、ヴィンディヤ山に猿たちの集団が現れます。彼らはラーマ王子の妃シーターを探していました。サムパーティは猿たちを捕らえ喰おうとしましたが、彼らがジャターユの死について語ると、驚きと悲しみで彼は彼らに尋ねます。猿たちは、連れ去られたシーターの捜索をしていることを説明しました。

悲しみに暮れたサムパーティでしたが、ニシャーカラの予言を思い出します。彼の透視の力を発揮し、ラークシャーサの王ラーヴァナがシーターを誘拐した事実を教えました。さらにその居城がランカー島にあることも明らかにしました。この情報を伝えることで、サムパーティの翼は予言通りに再生し、輝かしい赤い羽毛に覆われました。そして彼は空へと飛び立ちました。

サムパーティの重要性は、彼がビジョンを持つ存在であり、他者を助けるために自らの命を賭ける勇気を持っていたことにあります。彼の教えは、後の神猴ハヌマーンにも影響を与え、ハヌマーンは海を越えてランカーに忍び込むことができました。このように、サムパーティの物語はただの冒険にとどまらず、兄弟愛や希望、小さな勇気が、運命を変える力を持っていることを教えてくれます。

参考文献

• - 『ラーマーヤナ 世界文学全集III-2』阿部知二訳、講談社、1966年。
• - 『原典訳 マハーバーラタ4』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2002年。

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