サンディエゴ・トロリー

サンディエゴ・トロリー：アメリカ初のライトレールシステム

サンディエゴ・トロリーは、カリフォルニア州サンディエゴで運行するライトレールシステムであり、その運営事業者でもあります。1981年の開業は、アメリカにおけるライトレールの先駆けとなりました。現在では、歴史的な車両を用いた動態保存路線を含む4系統が、サンディエゴの街を走り抜けています。

開業までの道のり：馬車鉄道からライトレールへ

サンディエゴには、1886年に開通した馬車鉄道を起源とする路面電車がありましたが、自動車の普及により1949年に廃止されました。その後、公共交通は路線バスが担うことになりますが、都市のスプロール化や経済状況の悪化により、その存続が危ぶまれるようになりました。

1966年から、サンディエゴ郡と市の政府間機関である総合計画機構は、郊外への輸送に適した新たな公共交通機関の導入を模索。カリフォルニア州上院議員ジェームズ・R・ミルズ氏の尽力もあり、1975年にはハイウェイ基金の一部を公共交通改善に充てる法案が制定されました。

地下鉄や高架鉄道、高速バスなどの案が検討された結果、技術的および経済的な観点からライトレールが最適と判断されました。建設費用を抑えるため、ハリケーンによる被害を受けたサザン・パシフィック鉄道の貨物線が活用されました。

1980年、サンディエゴ・トロリー社が設立され、翌1981年7月26日、最初の路線（現在のブルーライン）が開業。当初は14両の車両で、20分間隔での運行でした。

開業後の発展：路線網の拡大と利用客増加

開業当初は、ライトレールに対する反対意見も多くありましたが、初年度の利用客は1日1万人を記録。その後も利用客は増加し続け、1982年には車両を増備、1983年には運行間隔を15分に短縮しました。

1984年にはオレンジラインの建設が始まり、1986年、1989年に路線が延伸。1990年には、1日の平均利用客数が71,790人に達しました。その後も、1995年、1996年、1997年、2005年と、段階的に路線が延伸され、2005年にはサンディエゴ・トロリー初の地下路線であるグリーンラインが開業しました。2012年にはさらなる延伸が行われ、全系統がダウンタウンを経由するようになりました。

2011年には、歴史的な路面電車車両を用いた動態保存路線であるシルバーラインがダウンタウンで運行開始。ライトレール建設に尽力したジェームズ・R・ミルズ氏の名は、サンディエゴ・トロリーの親会社であるMTSの本社ビルに冠されています。2021年には、ブルーラインの延伸区間であるミッドコースト・トロリーが開業し、カリフォルニア大学サンディエゴ校など主要施設へのアクセスが向上しました。

未来への展望：さらなる路線網の拡張

サンディエゴ政府協会（SANDAG）は2011年、2050年を見据えた交通計画を発表。ミッドコースト・トロリーに加え、サンディエゴ周辺へのライトレール路線の増設や、サンディエゴ中心部のストリートカー建設計画を盛り込んでいます。

運行、料金、車両

サンディエゴ・トロリーは、都心と郊外を結ぶ3系統のライトレールと、ダウンタウンを走る1系統の保存路線で運行されています。一部路線はネーミングライツ制度を導入しています。

料金は信用乗車方式で、乗車券は駅窓口や自動券売機で購入します。検札員による抜き打ち検査があり、無賃乗車には高額な罰金が科せられます。料金体系は、年齢や利用状況によって異なります。また、非接触式ICカード「コンパスカード」にも対応しています。

車両は、シルバーラインで使用されているPCCカーを除き、シーメンス製の車両が主に導入されています。

関連交通機関

サンディエゴ・トロリーは、コースター（通勤鉄道）やパシフィック・サーフライナー（アムトラック）など、他の交通機関とも接続しており、サンディエゴの公共交通網において重要な役割を担っています。

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