サンカーラ

サンカーラ (Saṅkhāra, Saṃskāra) とは

仏教用語であるサンカーラ（パーリ語: Saṅkhāra、サンスクリット語: Saṃskāra）は、「一緒になったもの」「纏めるもの」という意味を持ち、伝統的に「行（ぎょう）」または「有為（うい）」と訳されます。この言葉は、仏教思想において重要な概念であり、主に二つの意味合いで使用されます。

サンカーラの二つの意味

1. 条件づけられたものごと、有為法: これは、因縁によって生じる現象全般を指します。あらゆるものは原因と条件によって成立しており、それらは常に変化し、永続的なものではないという「諸行無常」の概念と深く結びついています。

2. 五蘊の一つ「行蘊」としての業: これは、心の奥底にある「何かをしたい」という衝動を意味します。この衝動は、過去の経験や行為（業）によって形成され、次の行動へと繋がる連鎖を生み出す縁起の原因となります。

語源

サンスクリット語の Saṃskāra は、Saṃ + kr（作る）という語源を持ちます。

因縁によって起こるもの

サンカーラは、「因縁によって起こる現象（有為）」、「できあがったもの、組み立てられたもの」、「条件づけられたものごと」を指します。世界に存在する全てのものは、身体的・精神的な要素を含め、因縁によって生じています。木、雲、人間、思考、分子、そして宇宙のあらゆる複合体もサンカーラに含まれます。

原因があって発生したものは、その条件が失われれば結果も失われます。釈迦は、すべてのサンカーラは永続的ではなく（無常）、本質を持たないと説きました。一切の現象は原因によって現れるため、「偶然」や「神による創造」は否定されます。

因縁による物事は本質を持たないため、永続的な喜びを提供することはなく、無常です。サンカーラの「条件付きのもの」という側面は、四諦や因果律の理論に現れ、人々の無常と無我についての無知（無明）が、渇愛と輪廻につながることを示唆しています。

行蘊

五蘊（色受想行識）の「行」（行蘊; 梵: Saṃskāra-Skanda）と、十二因縁の第二支である「行」（行支）は、意識を生み出す「意志作用」「志向作用」を意味します。心の働きが一定の方向に作用していくこと、意志を形成する力、善悪一切の行為、何かをしたいという衝動などが含まれます。例えば、桜を見て、その枝を切って瓶に飾ったり、苗木を植えようと思い巡らすことも行蘊の一例です。

釈迦は、あらゆる行蘊は無常であり、無我の状態にあると説きました。これについての無知（無明）は、行の発生に繋がり、最終的には苦へと繋がります。

行蘊の種類

身行、口行、心行: これらは三業（身・口・意）に対応します。
六思身: これらは六境（色・声・香・味・触・法）に対応します。

解脱への道においては、戒学によって身口意の三業を清らかにすることが重要です。

阿毘達磨倶舎論第一巻では、「色受想識を除いて、余りの一切の行を行蘊とする」と定義されています。

様々な解釈

スリランカの仏教哲学者ディヴィッド・カルパハナによれば、サンカーラは全ての精神的傾向を指します。カルパハナは、釈迦はサンカーラを完全に排除するのではなく、清浄する必要性を強調したと主張しています。

カルパハナは、サンカーラは個人の物の見方を決定するため、「サンカーラの除去は認識論上の自殺である」と述べています。人格の発達が完全性に向かうか不完全性に向かうかは、個人のサンカーラに依存するとも述べています。さらに、カルパハナは「サンカーラの重要性を認識することは、釈迦が世界についての究極の客観的視点を定式化することを妨げた」と指摘しています。

参考文献

魚川祐司『仏教思想のゼロポイント: 「悟り」とは何か』新潮社、2015年。
[アルボムッレ・スマナサーラ]]、藤本晃『アビダンマ講義シリーズ〈第3巻〉[[心所]の分析―ブッダの実践心理学』サンガ、2007年。
中村元 訳『ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経』岩波書店、2019年。

関連項目

諸行無常
煩悩
心所
縁起
蘊

もう一度検索