サラリーマン清水港

『サラリーマン清水港』は、1962年1月3日に東宝系で公開された日本[[映画]]です。鮮やかなカラー作品で、東宝スコープの迫力ある映像も魅力の一つでした。キャッチコピーは「富士と並んで日本一! 東宝サラリーマン喜劇決定版!」と、自信に満ち溢れたものでした。

本作は『社長』シリーズの第12作に当たります。シリーズでおなじみの森繁久彌、加東大介、小林桂樹といった豪華俳優陣に加え、『サラリーマン忠臣蔵』には出演していなかった三木のり平、英百合子といった面々も加わり、さらに前年にデビューしたばかりの藤山陽子も本作から『続・社長紳士録』までレギュラー出演しました。そして、フランキー堺は本作のみの出演でしたが、その軽妙洒脱な演技が好評を博し、次の作品『社長洋行記』からレギュラーに昇格することになります。

ストーリーは、静岡県清水市にある老舗酒造会社「株式会社清水屋」を舞台に展開します。社長の山本長五郎は恐妻家で浮気性、専務の大柾は真面目で会社の事をいつも考えています。工場長の小政は、軽妙な語り口と回りくどい言い回しで周囲を困らせます。そして、秘書課長の石井松太郎は遠州森の生まれで酒豪、喧嘩っ早い性格の持ち主です。これらの個性豊かな社員28人は「清水屋二十八人衆」と呼ばれ、会社を支えていました。

物語は、香港から来た華僑バイヤー邱六漢が、清水屋の特級清酒「次郎長正宗」を購入するかどうかを検討しているところから始まります。競合他社の「黒駒醸造」も邱に目を付けており、清水屋は激しい競争を強いられます。そんな中、小政はひそかにウイスキー「マウントフジ」を開発していたことを明かします。

社長の長五郎は邱を料亭に案内し、「次郎長正宗」を勧めますが、邱は「まずい！」と酷評。慌てた長五郎はバー「バタフライ」に場所を移し、「マウントフジ」を勧めますが、これも邱に不評でした。「バタフライ」には、なんと黒駒醸造の社長・黒田駒造が偶然来店しており、彼はこの好機を逃さず自社のウイスキー「ブラックホース」を勧めます。邱は「うまい！」と絶賛し、長五郎は大きなショックを受けます。

会社の創立30周年記念式典で挽回しようと意気込む長五郎ですが、式典当日、秘書課長の石松は恋人の青木妙子に婚約破棄を告げられ、ショックで祝いの余興を台無しにしてしまいます。その夜、邱は石松が清水屋製の焼酎「清水湊」を飲んで酔いつぶれているのを見て、自分も飲んでみます。最初は「うまい！」と言っていた邱でしたが、酔いがまわると石松と大喧嘩になり、石松は左目を殴られてしまいます。長五郎と大柾は石松を叱りつけ、「禁酒」「禁暴力」を命じます。

翌日、邱は「清水湊」を8000ガロンも購入したいと申し出てきます。一同大喜びしますが、「清水湊」の原料である乾燥芋が不足していることが判明します。長五郎と石松は愛媛県松山市にある「都田物産」へ乾燥芋の仕入れに向かうことにします。

長五郎は途中で誘惑に負けて大阪で下船、石松は一人で旅を続け、船上で都田物産の社長娘・都田京子と出会います。しかし、黒駒醸造の社長秘書・大岩がその様子を黒田に密告し、黒駒は出し抜きを画策します。石松は都田社長に乾燥芋を売ってもらおうとしますが、黒駒の策略によって禁酒を破り、都田社長を殴ってしまいます。石松は会社を辞めると宣言しますが、長五郎は都田家へ行き、事情を説明し、何とか乾燥芋を仕入れることに成功します。

帰社した長五郎と石松を待っていたのは、長五郎の妻・蝶子でした。長五郎の浮気未遂が発覚したのです。しかし、専務の大柾機転を利かせ、なんとか事なきを得ます。

本作は、個性豊かな登場人物とテンポの良い展開、そして昭和時代の日本社会の雰囲気を巧みに描いた傑作喜劇です。松林宗恵監督による演出、笠原良三の脚本、そして豪華キャスト陣の演技が、観る者を飽きさせません。公開から60年近く経った今でも、多くの人々に愛され続けている作品です。

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