西武自動車販売

西武自動車販売株式会社

西武自動車販売株式会社は、日本の流通大手であったセゾングループに属し、1962年（昭和37年）10月から1995年（平成7年）にかけて活動した自動車輸入販売会社です。当時の輸入車市場において、個性的な欧州車を中心に展開し、独自の存在感を確立しました。

設立とその歩み

会社の起源は、1962年10月に西武百貨店の商事部から独立した自動車課にあります。設立当初の本社は神奈川県横浜市中区に置かれ、主にアメリカのシボレーやオーストラリアのホールデンといったブランドを輸入・販売していました。しかし、1971年（昭和46年）には同じ西武百貨店系列でフィアットやフェラーリ、シトロエン、サーブなどを手掛けていた西欧自動車を吸収合併します。これにより、事業の中心はイタリアのフィアットやフェラーリ、フランスのシトロエン、スウェーデンのサーブ、さらには西ドイツのネッカーといった、よりマニアックな欧州車へとシフトしました。この間、本社は横浜市保土ケ谷区、そして東京都内の港区高輪、世田谷区桜新町と移転を繰り返しています。

取り扱いブランドの変遷と市場への影響

欧州車への注力は、その後の事業展開に大きな影響を与えます。1972年（昭和47年）、当時の自動車排出ガス規制への対応が困難になったことを理由にフィアットの販売から撤退。また、フェラーリの代理権も同年にロイヤル・モータースへ譲渡されました。一方で、1977年（昭和52年）には新東洋企業が撤退したプジョーの取り扱いを開始するなど、ラインナップの変更が行われています。

1970年代から1980年代前半にかけて、同社の屋台骨を支えた主力車種となったのが、フランスのシトロエンGSです。このモデルは、当時の厳しい排出ガス規制をクリアするため、日産自動車の協力を得るなど苦労を重ねながら、1972年から1986年までの14年間（1976年～1977年は一時中断）にわたり継続的に輸入され、数千台が販売されました。これは、まだ輸入車が一般的ではなかった時代において、日本にシトロエンという独特なブランドを広く知らしめ、その後の普及に貢献する画期的な取り組みでした。

シトロエンGSの成功に続き、シトロエンBXやサーブ900といったモデルもヒットを記録します。これらの車種の販売を通じて、西武自動車販売は日本の輸入車販売業界において、確固たる地位を築き上げていきました。

プロモーションと事業の終焉

同社は「知性あるモーターライフ」をキャッチコピーに掲げ、専門誌「CAR GRAPHIC」などに積極的に広告を掲載しました。さらに、1980年代にはテレビ神奈川（TVKテレビ）などでテレビCM（主にシトロエン）を放映するなど、多角的なプロモーションを展開していました。

しかし、1990年代に入ると、輸入車市場を取り巻く環境は大きく変化します。マツダが「ユーノス」系列でシトロエンを、スズキがプジョーを販売するなど、国産自動車メーカーが輸入車販売に参入。また、BMWジャパンの成功に触発された海外メーカーが日本法人を設立し、輸入業務を直営化する動きが進みました。これらの外部環境の変化に加え、バブル経済の崩壊に伴うセゾングループ全体の解体という影響も避けられませんでした。

こうした状況下、1992年（平成4年）10月には、サーブの輸入販売権をスウェーデンのサーブ・オートモービル社が日本に新設した法人「サーブ・ジャパン」に譲渡し、サーブの取り扱いを終了します。

最終的に、西武自動車販売株式会社は1995年（平成7年）をもって、アメリカのクライスラーの日本法人である「クライスラージャパンセールス」に吸収合併され、33年の歴史に幕を下ろしました。ただし、合併先のクライスラージャパンセールスは主にジープの販売に注力することになったため、シトロエンの輸入販売事業を引き継ぐ目的で、新たに「新西武自動車販売」が設立され、こちらは2002年（平成14年）まで活動を続けました。

なお、セゾングループにおける自動車関連事業としては、東京都下で日産車を取り扱っていた「西武日産販売」も存在しましたが、こちらは2001年に東京日産モーターに吸収されています。

西武自動車販売は、短すぎるとはいえない活動期間の中で、日本の自動車市場に個性的な輸入車を紹介し、特にシトロエンの普及において重要な役割を果たした企業として記憶されています。

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