サルウィン川

サルウィン川について

サルウィン川は、チベットのアムド県にあるタンラ山脈を水源とし、中華人民共和国雲南省を通り、ミャンマーのカヤー州やカレン州を流れてアンダマン海へと注ぎ込む国際河川です。この川の長さは2815kmに及び、一部がミャンマーとタイの国境となっています。

特性と流域の特徴

流域には様々な自然環境が広がり、山々や高原に囲まれたサルウィン川は、その急流が特徴です。この地域は「中国のグランドキャニオン」や「アジアの大地溝帯」と表現されることもあり、川の河口から119kmの地点までしか船舶が遡れないため、経済的にはあまり利用が進んでいません。ミャンマーの一部地域では木材の搬出に利用される程度にとどまります。

さらに、この流域には7000種を超える植物と、80種以上の希少種や絶滅危惧種の動物、魚が生息しています。ユネスコによると、サルウィン川の流域は「世界で最も豊かな温帯生態系の一つ」とされており、2003年にはその上流域が世界遺産として登録されています。

また、ヌー族（怒族）という少数民族が住んでおり、その名称はサルウィン川の中国語名に由来します。

環境問題とダム建設の騒動

サルウィン川は、ダムが建設されていない川として東南アジアで最も長いとされています。しかし、21世紀に入ってから、主にミャンマーの地域でいくつかのダム建設案が浮上しており、大きな議論を呼んでいます。2004年には、中国政府の温家宝首相が雲南省内に計画されていた13のダム建設を一時停止するよう命じました。

その一方で、タイとミャンマーの政府はダムの建設を進める計画を立てており、その中には三峡ダムよりも大きいとされるタサンダムの建設も含まれています。2006年には、60億米ドルをかけてタサン付近にダムを建設する協定が結ばれました。またカレン州のハッジーにはハッジーダムの計画があり、2006年に実現可能性を調査するための測量が始まりましたが、ミャンマー政府によるカレン族への攻撃により中止されました。

ダムの主な建設者であるタイ発電公社は、2007年に測量を再開しましたが、武装勢力の妨害により測量が延期され、元々の予定では2007年11月に着工し、2013年に完成する予定でしたが、その遅延は避けられない状況にあります。

支流と主要な橋

サルウィン川にはモエイ川という支流が存在し、重要な交通路となっています。また、タンルウィン橋はミャンマーのモン州においてモッタマとモーラミャインを結ぶ鉄道と道路が併用される橋として知られています。これにより、地域の交通の便が向上し、多くの人々に利用されています。

このようにサルウィン川は、その自然の美しさと生態系の多様性が注目される一方で、持続可能な開発と環境保護の視点から様々な問題に直面しています。

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