サラゴサ条約

サラゴサ条約

1529年4月22日、ポルトガル王ジョアン3世と神聖ローマ皇帝カール5世の間で締結されたサラゴサ条約は、スペイン帝国とポルトガル海上帝国の間の重要な平和条約です。この条約の締結は、両国のアジアにおける勢力圏を明確に分けることを目的としており、1494年に結ばれたトルデシリャス条約を根拠に、特にモルッカ諸島の領有権を巡る対立を解決するために行われました。

背景

モルッカ問題

15世紀末から16世紀初頭にかけて、スペインとポルトガルは新世界の探検と植民地化を進めていました。1494年に締結されたトルデシリャス条約では、世界を二つの半球に分け、カスティーリャは西側、ポルトガルは東側をそれぞれ領有することが定められました。しかし、1511年にポルトガルがマラッカを征服し、その後1500年代初頭にモルッカ諸島の香辛料の独占を目指す動きが強まったため、両国間の対立が激化しました。

1519年から1522年にかけて、マゼランの艦隊が世界初の周航を達成し、この航海によってモルッカ諸島に関心が高まることとなります。その後、カール5世は香辛料の帰属を巡ってロアイサ遠征隊を派遣しましたが、そこから生じた紛争は長きにわたる小競り合いを引き起こしました。

バダホス＝エルヴァス会議

1524年になると、両国はフンタ・デ・バダホス＝エルヴァス会議を開催し、紛争の解決に向けた協議を行いました。この会議では、両国がそれぞれ天文学者や地図学者を派遣し、トルデシリャス条約の境界線を正確に計算しようとしました。しかし、当時の地理的知識が乏しく、合意に至ることはできませんでした。

条約の内容

最終的に締結されたサラゴサ条約では、両国間の東方における境界をモルッカ諸島から297.5リーグ（約17度）東へと定めました。また、皇帝がポルトガルに賠償金を支払えば条約を無効化するというセーフガード条項もありましたが、実際には皇帝がフランスとの戦争に巻き込まれていたため、この条項は利用されませんでした。

条約により、ポルトガルは境界から西側の全ての土地と海を領有し、アジアでの権益を拡充させました。一方で、スペインは太平洋の大半を領有し、フィリピンの帰属問題は条約には触れられなかったものの、結果的にスペインによるフィリピン植民地化の道を開くこととなりました。この辺りの展開は、カール5世の意図とは裏腹に行われたのです。

結論

サラゴサ条約は、スペインとポルトガルの間の領土分割を規定する歴史的な合意であり、両国の植民地政策に大きな影響を与えました。実現が難しかった東方への航路の発見は、後の時代にアンドレス・デ・ウルダネータによって確立され、以降の交易が活発化する契機ともなったのです。このようにサラゴサ条約は、まさに新しい世界の誕生と植民地帝国の形成における重要な一歩と言えるでしょう。

もう一度検索