サム・ブーイ

サミュエル・ポール・ブーイ：もしジョーダンより先に指名されなければ

サミュエル・ポール・ブーイ（Samuel Paul Bowie）は、1961年生まれ、アメリカ合衆国ペンシルベニア州出身の元バスケットボール選手です。NBAのポートランド・トレイルブレイザーズなどでセンターとしてプレーしました。彼を語る上で避けて通れないのは、1984年のNBAドラフトでマイケル・ジョーダンよりも上位の全体2位で指名されたという事実です。

大学での活躍と悲劇の始まり

ケンタッキー大学に進学したブーイは、1年生からチームの主力として活躍しました。1980年にはモスクワオリンピックのアメリカ代表に選出されるも、アメリカのボイコットにより出場は叶いませんでした。しかし、2年目に左足の脛骨を疲労骨折してしまいます。3年目、4年目を全休し、骨移植手術を受けるも、怪我は完治せず、ブーイの選手生命を脅かす要因となりました。

1983-84シーズンに復帰したものの、以前のパフォーマンスを取り戻すことはできませんでした。NCAAトーナメントではファイナル・フォーに進出するも、パトリック・ユーイング擁するジョージタウン大学に敗れました。大学3シーズンで平均13.4得点、8.8リバウンドという記録を残しています。

NBAでの苦悩

1984年のNBAドラフトで、ブーイはポートランド・トレイルブレイザーズから全体2位で指名を受けます。しかし、このドラフトには、後にNBAの歴史を塗り替えるマイケル・ジョーダンがいたのです。ジョーダンは全体3位でシカゴ・ブルズに指名されました。

1年目はNBAオールルーキーチームに選出されるなど、まずまずの成績を残しましたが、大学時代からの左足の怪我に悩まされ、本来の力を発揮することができませんでした。1989年にニュージャージー・ネッツへ移籍してからは、比較的健康にシーズンを過ごせるようになり、ロールプレイヤーとして安定した成績を残しました。

その後、ロサンゼルス・レイカーズへ移籍しますが、再び怪我に苦しみ、1994-95シーズン終了後に現役を引退しました。

もし、あの時...

ブーイが指名された1984年のNBAドラフトは、アキーム・オラジュワン、チャールズ・バークレー、ジョン・ストックトンなど、数々の名選手を輩出しました。特に、全体3位で指名されたマイケル・ジョーダンは、NBA史上最高の選手の一人として、その名を歴史に刻みました。

もしブーイが怪我なく、そのポテンシャルを最大限に発揮できていれば、NBAの歴史は変わっていたかもしれません。しかし、現実は非情でした。ブーイは怪我に苦しみ、ジョーダンのような偉大な選手になることはできませんでした。彼のキャリアは、「もしも」という言葉が付きまとう、悲劇的なものとして語り継がれています。

引退後

引退後は繋駕速歩競走の選手としてプレーし、2度の結婚を経験し、3人の子供をもうけました。

エピソード

ブーイ自身も「大学時代に焦らずに怪我が完全に回復するまで休めばよかった」と後悔を口にしています。また、ブレイザーズ時代には、怪我による痛みをチームに隠していたことを明かしています。グレッグ・オデンもまた、ドラフト上位でブレイザーズから指名されたセンターでありながら、怪我に苦しんだという共通点があります。

サミュエル・ポール・ブーイ。彼は、才能を持ちながらも怪我に泣かされた、悲運の選手として、バスケットボールファンの記憶に刻まれています。

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