サヨリ科

サヨリ科 (Hemiramphidae)

サヨリ科は、ダツ目に属する魚類の一群であり、世界中の温暖な海域に広く分布しています。その特徴的な形態から、英語では「Halfbeak（半分の嘴）」とも呼ばれています。

分類

サヨリ科は、以下の8属に分類され、約60種が存在します。

Arrhamphus 属
Chriodorus 属
トウザヨリ属 (Euleptorhamphus)
ホシザヨリ属 (Hemiramphus)
サヨリ属 (Hyporhamphus)
Melapedalion 属
サヨリトビウオ属 (Oxyporhamphus)
Rhynchorhamphus 属

これらの属には、それぞれ固有の種が含まれており、様々な環境に適応した進化を遂げています。

進化と系統

サヨリ科の化石記録は古第三紀まで遡ることができ、最も古い化石はイタリアの始新世の地層から発見されています。系統学的には、トビウオ科、ダツ科、サンマ科と近縁であり、これらの科と共にダツ目を構成すると考えられています。

近年、分子系統学的研究により、サヨリ科は単系統群ではなく、トビウオ科やダツ科の系統を含んでいる可能性が示唆されています。特に、サヨリトビウオ属は、形態的にはトビウオ類に近いものの、分子系統的にはトウザヨリ属やホシザヨリ属と近縁であることが示されています。

分布

サヨリ科は、主に大西洋、インド洋、太平洋の温暖な海域に分布しており、表層付近に生息しています。一部の種は河口域にも見られます。海洋性の種は大陸の沿岸付近に生息することが多いですが、一部は西部太平洋や中部太平洋に分布し、ニュージーランド固有の種も存在します。ホシザヨリ属は、世界中の海洋に広く分布しています。

形態

サヨリ科の魚類は、開放水域での生活に適応した細長く流線型の体型をしています。体長は種によって異なりますが、トウザヨリは40cm以上に成長します。鱗は比較的大きく、剥がれやすい円鱗です。鰭には棘条がなく、上咽頭骨の第3対が板状に癒合していることが特徴的です。また、サヨリ科の魚類は胃を持たず、咽頭顎を備えています。

幼魚期には下顎が伸びているものが多いですが、一部の種では成長とともに消失します。体色は、典型的な表層魚と同様に、背面が暗く、腹面が明るい銀色をしており、カウンターシェーディングの例として知られています。下顎の先端は、多くの種で赤色またはオレンジ色をしています。

生態

摂餌

サヨリ科の魚類は雑食性であり、藻類、海草などの海洋植物、プランクトン、甲殻類などの無脊椎動物、小魚などを食べます。亜熱帯に生息する種の中には、幼魚の方が成魚よりも肉食性が高いものもいます。また、熱帯に生息する種の中には、昼間は動物を、夜間は植物を食べるものや、夏は肉食、冬は草食をするものがいます。

行動

サヨリ科の魚類は群れを作って行動することが多く、水面近くを群れで泳ぐ姿がよく見られます。トウザヨリ属などは、水面から飛び出して滑空する能力があり、「flying halfbeaks（空飛ぶサヨリ）」と呼ばれることもあります。

繁殖

サヨリ科の魚類は、すべての種が体外受精を行います。通常は卵生で、浅い沿岸水域に比較的大きな卵を少数産むことが多いです。卵には付着糸があり、海草などに付着します。幼魚は河口域を好む傾向があります。

人との関わり

サヨリ科の魚類は、商業漁業の主要な対象ではありませんが、一部の地域では小規模な漁業が行われています。日本では、サヨリなどが食用として利用されています。また、大型魚の餌として重要な役割を果たしているため、生態系においても重要な存在です。

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