サンサーラ・ナーガ

『サンサーラ・ナーガ』は、1990年にビクター音楽産業から発売されたファミリーコンピュータ用ロールプレイングゲームです。アニメーション監督の押井守と脚本家の伊藤和典が監修・脚本を手掛け、川井憲次が音楽、桜玉吉がキャラクターデザインを担当しました。後にスーパーファミコンで続編『サンサーラ・ナーガ2』、ゲームボーイアドバンスでリメイク版『サンサーラナーガ1×2』が発売されています。

開発経緯

制作のきっかけは、押井守と伊藤和典が『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』に熱中し、「自分たちでこんなゲームを作りたい」と考えたことでした。押井が「プレイヤーがドラゴンに愛情を込めて育てれば、それに応えてくれる」という企画書を作成し、ビクター音楽産業が賛同したことでプロジェクトが始動しました。

押井は、ゲームの世界で日常の世知辛さや切なさ、下世話さといったものを味わってほしいと考え、本筋とは直接関係のないキャラクターや台詞を多数用意しました。このコンセプトは、続編である『サンサーラ・ナーガ2』にも引き継がれています。

押井は本作を振り返り、「勢いで作ったため強引なゲームになったが、初々しさがある」と語っています。伊藤は「プレイヤー次第でストーリーが変化するゲームを目指したが、自由度が高すぎるとプレイヤーが何をすればいいかわからなくなるという反省点もあった」と語っています。

ゲーム内容

システム

本作の最大の特徴は、「竜の育成」という独自のシステムです。プレイヤーは卵から孵った竜を預け、保母の指示に従って竜の成長に必要な獲物を狩りに行きます。竜は成長すると共に旅をしますが、「勇敢さ」や「道徳性」といったパラメータがあり、主人公の行動や与える餌によって性格が変化します。竜はモンスターを食べることでレベルアップしますが、倒したモンスターを売ることでお金を得ることもできます。主人公にはレベルの概念がなく、装備品を強化することでしか強くなれません。このシステムには、「人間はすぐに強くはなれない」「プレイヤーが主人公にさせたいことを何でもできるように柔軟性を持たせる」という押井の考えが反映されています。

はらたま

ゲーム内には「はらたま」という立ち食いそばチェーンが4ヶ所に存在し、食事をすると店主からゲーム進行のヒントを聞くことができます。各店舗のトイレからは、別の「はらたま」へワープすることができ、これにより危険な場所を避けて移動できます。敵の本拠地であるリタサティアにある唯一の拠点も、「はらたま」です。「はらたま」の語源は、押井守が関わった『うる星やつら』に登場するキャラクター、サクラに由来します。

その他の特徴

フィールドコマンドには「たたかう」があり、街の住民と戦うことができます。ただし、一部のキャラクターは戦闘できません。戦闘に勝利するとお金を得られますが、竜の「道徳」パラメータが低下します。戦闘コマンドには「わいろ」もあり、アイテムを渡すことでモンスターとの戦闘を回避できる場合がありますが、同様に竜のパラメータが低下します。

ゲーム開始直後から、ほとんどの地域に移動できます。モンスターの強さは地形によって決まるため、序盤から強力なモンスターに遭遇することもあります。

本作は仏教、ヒンドゥー教、バラモン教をモチーフにした世界観で構成されており、大陸は亀の形をしています。人名や街の名前はサンスクリット語で統一され、ゲームタイトル自体もサンスクリット語で「輪廻の竜」を意味します。

ストーリー

主人公の少年（少女）は、竜使いになるため村の宝である竜の卵を盗み出しますが、それはダチョウの卵でした。途方に暮れる主人公は、ダチョウが向かった先の老人から依頼を受け、竜の産卵場からある物を持ち帰ります。そのお礼として本物の竜の卵をもらい、竜使いを目指す旅を始めることになります。

主な登場キャラクター

主人公（ケマル）: 竜使いを目指す少年（少女）。
竜（テーミス）: 竜のウンコと引き換えた卵から孵った竜。
アル・シンハ: 主人公を陰で支える伝説の竜使い。大陸の外側に彫像が並んでいる。
アムリタ: 旅先で出会う女竜使い。物語の鍵を握る。
ばっちゃん: 主人公の祖母。回復アイテム「おべんとう」をくれる。
立ち食いのプロ: 「はらたま」に必ずいる客。押井作品の名物キャラクター。
盗賊の親分: ハワプール城の下水道を拠点にする盗賊。
ターラ: ハワプールにいる踊り子。ゲーム進行上重要。
牛丼仮面: 「はらたま」で「牛丼弁当」を注文すると戦うことになる敵。
ラクシャーサ: ローカアローカ入口の門番。牛丼に目がない。
ハワプール王: 誰も姿を見たことのない謎の人物。

主な登場モンスター

みじんこ: 最弱のモンスター。桜玉吉の漫画がデザインの元になっている。
こつぎょ: 骨だけでできた魚。竜のカルシウム補給に。
タラバガニ: 体力回復に役立つ。
とうちゅうかそう: 薬屋で高値で売れる。
まんだらげ: 催眠効果のある実を落とす。
いっぽんどっこ: 攻撃力が高い。韋駄天の靴を落とす。
ばらもんのうみぼうず: 謎の多いモンスター。
ノラりゅう: 野生の竜。ブレス攻撃を使う。
りゅうつかい: 賊徒に堕ちた竜使い。
よくりゅう: 強敵。最強のマントの素材になる。
ハゲりゅう: 頭突き攻撃をする。
シバのけんし: 最強の武器を落とすことがある。
しんえいりゅう: 最強の竜。最終ボスに匹敵する強さ。
みずねこ: かわいい猫の顔にタコの足。

ボス級モンスター

ぎょりゅう: 真の竜使いとなる試練で戦う。
マーヤー: ターラから奪ったかんざしを取り返すために倒す。
ガルーダ: アムリタの弟を襲う。
シン: あるアイテムを使うと戦闘終了。
ナムチ: 竜の鱗を硬くするために必要な返り血を持つ。
カオスドラゴン: 本作の最終ボス。聖なる竜を殺した。

スタッフ

脚本: 伊藤和典
キャラクターデザイン: 桜玉吉
音楽: 川井憲次
監督: 押井守

評価

ゲーム雑誌では賛否両論がありましたが、独特の世界観とゲームシステムは評価されました。「RPGの新境地を開くゲーム」と紹介されることもありました。

関連商品

『サンサーラナーガ必勝攻略法』
『サンサーラ・ナーガ1＆2 サウンドトラックス』

関連項目

サンサーラ・ナーガ2

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