サーブ 340 AEW&C

サーブ 340 AEW&C：スウェーデンの先進的早期警戒管制機

サーブ 340 AEW&Cは、スウェーデンの航空機メーカーであるサーブが開発した早期警戒管制機（AEW&C）です。サーブ 340 旅客機をベースに、エリクソン社（現サーブ）が開発した高性能なエリアイ・レーダーを搭載していることが最大の特徴です。スウェーデン空軍ではS 100B アーガスとして採用されています。

開発の経緯

スウェーデン軍は1970年代から早期警戒機の導入を検討していました。当初は戦闘機に捜索ポッドを搭載する方式が検討されましたが、1982年にマルガレータ・アフ・ウグラス議員が議会に提出した案に基づき、ターボプロップ輸送機にレーダーを搭載する方針に転換しました。

1985年、エリクソン社はスウェーデン国防省防衛資材局（FMV）から早期警戒機用のレーダーの開発を受注しました。この際、アクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナ（AESAアンテナ）を用いることが求められ、当時としては非常に先進的な試みでした。

試験段階では、フェアチャイルド メトロIII（Tp.88）が搭載母機として選定され、1982年にはFMVからメトロIIIの早期警戒機版の開発が発注されました。1986年にはFMVが試験を発注し、同年10月からエリアイのモックアップを搭載して試験が行われました。1991年5月からはレーダーの実機を搭載しての試験が開始され、1992年からは機上信号処理も行われるようになりました。

1992年12月、FMVはエリクソン社に対し、12億クローナで6セットを発注しました。実用機では、搭載母機としてサーブ 340が選定され、1993年から生産が開始され、1996年から1999年にかけて引き渡されました。

設計の特徴

サーブ 340 AEW&Cは、従来のAWACS機のような円形レーダーではなく、エリアイ・システムを用いた非可動式のFSR-890 AESAレーダーを搭載しています。このレーダーは、機体の前後にデッドゾーンがあるものの、機体の両側に120度のスキャンゾーンを持ち、高度6,100mで最大300〜400kmの範囲で船舶、航空機、ミサイルを追跡することができます。AESAレーダーの採用により、高い探知能力と追跡能力を実現しています。

派生機として、サーブ 2000をベースにしたサーブ 2000 AEW&Cも存在します。

性能諸元

乗員: 6名
全長: 19.73m
全高: 6.97m
翼幅: 21.44m
空虚重量: 10,300kg
運用時重量: 13,155kg
動力: ゼネラル・エレクトリック CT7 ターボプロップエンジン (1,390kW) × 2基
実用上昇限度: 7,620m

派生型

サーブ 340B AEW / S 100B アーガス: (FSR-890)エリアイ搭載、タイ空軍向け
サーブ 340B AEW-200: (IS-340) エリアイ搭載
サーブ 340B AEW-300 / S 100D アーガス: (ASC-890) エリアイ搭載

運用状況

サーブ 340 AEW&Cは、スウェーデン空軍向けに6機が製造され、そのうち4機は常にエリアイAESAレーダーを装備し、2機は平時の輸送任務に使用されています。

2003年にEMB-145エリアイ・システムの納入に先立ち、2機の改造機がギリシャに貸与されました。

2006年7月、サーブはスウェーデン空軍のS 100B 2機を監視任務と多国籍作戦への展開のためにアップグレードする契約を獲得し、アップグレードされたS 100Dは2009年に納入されました。

2007年11月、タイはスウェーデン空軍から2機のサーブ 340B AEWを購入する意向を表明しました。

2024年5月29日、スウェーデン国防省は、16回目の軍事支援パッケージとして2機のサーブ 340B AEW-300をウクライナに供与すると発表しました。

運用国

スウェーデン: スウェーデン空軍が2機を運用中
ポーランド: ポーランド空軍がアラブ首長国連邦の中古機を2機購入し、2023年から運用中
タイ: タイ王国空軍が2012年から2機を運用中

過去の運用国

ギリシャ
アラブ首長国連邦

サーブ2000AEW&C 運用国

パキスタン: パキスタン空軍が7機を運用中
サウジアラビア: サウジアラビア空軍が2機を運用中

まとめ

サーブ 340 AEW&Cは、その先進的なレーダー技術と高い機動性により、各国の空軍で重要な役割を果たしています。特に、AESAレーダーによる広範囲の監視能力は、現代の航空作戦において不可欠な要素となっています。

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