サント・シャペル

サント・シャペルは、その名が示す通り「聖なる礼拝堂」を意味し、フランスの首都パリの中心部、シテ島に位置する壮麗なゴシック建築の教会堂です。
特に、ゴシック建築の最盛期における頂点とも評される傑作として知られています。

この礼拝堂は、別名サント・シャペル・デュ・パレ（宮殿の聖なる礼拝堂）とも呼ばれ、13世紀のカペー朝の王、ルイ9世（後に聖ルイとして列聖される）の命によって建てられました。

聖遺物の収集と建設の背景

建設の最大の理由は、ルイ9世が熱心に収集したキリスト受難に関わる貴重な聖遺物を安置するためでした。彼は、当時の多くの支配者のように聖遺物を略奪するのではなく、正当な手段での入手を志向しました。

その最も有名な例が、1239年にコンスタンティノープルのラテン帝国皇帝ボルドワン2世から、破格の35,000リーブルもの巨額を投じて購入したとされるイエスの「荊冠」です。さらに1241年には、聖十字架の破片や聖血、墓石の一部といった他の重要な聖遺物も彼のコレクションに加えられました。

これらの聖なる宝物を安置し、礼拝を行うための特別な場所として、ルイ9世は新しい教会堂の建設を決意しました。建設地は、当時の王宮シテ宮の敷地内、既存の聖ニコラ礼拝堂を取り壊した跡地に選ばれました。

正確な着工日は不明ですが、聖遺物がパリに到着した1241年頃から、関連する文書が初めて言及された1244年5月までの間と推測されています。

そして、わずか4年から6年後の1248年4月26日には献堂式が執り行われました。サント・シャペル全体の建築にかかった費用は、聖遺物の購入費に匹敵する40,000リーブルと記録されています。

建築の特徴と構造

サント・シャペルの建設は、単なる聖遺物安置所以上の意味を持っていました。当時の政治情勢、特にフランドル伯によるコンスタンティノープル占領や神聖ローマ帝国の混乱の中で、ルイ9世は西キリスト教世界の中心的な君主としての地位を確立しようという強い政治的・文化的野心を抱いていました。

コンスタンティノープルのアヤソフィアが皇帝宮殿から直接アクセスできたのと同様に、ルイ9世も自らの宮殿からサント・シャペルに直接通じられる構造を採用しました。

建物は2階建てで構成されており、1階部分にあたる下堂は、宮殿に暮らすすべての人々のための教区教会として機能しました。

一方、2階の上堂は王宮と直結しており、主に王侯貴族が利用する空間として設計されました。この二層構造は、当時の社会階層を反映したものです。

建築家と見どころ

この傑作を誰が設計・建設したのか、その名は残念ながら明確には伝わっていません。古くからの言い伝えでは、サン＝ドニ大聖堂のアプス再建やパリのノートルダム大聖堂ファサード完成などに貢献したピエール・ド・モントルイユが挙げられています。

しかし、アミアン大聖堂の建築に携わったロベール・ド・リュザルシュなど、他の有力な説も存在します。

サント・シャペルの最大の魅力であり、視覚的な美しさで世界中の同様の建築物の中でも傑出していると評価されるのが、その壮大なステンドグラスです。

繊細な石細工の枠の中に、高さ約15メートルにも及ぶ巨大な窓には、旧約聖書から新約聖書に至る1134もの場面が色鮮やかに描かれています。

15世紀には、上堂に美しいバラ窓が加えられ、建物の輝きを一層高めています。

歴史の変遷と現状

時代が下り、フランス革命期には、サント・シャペルは行政の事務所として転用されました。窓は巨大な整理棚で覆い隠されたため、かえって破壊から免れた側面もありますが、クワイヤの聖歌隊席や内陣障壁は破壊され、オリジナルの尖塔は引き下ろされ、安置されていた聖遺物も散逸してしまうという大きな被害を受けました。

しかし、19世紀に入ると、フェリックス・デュバンやラッスュといった建築家たちと共に、有名なヴィオレ＝ル＝デュクによって大規模な修復が行われました。現在、空高くそびえる繊細な尖塔は、このル・デュクの設計によるものです。

かつて広大な敷地を占めたシテ宮自体はほぼ完全に姿を消してしまいましたが、サント・シャペルは、現在パリの裁判所（パレ・ド・ジュスティス）の一部として、その建物群に囲まれるようにして残されています。

1862年にはフランスの歴史的建造物に指定され、現在は国立モニュメントセンターの管理の下、公開されています。その歴史的な価値と息をのむような美しさから、多くの人々を魅了し続けており、2011年には90万人以上の観光客が訪れました。

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