阿毘達磨倶舎論

阿毘達磨倶舎論

概要

阿毘達磨倶舎論は、4世紀から5世紀にかけてインドのヴァスバンドゥ（世親）によって著された仏教の重要な論書です。この作品は部派仏教の教義を整理し、発展させることを目的としており、そのサンスクリット原典は『アビダルマ・コーシャ・バーシャ』と呼ばれています。また、数種の漢訳やチベット語訳も残されており、日本でも広く研究されています。

世親は本書の中で、アビダルマとは「対法」に関する知識を集約し、「倶舎」とは「宝物庫」に例えられる形で、仏教教理の豊かさを表現しました。このため、『倶舎論』は「アビダルマを収蔵する蔵」とも解釈されています。これにより、仏教の教義と修行に関する深い洞察を提供しています。

内容と構成

本書は計598偈からなり、これを韻文形式で述べる部分と、その解釈を散文で述べる注釈部分から構成されてます。それぞれの章は政府の大枠から迷いの世界、そして悟りへの道を論じています。各品の内容は以下のように分類されています。

1. 界品 では、宇宙の構成要素や有漏・無漏について論じています。
2. 根品 では、人間の精神的要素やその相互作用について考察しています。
3. 世間品 では、人生における様々な要素、特に中有や縁起について詳細に解説しています。
4. 業品 では、業とは何か、及びその様々な特性について議論しています。
5. 随眠品 では、煩悩や心の働きについての理論が展開されています。
6. 賢聖品 では、仏教における道や修行のプロセスが説明されています。
7. 智品 は、知恵とそれに基づく徳についての考察です。
8. 定品 では、各種の三昧の重要性とそれによる徳の向上が述べられています。

最後に、破我品 では「我」の存在を否定する論が展開され、異説に反論しています。

影響と受容

本書は20世紀に入るまで多くの研究者によって様々な形で分析されてきましたタ。特に、サンスクリット原典が発見されて以来、漢訳の枠を超えた研究が進んでいます。その内容は、アビダルマ学においての基礎文献として扱われ、多くの後の学者や宗派に影響を与えています。

有名な研究者の中には、櫻部建や兵藤一夫、南都六宗の学僧たちが含まれています。特に日本においては、倶舎宗が成立し、この論書が仏教思想の発展に寄与しました。

中国やヨーロッパにおいても、この論書の影響は大きく、数々の形で翻訳や研究が行われています。真諦や玄奘の訳著は特に重要視され、その解釈は今日に至るまで仏教思想の研究の一環として大切にされています。

結論

阿毘達磨倶舎論は仏教の教義体系を構築する上での重要な文献であり、その思想は後世の仏教徒や研究者にとって貴重な資源であり続けています。その多様な解釈や研究は、現代の仏教理解に大きな影響を与えていることが図られています。

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