サーブ・96

サーブ・96の歴史と特徴

サーブ・96は、スウェーデンの航空機メーカーであるサーブの自動車部門が製造した乗用車であり、1960年から1980年までの20年間にわたり生産されました。このモデルは、先代であるサーブ・93の設計を受け継ぎ、様々な改良を加えながら進化を遂げました。その結果、サーブ・96はサーブブランドの強烈な個性を際立たせる車として、多くのファンに愛されました。

デザインと技術の進化

サーブ・96の最大の特徴は、前輪サスペンションの改良です。これにより、トーションバーからダブルウィッシュボーン・コイルに変更され、走行性能が向上しました。また、ブレーキも当初は四輪ドラムブレーキでしたが、後に前輪にディスクブレーキを採用し、安全性が高まりました。

エンジンについては、当初は2サイクル3気筒750ccで38馬力を発揮していました。トランスミッションは3速のマニュアルが標準装備され、オプションでフルシンクロの4速も用意されていました。このシフトはコラムタイプで、フリーホイール機構も導入されていました。

モデルのバリエーション

サーブ・96は1963年にエンジンの排気量を841ccに増強し、また3キャブレターを装備した「96モンテカルロ」が登場しました。このモデルは特に輸出先によっては「サーブ・スポーツ」という名称でも知られています。その後、1965年にはフロントエンドのデザインが変更され、ラジエーター位置がエンジン背後から前方に移るなどして、新しいエンジンの搭載が容易になりました。

そして、1967年には「96V4」が市場に登場しました。このモデルは、2サイクルエンジンの排気ガス規制の制約を受け、フォード・タウヌス用のV型4気筒エンジンに換装されたのです。この新しいエンジンは、従来のモデルに比べて性能が大幅に向上し、運転のしやすさも増しました。1972年までに、外装デザインの現代化や安全性能の強化が行われ、1975年以降にはウレタン製の衝撃吸収バンパーが装備されるようになりました。

モータースポーツでの成果

サーブ・96は、ラリースポーツでもその実力を発揮しました。特に北欧出身の名ドライバー、エリック・カールソンとその妻パット・モス・カールソンが操ることで、1960年代に多くのラリー大会で優勝を果たしました。サーブのワークスチームは、1960から1962年までのRACラリーで連続優勝し、さらに1962年と1963年のラリー・モンテカルロでも勝利をおさめ、サーブ・96のラリーカーとしての性能が世界的に知られることになりました。

日本市場への進出

1960年代には、サーブ・96も日本に少数ながら輸出されていました。当時のディーラーは新東洋企業であり、その後、西武自動車販売が輸入代理店となり、そこでの輸入モデルは主にサーブ・99に絞られ、サーブ・96の輸入は途絶えることとなります。しかし、このモデルは並行輸入されることもあり、自動車評論家の川上完が所有していたことでも有名です。

最後に

サーブ・96は1980年1月11日にフィンランドの工場で生産を終了し、その累計生産台数は547,221台に達しました。サーブ・96は、その特異なデザインと個性的な走行特性により、サーブブランドの象徴的な存在となり、多くのファンに愛され続けています。

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