サロメ (オペラ)

リヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』

リヒャルト・シュトラウスが1903年から1905年にかけて作曲した1幕のオペラ『サロメ』作品54は、オスカー・ワイルドの戯曲を基にしています。台本はヘートヴィヒ・ラハマンがドイツ語に翻訳したものを基にしています。この作品は、シュトラウスが交響詩で培った管弦楽法を駆使し、濃厚な官能表現が繰り広げられることで知られています。

概要

『サロメ』は、シュトラウスが『火の危機』と対になる1幕オペラとして構想したと言われています。物語は新約聖書の一挿話に起源を持ちますが、ワイルドの戯曲では、少女が預言者の首に接吻するという世紀末的な芸術表現に変貌しています。シュトラウスは当初、アントン・リントナーの台本を検討しましたが、最終的に原作のドイツ語訳を台本として採用しました。

前奏なしの4場構成で、第4場の「サロメの踊り（7つのヴェールの踊り）」は特に有名です。ただし、この場面は劇の流れからするとやや唐突であり、前後の緊張感を弛緩させるという評価も存在します。しかし、この課題は次作の『エレクトラ』でほぼ克服されました。

このオペラは比較的短い作品ですが、表題役のサロメは、ほぼ全編にわたり舞台に登場し、歌い続けるという非常に重要な役割を担っています。少女らしい無邪気さと狂気的な淫蕩さ、繊細な歌声と力強い歌声の両立が求められる難役で、さらに「サロメの踊り」では、長いソロダンスを踊る必要もあります（代理のダンサーが立てられることもあります）。これらの点から、サロメ役はドイツ・オペラの中でも特に難役とされています。

登場人物

サロメ (ソプラノ)：ヘロディアスの娘
ヘロデ (テノール)：ユダヤの領主
ヘロディアス (メゾソプラノ)：ヘロデの妻
ヨカナーン (バリトン)：預言者
ナラボート (テノール)：衛兵隊長
ヘロディアスの小姓 (アルト)
5人のユダヤ人 (テノール4、バス1)
2人のナザレ人 (テノール、バス)
カッパドキア人 (バス)
奴隷 (ソプラノ/テノール)
その他：エジプト、ローマからの賓客たち、召使たち、兵士たち（黙役）

あらすじ

物語は紀元30年頃、ガリラヤ湖畔のヘロデの宮殿の大テラスを舞台に展開します。衛兵隊長のナラボートは、宮殿の宴でサロメの美しさに心を奪われます。一方、サロメは義父ヘロデからの情欲的な視線に耐えかねて宴席を抜け出し、地下牢に幽閉された預言者ヨカナーンの声に興味を持ちます。

サロメはナラボートを利用してヨカナーンを連れ出させます。ヨカナーンはサロメの母ヘロディアスの淫行を非難しますが、サロメは彼に惹かれます。失望したナラボートは自決し、ヨカナーンは自ら牢に戻ります。

ヘロデはサロメを探しに現れ、彼女に関心を引こうとしますが、サロメは興味を示しません。ヘロデはサロメに踊りを所望し、褒美として望むものを与えることを約束します。サロメは7枚のヴェールを纏い踊り始め、官能的な舞を披露します。

踊り終えたサロメが望んだのは、銀の皿に載せられたヨカナーンの生首でした。驚愕したヘロデは宝石などを提案しますが、サロメは譲りません。ついにヘロデは折れ、ヨカナーンは処刑されます。サロメは狂喜してヨカナーンの首に口づけをし、その姿に慄いたヘロデはサロメを殺すよう兵士に命じます。サロメは兵士たちの盾によって押し潰されて死を迎えます。

初演

1905年12月9日、ドレスデン宮廷歌劇場

指揮：エルンスト・フォン・シューフ
演出：ヴィルムヘルム・ヴィンク
サロメ：マリー・ヴィティヒ
ヘロデ王：カレル・ブリアン
ヨカナーン：カール・ペロン

日本初演

1962年4月24日、フェスティバルホール（大阪）

指揮：マンフレート・グルリット
東京フィルハーモニー交響楽団
演出：青山圭男
サロメ：クリステル・ゴルツ
ヘロデ王：フリッツ・ウール
ヨカナーン：ヨーゼフ・メッテルニヒ
ヘロディアス：三枝貴美子

編成

大規模な編成を必要とします。
管楽器：ピッコロ 1、フルート 3、オーボエ 2、イングリッシュホルン 1、ヘッケルフォン 1、E♭クラリネット 1、B♭管クラリネット 2、A管クラリネット 2、バスクラリネット 1、ファゴット 3、コントラファゴット 1、ホルン 6、トランペット 4、トロンボーン 4、バスチューバ 1
打楽器：ティンパニ (5個)、タムタム 1、シンバル 1、大太鼓 1、小太鼓 1、タンブリン 1、トライアングル 1、木琴 1、カスタネット 1、グロッケンシュピール 1
鍵盤楽器：チェレスタ 1、ハープ 2、ハルモニウム、オルガン
* 弦楽器：第1ヴァイオリン 16、第2ヴァイオリン 16、ヴィオラ10～12、チェロ 10、コントラバス 8

中小歌劇場用の3管編成楽譜も存在します。

演奏時間

約1時間45分（カット無し）

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