サン・マルコ財務官

サン・マルコ財務官：ヴェネツィア共和国における権威ある官職

サン・マルコ財務官（ヴェネト語：Procurador de San Marco）は、ヴェネツィア共和国において、その威信の高さからドージェ（元首）に次ぐとされた、数少ない終身制の官職です。この役職は、有力な貴族家系の出身者が占め、多くの場合、輝かしい政治経歴の頂点として、またはドージェ選出へのステップとして位置づけられていました。

起源

サン・マルコ財務官の起源は9世紀に遡ります。当初は一人の財務官が、サン・マルコ教会の管理においてドージェを補佐する役割を担っていました。その後、財務官の数は増え、13世紀には複数体制となりました。1261年以降、4人の財務官が存在し、そのうち2人はサン・マルコ教会の財政、維持、装飾、そして宝庫の管理を、残りの2人は宗教団体や慈善団体への寄付信託資金を管理しました。
1443年には9人にまで増員され、「デ・スプラ」、「デ・シトラ」、「デ・ウルトラ」の3つの役職に分かれて職務を遂行していました。16世紀には、カンブレー同盟戦争からの経済復興策として、国庫への寄付と引き換えに臨時の財務官を設置できるようになり、役職の売買が行われるようになると、その数はさらに増加しました。時には40人にも達したと記録されています。この制度により、若く野心的な貴族が短期間で高位に昇進し、大きな影響力を持つようになりました。

選出方法

初期の財務官はドージェによって選出されていましたが、1231年以降は大評議会による選出に変わりました。この変化は、役職の民主的な性格を強めるものでした。

役割

1453年以降、財務官はヴェネツィア元老院の議席を確約され、政治的影響力を増しました。彼らは大使派遣などの任務からは免除され、ヴェネツィア市内で存在感を保つことができました。また、莫大な資本を管理し、商業、不動産、国債、証券、預金などへの投資を通じて、経済的な影響力も持つようになりました。さらに、サン・マルコ広場周辺の公共建築物の建設、維持、管理も担当しました。財務官の執務室は、サン・マルコ広場にあるマルチャーナ図書館の上階にありました。

現在の財務官

1797年のヴェネツィア共和国崩壊後も、サン・マルコ教会の管理職は廃止されず、ヴェネツィア総主教の権限下で、教会の資産管理を担う財務官が残りました。1931年の勅令によって、その地位が確約され、現在は7人の財務官が、サン・マルコ第一財務官を筆頭に、建築家や技師と協力して教会の歴史的保存に努めています。この役職は、歴史的な変遷を経て、現代においてもサン・マルコ教会の維持と管理に不可欠な役割を果たしています。

まとめ

サン・マルコ財務官は、ヴェネツィア共和国の歴史において、政治、経済、文化の各方面で重要な役割を果たした官職です。その起源から、共和国崩壊後の現代に至るまで、その変遷はヴェネツィアの歴史と深く結びついています。この役職の歴史を理解することは、ヴェネツィア共和国の政治体制と社会構造を理解する上で不可欠であると言えるでしょう。

注釈

脚注


参考文献

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