英百合子

英百合子：日本映画史を彩った名女優

英百合子（はなぶさ ゆりこ、1900年3月7日 - 1970年2月7日）は、広島県呉市出身の日本の女優です。彼女は、日本初の本格的な映画女優の一人として知られています。その華やかな容姿と、感情豊かな演技で、サイレント映画時代から戦後にかけて、幅広い役柄を演じました。

生い立ちと初期のキャリア

1900年に生まれた英は、呉市立高等女学校（現在の広島県立呉三津田高等学校）在学中に、旅芸人に憧れて家を飛び出し、女優の道へ進みました。その後、女学校を中退し、1917年に浅草で旗揚げされた「東京少女歌劇団」に参加。その後、国際活映に入社し、本格的に女優としてのキャリアをスタートさせました。

松竹キネマ研究所での飛躍

1920年、小山内薫が設立した松竹キネマ研究所に招かれ、英は日本初の本格的な女優育成の試みに参加しました。小山内が監督した『路上の霊魂』では、別荘の令嬢役を演じ、その演技は、当時のハリウッド女優、メアリー・ピックフォードを意識したものでした。表情豊かな演技は「バタ臭い」と揶揄されることもありましたが、それは、従来の日本の映画俳優の「型」の演技から脱却し、「表情」による演技への変革を意味していました。

モダンガールとしての人気

その後、松竹蒲田撮影所に入社した英は、『散りにし花』に主演。当時の流行の最先端を行くモダンガールとして、令嬢役や妖婦役を得意とし、人気を博しました。銀座のカフェーやデパートにも現れる社交的な姿は、「銀ブラの女王」「ユリッぺ女史」などの愛称で親しまれました。また、1927年には日活スターの中野英治と結婚し、一児をもうけましたが、1929年に離婚しました。

脇役としての活躍と晩年

1927年、『青蛾』、『美しき奇術師』に主演。1929年の『灰燼』では、中野の母親役で発狂を熱演し、キネマ旬報ベスト・テン2位に選ばれました。しかし、1931年に帝国キネマを退社してからは、各社を転々とし、1933年にはPCLに入社しました。サイレント映画全盛期を過ぎると、年齢的にヒロイン役は難しくなりましたが、達者な脇役として、戦後まで活躍を続けました。1934年の『妻よ薔薇のやうに』では、子持ちの妾役を演じ、再びキネマ旬報ベスト・テン1位に選ばれました。

1937年の『母の曲』以降は、母親役や老け役が多くなり、原節子の母親役を演じることもありました。母物映画で知られる三益愛子は、英をロールモデルにしていたとも言われています。若い女優たちからは「英のママ」として慕われ、晩年まで映画界に貢献しました。

死去と遺産

1970年2月7日、英百合子は尿毒症により亡くなりました。彼女の遺作は『続社長学ABC』となりました。彼女の故郷である呉市吉浦町には、生涯に数回しか帰らなかったと言われています。

主な出演作品

英百合子は、数多くの作品に出演しました。以下に代表的な作品を挙げます。

火の山 (1920年)
路上の霊魂 (1921年)
散りにし花 (1922年)
灰燼 (1929年)
妻よ薔薇のやうに (1935年)
吾輩は猫である (1936年)
若い人 (1937年)
ハワイ・マレー沖海戦 (1942年)
日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声 (1950年)
原爆の子 (1952年)
女の一生 (1953年)
社長シリーズ (1958年-1970年)
三大怪獣 地球最大の決戦 (1964年)
続・社長学ABC (1970年)

結び

英百合子は、日本の映画史において、その演技力と華やかな存在感で、観客を魅了し続けた女優です。モダンガールとしての輝き、そして、晩年の母親役としての深みは、彼女の演技の幅広さを示しています。彼女の残した足跡は、後世の映画人たちに大きな影響を与え続けています。

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